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新型コロナ対策 症例Scope

健康寿命の延伸に向け、疾病の「横断的予防」に国民1人1人が取り組め―国立研究開発法人

2021.2.24.(水)

健康寿命の延伸に向けて、「禁煙や受動喫煙防止」「アルコールの節制」「多様な食事の接種」「社会的孤立の防止」「感染症予防」「定期的な健診、適切な検診の受診」「口腔内健康の確保」などに、国民1人1人が取り組む必要がある―。

▼国立がん研究センター▼国立循環器病研究センター▼国立精神・神経医療研究センター▼国立国際医療研究センター▼国立成育医療研究センター▼国立長寿医療研究センター▼国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)―の6つの国立高度専門研究センターが2月19日、こういった内容の「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第1次)」を公表しました(国立がん研究センターのサイトはこちら(プレスリリース)こちら(提言全文))。

健康寿命の延伸には、個別疾病対策でなく「様々な疾患の横断的予防」が重要

我が国は、世界でもトップレベルの「長寿国」ですが、「寿命」と「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康寿命」との間に差(「不健康な期間」、男性では8-9年、女性では12-13年)があり、これが縮小していないことが指摘されています。健康寿命の延伸(健康寿命と寿命との差を縮小する)によって、国民1人1人のQOLが向上することはもちろん、「医療費の増加スピードを抑える」ことも可能になると期待されます。

「不健康な期間」の多くは「要介護状態」であり、この要因として▼認知症▼高齢による衰弱▼関節疾患▼骨折・転倒―が5割を占めています。このため「健康寿命を延伸するためには、単に、疾患を個別に予防するのではなく、様々な疾患を横断的に予防する」ことが極めて重要となります。

そこで6機関は、日本人の健康寿命を延伸するために、(1)喫煙(2)飲酒(3)食事(4)体格(5)身体活動(6)心理社会的要因(7)感染症(8)健診・検診の受診と口腔ケア(9)成育歴・育児歴(10)健康の社会的決定要因―について、エビデンスに基づく具体的な提言を行ったものです。

まず(1)の喫煙については、当然とも思われますが「たばこを吸わない」(禁煙)、「他人のたばこの煙を避ける」(受動喫煙の防止)ことが重要です。



(2)の飲酒に関しては、「節酒する。飲むなら節度のある飲酒を心がける」(1日当たり、男性ではアルコール量23グラム(日本酒であれば1号)程度、女性はその半分に抑える、休肝日を設けるなど)、「飲まない人や飲めない人にお酒を強要しない」ことが示されました。



一方(3)の食事については、▼食塩の摂取を最小限(男性で1日7.5グラム未満、女性で同じく6.5グラム未満)にする▼野菜(成人では1日350グラム以上)、果物(同じく200グラム以上)を適切に摂取する▼食物繊維を多く摂取する(成人では1日17-21グラム)▼大豆製品を多く摂取する▼魚を多く摂取する▼赤肉(鶏肉以外の牛・豚・羊の肉)・加工肉などの多量摂取を控える▼甘味飲料は控えめにする▼年齢に応じて脂質や乳製品、たんぱく質摂取を工夫する▼多様な食品の摂取を心がける―などの具体的提言を行いました。



また(4)の体格に関しては、▼やせすぎない、太りすぎない▼ライフステージに応じた適正体重を維持する―ことを提案しています。



さらに(5)の身体活動に関しては、▼歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行い、その中に「息がはずみ汗をかく程度の運動」を1週間に60分程度含める▼高齢者では、強度を問わず、身体活動を毎日40分行う―ことを提言。あわせて「現状より1日10分でも多く体を動かす」ことから始めてはどうかと提案しました。現在は新型コロナウイルスへの感染を防ぐために、「外出→運動」を控える傾向にありますが、感染対策を行ったうえでの身体活動を心掛けることが重要です。



また(6)の心理社会的要因については、▼心理社会的ストレスを回避する▼社会関係を保つ▼睡眠時間を確保し睡眠の質を向上する―ことが提言されました。

このうち「社会関係」に関しては、東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)が、▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど▼身体機能低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクが高い—などの研究成果を発表しています。新型コロナウイルス感染症の影響により「他者との交流」を控えがちですが、感染対策をしっかりとったうえで必要な交流を継続することが非常に重要です。



さらに(7)の感染症については、▼肝炎ウイルスやピロリ菌の感染検査を受けるインフルエンザ、肺炎球菌を予防する―ことが示されました。高齢者に対しては、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種について、自治体からの費用助成が行われており、適切な機会を捉えてを接種を受けることが重要です。この点、高齢者では何らかの疾患を抱え、かかりつけ医を定期的に受診することも多く、その際に「予防接種を適切に受けているのか」を確認し、必要な勧奨を行うことに期待が集まります。

なお、今般の新型コロナウイルス感染症の中で、「肺炎や小児のウイルス性腸炎、季節性インフルエンザなどの感染症が激減している」ことが明らかになっています。ウイルス干渉の効果も指摘されますが、最大の要因は「手洗いの励行」「マスクの装着」「適度な距離の確保」などの「衛生面の向上」にあるとみられています。新型コロナウイルス感染症が収束した後も、「衛生面の向上」に向けた取り組みを継続することが求められます。



一方、(8)では「定期的に健診を、適切に検診を受診する」「口腔内を健康に保つ」ことの重要性が強調されました。前者の健診・検診の重要性は言わずもがなですが、提言では「科学的根拠に基づいたがん検診を、厚生労働省の指針「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で示された方法で受ける」ことを推奨しています。

また後者の「口腔内の健康」は、「口腔内が不潔など不健康である」→「歯牙が欠損する」→「栄養状態が悪化する」→「疾病にかかりやすくなり、また治りにくくなる」という負の連鎖を防ぐために、非常に重要です。最近の研究では、「⻭周病有所⾒者は、そうでない⼈と⽐べて循環器病を 1.5-2.8倍発症しやすい」ことなどが分かっており、適切に歯科医療機関を受診し、必要な治療や指導を受けることなどが必要です。



また(9)の成育歴・育児歴では、▼出産後初期はなるべく母乳を与える▼妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、巨大児出産の経験のある人は将来の疾病に注意する▼早産や低出生体重で生まれた人は将来の疾病に注意する―ことを提言しました。

一般の方にはあまり知られていないようですが、早産で生まれた人は、成⼈期の▼慢性腎臓病▼統合失調症▼循環器病―のリスクが、低出⽣体重(2500グラム未満)で⽣まれた⼈は、成⼈期の▼⾼⾎圧▼循環器病▼糖尿病―のリスクが⾼くなる、との研究結果があります。⺟⼦⼿帳や家族からの聞き取りによって、⾃分の成育歴、幼少期にかかった病気や受けた治療について⼗分に理解したうえで、定期的な健診、適切な検診を受けることが重要です。



さらに(10)では、▼社会経済的状況▼地域の社会的・物理的環境▼幼少期の成育環境―といった「個人の不健康の根本原因となっている社会的決定要因」に目を向け、社会として解決に取り組むに目を向けることを提言しています。「国や自治体が考えること」と知らん顔をするのではなく、国民1人1人が、こうした点を意識し、行政に働きかけたり、各種選挙の際の判断要素として意識することで、環境改善が図られていきます。



6機関では、今後、「日本人での研究」を戦略的に推進し、提言をバージョンアップさせ、「国民の健康寿命延伸のために必要な情報をさらに充実していく」考えを強調しています。

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