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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

都内在住の高齢者、「子供が介護する」ケースが「介護職員が介護する」よりも多い―東京都

2021.10.29.(金)

都内在住の65歳以上高齢者では、介護職員よりも「子供」が介護をしているケースが多く、最も介護時間が長いのは子供(30.5%)・配偶者(24.4%)・介護職員(20.4%)という状況である―。

要介護や認知症のリスクが高まる「社会的孤立」に陥っている人が少なくなく、とくに一人暮らし高齢者でその割合が高まる―。

東京都が10月28日に公表した「高齢者の生活実態』(2020年度の東京都福祉保健基礎調査)結果からこうした状況が明らかになりました(都のサイトはこちら(概要))。

介護職よりも「子供」が介護しているケースが多く、全体の54.2%に

調査は、都内在住の65歳以上高齢者4711名(男性45.4%、女性54.6%)を対象に(1)世帯の状況(2)家族介護の状況(3)健康の状況(4)介護保険制度の利用状況(5)認知症等の状況(6)住まいの状況(7)他者とのコミュニケーションの状況(8)社会参加の状況(9)就業・経済の状況―などを調べています。ポイントを絞って結果を眺めてみましょう。

まず(1)世帯については、▼一人暮らしは男性18.7%・女性25.2%▼高齢者のみの世帯は57.0%▼子どもとの同居割合は40.0%(ここ40年間で25.8ポイント減少)―などの状況が見えてきました。公的な支援(介護保険や市町村の総合事業など)が必要な高齢者が増加していることが伺えます。

一人暮らし高齢者、高齢者のみ世帯が増加している(都高齢者生活実態調査1 211028)

高齢者と子供との独居・別居状況(都高齢者生活実態調査2 211028)



また(2)では、14.3%の高齢者が「家族や親族の介護を行っている」ことが分かりました。配偶者・親の介護をしている人が多く、「老々介護」の現実が見えてきています。



他方、(4)の介護保険制度の利用状況を見ると、▼要介護・支援認定を受けている人は15.0%で、要支援1(22.5%)・要支援2(18.6%)・要介護1(14.2%)・要介護2(14.0%)・要介護3(8.5%)・要介護4(7.9%)・要介護5(5.8%)となった▼要介護・支援認定を受けている人の73.7%が実際に介護を受けており、主な介護者は「子供」であるケースが54.2%、最も介護時間が長いのは子供(30.5%)・配偶者(24.4%)・介護職員(20.4%)―などの状況が分かりました。

主な介護者について、介護職員よりも「子供」であるケースが多い点、上述のとおり一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯が増加している点などを踏まえると、「家族介護から公的介護へのシフト」をさらに進めることの重要さが浮き彫りになったと言えるかもしれません。

子どもから介護を受けている高齢者が多い(都高齢者生活実態調査4 211028)

要介護認定の状況(都高齢者生活実態調査3 211028)



さらに、▼公民を問わず「日常生活を支援するサービス」(家事援助や配食、外出支援など)を受けている人の割合は10.2%▼要介護認定を受けている人では家事援助(掃除、洗濯、買い物など)利用が22.1%―などの状況も分かってきています。公的介護保険だけでなく、市町村の総合事業や民間の生活支援サービスなどを組み合わせることで、一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯の生活を支援していくことが重要でしょう。となっています。

高齢者の日常生活支援サービスの利用状況(都高齢者生活実態調査5 211028)



また(5)の認知症に関しては、▼「家族や周囲に負担がかからないか」(48.1%)、「日常生活を続けられるのか」(43.2%)、「医療・介護費用はどの程度か」(36.6%)、「自分の生活・行動がどう変わるのか」(34.6%)、「予防・治療法はあるのか」(31.0%)、「どこに相談・受診すればよいのか」(26.0%)などの不安がある▼成年後見制度(認知症などで判断能力が低下した際に、成年後見人が本人に代わって財産管理や事務手続きなどを行う仕組み)は43.5%が知っているが、24.7%は知らない―などの結果が出ています。分かりやすい情報提供にこれまで以上に国や自治体、さらには医療機関や介護施設・事業所などが力を入れていくことが期待されます。

高齢者の認知症に対する不安(都高齢者生活実態調査6 211028)



さらに(6)では「介護が必要になった時の住まい」について、「現在の住宅に住み続けたい」(44.5%)が最も多いことが確認されました。在宅介護や在宅医療、さらには生活支援サービスを充実させ、「要介護度が重くなったとしても、可能な限り住み慣れた自宅で生活継続できる」ことを目指す、地域包括ケアシステムの構築を急ぐことの重要性を改めて認識できます。

社会的孤立に陥っている高齢者も少なくない、自治体や住民組織からの働きかけを

ところで、都の健康長寿医療センターでは▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど▼身体機能低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクが高い—などの研究成果を発表しています。

この点に関連して、今回の調査でも「社会的孤立」の状況を調べています。その結果、例えば▼45.0%がほぼ毎日「外出」しているが、ほとんど外出しない(5.6%)、月1日程度しか外出しない(2.3%)人も一定程度いる▼42.5%がほぼ毎日「子供や親族、知人などと会話や電話、メール等で交流」しているが、まったくない(1.2%)、年に数回程度(5.6%)、1か月に1回程度(9.2%)という人も一定程度いる▼近所づきあいがない人が11.5%おり、一人暮らし世帯では18.1%にのぼる―ことが分かりました。事態を放置すれば、▼身体機能低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクが高い者が増加するため、自治体や住民組織(町内会など)から一人暮らし高齢者に働きかけるなどの取り組みに期待が集まります。

高齢者との他者との交流の頻度(都高齢者生活実態調査7 211028)



なお、地域包括支援センター(自治体に設置される、高齢者が住み慣れた地域で生き生きと生活できるよう支援する窓口)の認知度が14.3%にとどまっており、「知らない」(33.2%)、「名前だけ知っている」(24.1%)が多数を占めています。地域包括支援センターが何をしているところか、どういう場合に支援、どういった支援を受けられるのか、などを高齢者やその家族に周知していく取り組みも重要でしょう



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