プログラム医療機器の開発遅れによる保険適用留保、厚労省が「再発防止」策、企業にペナルティ―中医協総会(2)
2022.1.14.(金)
こうした事態の再発を防止するため、厚生労働省の各部局やPMDA(医薬品・医療機器総合機構)が重層的に「確認」等を新たに行うこととし、当該企業については再発防止策が示されるまで「製品の保険適用手続きを保留」するペナルティを課す―。
1月14日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした点が了承されました。
厚労省の関係部局、PMDAが重層的に「プログラム開発状況」を確認する仕組みを新設
Gem Medでも報じたとおり、中医協で「12月1日付で保険適用する」ことが承認されたプログラム医療機器「オンコタイプ DX 乳がん再発スコアプログラム」について、メーカー側のプログラム開発が遅れ、12月1日の保険適用に製品開発・販売が間に合わず、保険適用が留保されるという異例の事態が生じました。
厚労省で調査を行ったところ次のような背景があることが分かりました。
◆当該プログラム医療機器は▼解析プログラム(米国Genomic Health社のクラウド上に存在)▼日本ポータル(解析プログラムにアクセスし、米国側プログラムでの解析・分析結果を抽出して、日本側へ表示するツール)―で構成されている。審査の過程で「検査対象患者を限定する」との指示が出され、日本ポータル等の修正が必要となった。しかし開発企業(エグザクトサイエンス社)のガバナンス体制に問題があり「必要な情報が関係者に共有されていなかった」ことからプログラム改修等が期限通りに行われなかった
事態を重く見た厚労省は、関係部局(保険局医療課、医政局経済課、医薬・生活衛生局医療機器審査管理課)で再発防止策を協議し、次のような内容を固めました。1月14日の中医協総会でも了承されています。
▽プログラム医療機器のうち「薬事の審査過程で改修が指示され、改修を条件に承認されたもの」については、承認後上市までの間に「指示に従って改修・検証された」ことをPMDAが確認する
▽医療機器審査管理課は、医政局経済課に対し「承認時に改修予定品目を伝達する」とともに、「指示どおりに改修・検証されたことの確認結果」(書面)を共有する
▽医政局経済課は、上記の確認結果(書面)を把握した後で、改めて「保険適用時点にプログラムが稼働できる」ことを確認するため、企業より自己宣言書の提出を求めた上で保険適用プロセスに入る(保険医療材料等専門組織に諮る)
「指示に沿った改修がスケジュール通りに行われている」ことを厚労省・PMDAで重層的に確認したうえで保険適用を行っていく仕組みを新たに設けるものです。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、さらに「プログラム医療機器については、これまでの考え方では対応できない問題が生じることが明らかになったと言える。プログラム医療機器は極めて多様であり、個別事案ごとに丁寧に『問題が生じないか』を確認していく必要がある」と注文しています。
当該企業には「再発防止策」を求め、その間、製品の保険適用手続きはストップ
あわせて今般の事態を引き起こした当該企業(エグザクトサイエンス社)については、「厚労省へ、正当な理由なく安定供給が困難な事態を遅滞なく報告しなかった」ために、「企業からの再発防止策等の改善策が示されない限り、医政局経済課において今後の保険適用の手続きを留保する」考えが示されました。
今回の「オンコタイプ DX 乳がん再発スコアプログラム」については、プログラム改修等を行うだけでなく、「社内のガバナンス体制強化」などの再発防止策を講じて初めて、「改めて保険適用の検討」を行うことになります(プログラム改修のみでは保険適用は行われない)。また、当該社の別製品についても、再発防止策が講じられるまでは「保険適用の手続き」が行われません。
この考え方にも中医協委員から異論は出ていませんが、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「乳がん再発リスクの解析・分析は患者にとって非常に重要である。必要に応じて保険外併用療養の活用を検討すべきである」との考えを示しています。
例えば、プログラムの改修は終えたが再発防止策が講じられないという場合には「当該プログラム医療機器の活用は、自由診療の中で行う」こととならざるを得ません(再発防止策が講じられるまで保険適用が留保されるため)。しかし、患者負担を考慮すれば「保険適用されていない本機器の使用」と「保険診療」との併用を認めることも重要です。
この点、中医協総会終了後の記者会見で、厚労省保険局医療課医療技術評価推進室の中田勝己室長は「今後、学会や医療機関から本プログラム医療機器を先進医療などとして活用したい(保険診療と保険外診療との併用を可能にしてほしい)との要望があれば、ルールに則って審査していくことになる」との考えを提示。ただし、現在のところそうした要望は学会・医療機関から出ておらず、具体的な動きはないことも明らかにされました。
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