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小児がん拠点病院の集約化に向け診療実績要件厳格化、小児に配慮した妊孕性温存要件―小児がん拠点病院指定要件WG

2022.1.18.(火)

「小児がん拠点病院」は現在15施設が指定されているが「集約化」を進める必要はないだろうか―。

「小児がん拠点病院」の指定要件(整備指針)では、例えば「小児がんについて年間新規症例数が30例以上であること」などの診療実績要件があるが、「基準の引き上げ(例えば40症例に引き上げる)」や「再発・難治症例の実績基準導入」などの必要はないか―。

「小児がん連携病院」について医療の質のバラつきが指摘されており、指定要件等の抜本的な見直しを行う必要があるのではないか―。

1月17日に開催された「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、こういった議論が始まりました。今夏(2022年夏)の指定要件見直しに向けて議論が進められます。

「小児がん拠点病院」の指定要件も2022年夏に見直し

Gem Medでお伝えしているとおり、今夏(2022年夏)に「がん診療連携拠点病院」や「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」「小児がん診療病院」などの指定要件が見直されます。見直し論議を行うために、厚生労働省の「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」を親組織として、▼成人拠点▼小児拠点▼ゲノム拠点―の3ワーキングを設置し、相互連携を重視する検討体制が敷かれました。例えば「小児がん」患者の予後が良くなる中では、成人医療に移行するにあたり「小児がん拠点病院と、がん診療連携拠点病院とで、切れ目のない医療提供を可能とする」ことが極めて重要となります。こうした点を重視して、▼成人拠点▼小児拠点▼ゲノム拠点―の3拠点病院等の要件を「総合的に考えていく」こととなったのです(関連記事はこちら、ゲノム拠点病院の要件見直しに関する記事はこちら、成人拠点病院の要件見直しに関する記事はこちら)。

今般、小児がん拠点病院等の指定要件見直し論議がワーキングで始まり、厚生労働省から次のような「見直しに向けた論点案」が提示されました。これらを中心に今夏(2022年夏)の取りまとめに向けて議論が進められます。

(1)小児がん拠点病院について「集約化」を目指すべきではないか
(2)キャンサーボードについて定義。対象症例の明確化を行ってはどうか
(3)小児がん患者の長期フォローアップを充実するための要件見直しを行ってはどうか
(4)AYA世代のがん診療・支援を充実するための要件見直しを行ってはどうか
(5)地域連携クリティカルパスについて小児がん領域ではほとんど実施されていない点をどう考えるか
(6)「専門的な知識・技能を持つ医師」の配置要件をどう考えるか
(7)「専門的な知識・技能を持つ医療従事者」(医師以外)の配置要件をどう考えるか
(8)「診療実績」要件について厳格化すべきではないか
(9)研修実施体制について定義・対象者の明確化を行ってはどうか
(10)情報収集体制要件について診療実態などを踏まえた見直しを行うべきではないか
(11)小児がん拠点病院における「臨床研究の在り方」をどう考えるべきか
(12)患者の発育・教育等に関して必要な環境整備を充実してはどうか
(13)QI(Quality Indicator)を積極的に活用したPDCAサイクル確保要件をさらに充実してはどうか
(14)「小児がん連携病院」の質にバラつきがある現状を踏まえ、指定要件の抜本的な見直しを行ってはどうか
(15)BCP(事業継続計画)的な視点に基づく診療体制の確保を要件化してはどうか
(16)オンライン会議システムなどICTの利活用が促進されるような要件の新設を行ってはどうか
(17)妊孕性温存療法を実施できる体制整備に資するような要件の新設を行ってはどうか
(18)「小児科での完結」にとどまらず「他診療科との院内連携」が進むような要件の新設を行ってはどうか

小児拠点病院の「集約化」を進めるべきか、患者の医療アクセスへの配慮も重要視点

論点案は膨大ですので、ポイントを絞って「どういった方向で議論が進められていくのか」を眺めてみます。各項目の具体的な見直し内容は、今後の議論の中で詰められていきます。

まず(1)では、現在、下図の15施設が小児がん拠点病院として指定されているところ、「集約化」(つまり15施設からの絞り込み)を行ってはどうかという論点です。

小児がん中央機関、小児がん拠点病院の指定状況



小児がん患者数は限定的(少ない)なため、施設を絞って「症例の集約化」を行うことが診療の質向上という視点で欠かせません。このため指定要件(整備指針)でも「小児がん患者の数が限られている中、質の高い医療及び支援を提供するためには、一定程度の医療資源の集約化が必要であることから、地域バランスも考慮し、当面の間、拠点病院を全国に10か所程度整備するものとする」と定められています。現在の「15施設」からさらに絞り込みを行うことで「症例の集約化をさらに進め、難治症例などに重点的に対応できる」体制が構築され、治療成績が向上することも考えられます。

この論点についてワーキングでは、▼連携病院の要件強化・充実(連携病院でより質の高い診療が行えるような体制整備)を行ったうえでの拠点病院集約化(舛本大輔構成員:全国小児がん経験者ネットワークシェイクハンズ!副代表、小俣智子構成員:武蔵野大学人間科学部社会福祉学科教授)▼拠点病院の地域バランス確保(笹月桃子構成員:西南女学院大学保健福祉学部教授・九州大学病院小児科特任助教、米田光宏構成員:国立成育医療研究センター小児外科系専門診療部外科診療部長・小児がんセンター副小児がんセンター長・同腫瘍外科診療部長・国立がん研究センター中央病院小児外科長、滝田順子構成員:京都大学大学院医学研究科発達小児科学教授)―を求める声が出ています。

前者・後者ともに「小児がん患者が適切な医療へのアクセス」も重視すべきとの意見と言えます。上述のように「診療の質」を高めるためには「施設・症例の集約化」が不可欠です。症例が分散すれば、個々の施設での知見蓄積・スキル向上が滞ってしまうためです。ただし「過度な集約化」は「医療へのアクセスを阻害してしまう」という弊害もあります。このため前者では「連携施設を充実してアクセスを確保すべし」、後者は「地域バランス、つまりアクセスを考慮した拠点病院整備を行うべし」との指摘が出ているのです。

「診療の質向上に向けた集約化(施設の絞り込み)」と「患者の拠点病院へのアクセス確保」とのバランスをとることを重要視点に据えた議論が今後進むこととなるでしょう。

成人拠点病院と小児拠点病院が連携し長期フォローやAYA世代千を推進すべき

(3)の長期フォローは、「小児がん患者が成人に移行する場合」「小児がん患者が成人に達した後に合併症(晩期合併症)が発生した場合」などに円滑な医療が受けられるような体制構築を目指すものです。成人期には「がん診療連携拠点病院」などを受診するケースが増えると思われますが、現在の指定要件(整備指針)では「成人医療施設との連携」については具体的に示されておらず、適切なフォローアップがなされていない可能性がある(例えば成人期の合併症治療の際に「小児時代の治療記録が入手できない」といった事態が生じるなど)と指摘されています。

ワーキングでは「連携の重要性」が再確認され、例えば竹之内直子構成員(小児がん看護学会理事)からは「小児がん患者が成人移行する場合に受け手となるがん診療連携病院等を探すことにも苦労がある。成人拠点病院(がん診療連携拠点病院等)の指定要件においても『小児がん拠点病院と連携する』などの項目が盛り込まれると良いのではないか」との提案がなされています。冒頭に述べた「3拠点病院の指定要件を総合的に検討する」ことの重要性がまさにここにあると言えます。

関連して(4)のAYA世代(Adolescent and Young Adult、一般的に15-39歳)のがん診療・支援については「小児がん拠点病院でどこまでカバーすべきか、成人拠点病院(がん診療連携拠点病院等)でどこまでカバーすべきか」が明確にされていません。つまり「AYA世代のがん患者が、小児と成人の間隙に陥ってしまい、十分ながん診療・支援が受けられていない」可能性があるのです。ここでも小児拠点病院サイド・成人拠点病院サイドの双方からのアプローチが重要となり、竹ノ内構成員は「小児拠点病院でカバーすべき範囲の明確化、小児拠点病院がどの成人拠点病院(がん診療連携拠点病院等)と連携しているのかの明確化などが行えると良いのではいか」とコメントしています。



(6)の医師配置、(7)の医療従事者配置では、例えば▼専門的な知識・スキルを持つ医師や薬剤師(緩和ケアや薬物療法分野など)の確保が困難である▼専門的な知識・スキルを持つ看護師について大学病院での配置は進んでいるが、小児科病院では必ずしも十分に進んでいない、また専門看護師等が「小児がん患者対応を行っている」かどうかは明らかになっていない―などの点をどう考えるか重要論点として浮上しています。

年間新規症例数の引き上げ(40例へ)や、難治症例要件など診療実績要件を厳格化

(8)の診療実績については、、現在の指定要件(整備指針)で▼小児がんについての年間新規症例数が30例以上▼固形腫瘍についての年間新規症例数が10例程度▼造血器腫瘍についての年間新規症例数が10例程度―と定められています。

この点、ワーキングでは▼年間新規症例30例以上を『40例以上』等に引き上げるべきではないか(松本公一座長:国立成育医療研究センター小児がんセンターセンター長、米田構成員)▼難治症例・再発症例の診療実績要件を新設すべきではないか(小川千登世構成員:国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長、滝田構成員)―などの意見が出されています。

前者は、上述した「集約化」にも関連してくる論点です。後者は「拠点病院はより重症な患者への対応力を強化すべき」との考え方に基づく論点です。今後、「患者の発生状況」などのデータ(患者が発生していなければ、そもそも診療実績とならない)も踏まえ、(1)の「集約化」論点と合わせて検討が進められます。

関連して松本座長は「小児がん拠点病院はオールマイティ病院であるべきか、『固形腫瘍には強いが、造血器腫瘍はそれほどでもない』、あるいはその逆といった病院は拠点病院に相応しいのか、などの点も考えていく必要があるのではないか」との考えを示しています。

連携病院における「質のバラつき」を是正するために、連携病院の在り方から検討

(14)の「小児がん連携病院」は、小児がん拠点病院が地域ブロック協議会の議論を踏まえて指定を行う(2019年から指定開始)こととなっており、2020年4月1日時点で見ると、▼北海道ブロック:16病院▼東北ブロック:9病院▼関東甲信越ブロック:36施設▼東海・北陸ブロック:17病院▼近畿ブロック:30病院▼中国・四国ブロック:16病院▼九州・沖縄ブロック:16病院―の合計140病院が指定されています。大きく▼拠点病院と同程度の医療提供を行えるカテゴリー1(106施設)▼特定のがん種について集学的治療・標準的治療を行えるカテゴリー2(12施設)▼小児がん患者等の長期フォローアップを主に行うカテゴリー3(46施設)―に分けられます(カテゴリーの重複がある)(連携病院の指定状況はこちら(国立成育医療研究センターのサイト))(2021年10月1日時点では146施設に増加している)。

連携病院は、拠点病院と連携して小児がん患者に適切な医療提供や教育などを行っていますが、「診療の質等にバラつきがある」「カテゴリーの重複はおかしい」などの指摘があります。ワーキングでは、米田構成員から「地域ブロック協議会で指定の可否を決めるので差異は出るが、『一定の質』を確保する必要がある」との、滝田構成員から「連携病院の在り方を根本から議論し、連携病院となるに当たってのメリットなども考えていく必要がある」との意見が出されました。

上述した(1)「拠点病院の集約化」を行うとなれば、「小児がん患者のアクセス」を確保するために連携病院の存在意義について重要性が増していきます。今後の議論に注目する必要があります。

患者が「小児」である点を十分に考慮した「妊孕性温存」要件を考える必要がある

(17)の妊孕性温存については、体制・技術の整備はもちろん「小児患者特有の事情」を考慮すべきとの指摘が笹月構成員から強調されました。小児患者自身の中には「妊孕性温存」を理解することが難しい年齢の患児も少なくなく(現在の闘病で精一杯の子どもが「来ないかもしれない将来」や「妊娠や子ども」のことを考えなければならない。性教育がなされていない患児も少なくない)、保護者も「わが子の治療・生命を考えることで精一杯な中で、孫のことまでも考えなければならない」という事情があるのです。笹月構成員は「妊孕性温存について単に伝えるだけにとどまってはいけない」と強く指摘しています(関連記事はこちらこちら)。



今後、各論点に沿って、具体的な見直し論議がワーキングで進められていきます。



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