アザチオプリンの筋無力症患者への適応外使用、事前の効果判定のための遺伝子検査を保険診療の中で実施可―厚労省
2022.3.2.(水)
「アザチオプリン」(製品名:アザニン錠、イムラン錠)を、「全身型重症筋無力症」に対し適応外使用することが審査上認められたが、一部遺伝子変異を持つ患者では、当該薬剤投与で副作用発現の可能性が高い―。
そこで、この「適応外使用」の効果(副作用発現の有無など)を事前に判定する遺伝子検査を、保険診療の中で行うことも認める―。
厚生労働省は2月28日に事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その97)」を提示し、こうした考えを明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。
医薬品の適応外使用の効果を判断する検査を、保険診療として実施可
Gem Medで報じたとおり、同日(2月28日)に社会保険診療報酬支払基金と厚労省が「審査情報」を提供。その中で次のような「医薬品の適応外使用」を審査上認めることが明らかにされました(関連記事はこちら)。
▽「臓器移植における拒絶反応の抑制」「潰瘍性大腸炎の寛解維持」「治療抵抗性のリウマチ性疾患」「自己免疫性肝炎」などに用いることが認められている「アザチオプリン」(製品名:アザニン錠、イムラン錠)について、「全身型重症筋無力症」に対する投与を審査上認める
▽この場合の【用法・用量】は、次のように設定されます
▼成人:アザチオプリンとして体重1kgあたり1-2mg相当量(1日量)
▼小児:アザチオプリンとして体重1kgあたり0.5-1mg相当量(1日量)で導入し、1日につき「体重1kgあたり0,5mg」ずつ増量する(最大体重1kgあたり2.5mgまで)
▼NUDT15遺伝子多型でArg/Cys、 His/Cys、Cys/Cys型の患者においては「脱毛」「白血球減少」などの副作用のため「低用量」が推奨される
ところで、この適応外使用に関して、「Nudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子多型でCys/Cys型を有する患者」では、本剤投与後に「脱毛」「白血球減少」などの副作用発現の可能性が高くなることから、より安全に使用するため投与前に「NUDT15遺伝子多型検査」を行うことが望ましいとされています。
「適応外使用」(保険診療の特例)を実施すべきか否かを判断するための検査であり「保険外で実施するべき」とも思われます。しかし、その場合には、一連の治療すべてが自由診療となり「全額自己負担となってしまう」ことになります。
これでは「適応外使用」を可能とした意味が薄れてしまうことから、今般の疑義解釈では次のような考えを明らかにしています。
▽全身型重症筋無力症でアザチオプリンの投与対象となる患者に対し、その投与の可否、投与量などを判断することを目的に、リアルタイムPCR法によって「Nudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子多型の測定」を行った場合には、D006-17【Nudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子多型】(2100点)を算定できる
「医薬品(アザチオプリン)の適応外使用を認める」→「一部の遺伝子変異がある患者で、アザチオプリンの適応外使用を行うと副作用発現の恐れが強い」→「遺伝子変異の有無などの検査を、適応外使用患者についても保険診療の中で実施することを認める」という、患者目線に立った優れたロジックと言えます。
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