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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

乳房再建等に用いる皮膚拡張器・ゲル充填人工乳房について「使用要件基準」策定—形成外科学会・美容外科学会

2022.5.13.(金)

日本形成外科学会と日本美容外科学会は5月12日に「外傷・先天異常に対する乳房再建、ならびに乳房増大を目的としたゲル充填人工乳房および皮膚拡張器に関する使用要件基準」を公表しました(学会のサイトはこちら)。

専門医資格等を持つ医師が、要件にマッチする患者に対して適切に施術することが求められるとともに、ゲル充填人工乳房については「未分化大細胞型リンパ腫」(BIA-ALCL)の発症がないかを確認するために、人工乳房を挿入している間(いわば生涯)、定期検診を受診することなどが強く求められます。

形成外科学会や美容外科学会の専門医等が、必要な講習会を受講することが求められる

外傷・熱傷・先天異常など様々な原因による乳房変形の改善を目的とした「乳房再建術」や、豊胸を目的とした「乳房増大術」においては、▼ゲル充填人工乳房(ブレスト・インプラント)▼皮膚拡張器(ティッシュエキスパンダー)—が用いられます。

日本形成外科学会と日本美容外科学会はこのほど、乳房再建・乳房増大に用いる▼ゲル充填人工乳房▼皮膚拡張器—に関して新医療機器として導入するための「使用要件等基準」を定め公表したものです。「医療の質」向上に期待が集まります。

まず、皮膚拡張器(2012年以降に国内薬事承認を受けた乳房再建用皮膚拡張器)については、▼外傷・熱傷・先天異常など種々の原因による乳房変形症例▼放射線照射により皮膚の血行や弾力性が障害されていない症例—を対象に、「日本形成外科学会認定の形成外科専門医、日本美容外科学会認定の専門医、これら専門医の指導下で研修を行う医師」が「日本形成外科学会が主催・認定する講習会を受講し、拡張器の使用方法・注意点について理解している」場合に適応となることが示されました。

ただし、上記患者がすべて適応となるわけではなく、▼乳房再建を希望している▼拡張機は一時的なもので「インプラントや自家組織への入れ替えが必要」な旨を理解している▼拡張器を用いた二期的再建術について、起こりうる合併症等を理解し、症例登録に関して書面 で同意している—ことが要件となります。

また次の患者は適応対象外となる点に留意が必要です。
▽局所に悪性腫瘍が認められる
▽活動性の感染がある
▽ペースメーカーなど磁力の影響をうける金属が装着されている(拡張器の一部に磁石が使用されている場合のみ)
▽局所の血行不全や薬剤の影響、その他創傷治癒が阻害される状態をもつ
▽拡張器留置期間中にMRI検査の必要性が予想される(拡張器の一部に磁石が使用されている場合のみ)
▽精神疾患等で不適当と判断される
▽その他担当医が不適当と判断している

さらに、実施に当たっては、▼血腫・漿液腫予防のために適切なドレーンを留置する▼創の離開を防止するために真皮縫合を十分に行って創閉鎖を行う▼外来での拡張器使用に関しては、21G(またはそれより細い)翼状針を装着したシリンジを用いて注入ポートに生理食塩水を注入する—などの留意が必要とされています。



一方、ゲル充填人工乳房(国内薬事承認を受けているもの)については、以下の患者に対して「日本形成外科学会認定の形成外科専門医、日本美容外科学会認定の専門医、これら専門医の指導下で研修を行う医師」が「日本形成外科学会が主催・認定する講習会を受講し、インプラントの使用方法・注意点について理解している」ことが実施に当たって求められます。

(患者サイドの適応基準)
▽ブレスト・インプラントによる乳房再建術または乳房増大術を希望している
▽「インプラントは半永久的なものではなく、経過中破損することもあり、摘出や入れ替え(新たなインプラントや自家組織)が必要となる」ことを理解している
▽インプラントの変形や破損の有無を調べるために、「約2年に一度、MRI・超音波検査などの検査を行う」ことを含めて、インプラント挿入中、1年に一度は診療を行う必要がある旨を理解している
▽人工物であるインプラントの挿入で起こりうる合併症(感染・被膜拘縮・位置異常・BIA-ALCLの発症など)を理解し、症例登録に同意している

他方、次の患者は適応対象外となる点に留意が必要です。
▽局所に悪性腫瘍が認められる
▽活動性の感染がある
▽妊娠中あるいは授乳中である
▽局所の血行不全や薬剤の影響、その他創傷治癒が阻害される状態をもつ
▽精神疾患等で不適当と判断される
▽その他担当医が不適当と判断している

実施に当たっては、▼術前の計測により「最も適したインプラントを選択」する(スムーズタイプとテクスチャードタイプが選択でき、被膜拘縮はテクスチャードタイプで少なく、BIA-ALCL発症はスムーズタイプでかなり少ないことを説明しなければならない)▼インプラントは大胸筋下、大胸筋膜下、または乳腺下の層に挿入する—などの点に留意を求めるとともに、上述どおり「インプラントが挿入されている限りは経過観察を行う」「約2年に 一度はMRIや超音波検査などの検査を行ってインプラント等の状態を確認し、新たな合併症が生じた場合には速やかに日本形成外科学会ブレスト・インプラントガイドライン管理委員会に対して報告を行う」ことを強く要請しています。

Gem Medでも報じているとおり、ゲル充填人工乳房(人工乳房、乳房インプラント)に起因する「未分化大細胞型リンパ腫」(BIA-ALCL:乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)が散見されている点に、医療者・患者の双方が最大限に留意することが必要かつ重要です(関連記事はこちらこちら)。



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