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妊婦の血液中水銀濃度高まると妊娠糖尿病の発症頻度高まる!「魚の食べ方」見直しは現時点では不要―国立療養研究所

2022.5.25.(水)

「妊婦の血液中水銀濃度」が高まると「妊娠糖尿病の発症頻度」が高まることが分かった。ただし、その影響はそれほど大きくなく、「妊婦の魚の食べ方」見直しまでは現時点では不要と考えられる―。

国立療養研究所は5月20日にこうした調査研究(妊婦の水銀ばく露と妊娠糖尿病との関連:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査))の結果を公表しました(研究所のサイトはこちら)。

水銀濃度以外にも生活習慣や出産年齢など様々な要素が妊娠糖尿病に関係

初産年齢の高齢化・産婦の高齢化に伴い、基礎疾患や精神疾患等をもつ妊婦(いわゆるハイリスク妊婦)が増加しています。日本産科婦人科学会の調査によれば、妊娠しておらずとも発症する「偶発合併症」を持つ妊産婦が増加しており、2010年には全妊産婦の32.2%を占めています。具体的には▼妊娠高血圧症▼妊娠糖尿病▼呼吸器疾患▼甲状腺疾患▼精神疾患―などが多いようです。

こうしたハイリスク妊婦を早期に鑑別し、適切な処置・指導等を行うことで安全な分娩につなげることが可能です。診療報酬でも、入院基本料等加算の中にA236-2【ハイリスク妊娠管理加算】やA237【ハイリスク分娩管理加算】が整備されるなど、医療保険でもハイリスク妊婦に対する配慮が行われています。

東北大学大学院医学系研究科の龍田希准教授、仲井邦彦名誉教授らの研究グループと国立環境研究所は、妊婦の偶発合併症の1つである「妊娠糖尿病」と「妊婦の血液中の水銀濃度」との関係に着目。海外の先行研究で「妊娠中の水銀曝露が妊娠糖尿病の発症に関連する」との報告があることを踏まえ、「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)に登録されている7万8964名の妊婦(10万4602名の妊婦のうちデータの揃っている者)を対象に調査を実施したものです。そこから次のような状況が明らかになりました。

▽対象者のうち妊娠糖尿病患者の割合は2.1%

▽妊婦の血液中の金属の中央値は、水銀が3.6ng/g

「妊婦の血液中の水銀濃度が高くなる」ことと、「妊娠糖尿病の発症頻度が高くなる」こととの間に関連がある

▽妊婦の血液中の水銀濃度が4.99 ng/g以上の場合に妊娠糖尿病へ影響を与えることが示唆される(対象者の27.1%がこの数値を超過

妊婦の血液水銀濃度と妊娠糖尿病発症との間には一定の関係がある



もっとも「水銀に起因する妊娠糖尿病の発症リスクは大きくない」と国立療養研究所は判断(オッズ比で1.3程度)。妊娠糖尿病の発症要因は「水銀」以外にも▼喫煙▼肥満▼高年齢での出産—など多くの要因が関与することから、「水銀の曝露を控える」だけで発症リスクを回避できるものではないことにも留意が必要です。

水銀は、食物連鎖で上位となる魚など(イルカ、クジラ、クロマグロ、カジキマグロ、キンメダイなど)に多く含まれており、厚生労働省は「メチル水銀含有量の高い特定の魚の摂取を控える」よう注意喚起を行っています(厚労省のサイトはこちら、サイト内に「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項」や「Q&A」が掲載され、「妊娠中に注意すべき魚の種類と量」などを分かりやすく解説している)。

妊娠中の魚摂食について(厚労省サイトより)

注意が必要な魚1(厚労省サイトより)

注意が必要な魚2(厚労省サイトより)



一方、魚には胎児の成長を促す栄養素が豊富に含まれているため「妊娠中に積極的に摂取すべき食材」でもあります。

国立療養研究所等では「今回の研究結果により認められた影響は軽微であり、厚労省が推奨する魚の食べ方を見直す必要は現時点ではない」との考えも強調しています。

今後も「妊娠糖尿病の発症メカニズム」に関する研究が進むことに期待が集まります。象



【子どもの健康と環境に関する全国調査】(エコチル調査)
▽「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露」が「子どもの健康」に与える影響を明らかにするための研究

▽2010年度から全国で約10万組の親子を対象とし、て▼臍帯血▼血液▼尿▼母乳▼乳歯—などの生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行っている



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