2021年、日本国の人口は62万超の大幅減、10人に1人が老衰で天寿を全う―厚労省
2022.6.6.(月)
2021年、出生数と死亡数の差である「自然増減数」はマイナ62万8205人で、人口減少ペースはさらに加速している―。
死因をみると第1位のがん、第2位の心疾患、第3位の老衰という順位に変わりはないが、「老衰」による死亡率が前年比べて16.5ポイントも増加。10人に1人が「天寿を全う」している状況である―。
また「がん」による死亡を詳しくみると、男性では「肺がん」死亡がトップである状況に変わりはないが、第2位と第3位が入れ替わり、「大腸がん」が第2位に躍り出た―。
このような状況が、6月3日に厚生労働省が公表した2021年の「人口動態統計月報年計(概数)の概況)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
目次
2020年から21年にかけて日本国民は「62万人」超の大幅減少、減少スピードさらに加速
我が国では、少子高齢化が急速に進行しています。少子化の進行は、「社会保障財源の支え手」はもちろん、「医療・介護サービスの担い手」が足らなくなることを意味します。さらに社会保障制度にとどまらず、我が国の存立そのものをも脅かします(国家の3要素である「領土」「国民」「統治機構」の1つが失われ、日本国そのものが消滅しかねない)。
このため、人口動態統計として▼出生▼死亡▼婚姻▼離婚▼死産—の5つの事象を把握し、対策を検討していくことが我が国にとって非常に重要となるのです。
2021年の状況を見ると、出生数は81万1604人で、前年(84万835人)に比べて2万9231人減少しました。出生率(人口1000対)は6.6で、前年(6.8)から0.2ポイント低下しています。
一方、死亡数は143万9809人で、前年(137万2755人)に比べて6万7504人の増加。死亡率(人口1000対)は11.7で、前年(11.1)から0.6ポイント上昇しています。
出生数と死亡数の差である「自然増減数」を見ると、マイナス62万8205人で、前年(マイナス53万1920人)に比べて9万6285人と減少ペースはさらに加速。自然増減率(人口1000対)はマイナス5.1で、前年(マイナス4.3)から0.8ポイント低下。自然増減数・自然増減率ともに15年連続で減少かつ低下しています。我が国の「人口減少」にさらに拍車がかかっていることが分かります。
さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると、2021年は1.30で、前年(1.33)から0.3ポイントの低下となりました。合計特殊出生率は2015年に上昇したものの、その後、再び低下し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響で低下が続いています。
都道府県別の合計特殊出生率を見ると、最も高いのは沖縄県で1.80(前年に比べて0.03ポイント低下)、次いで▼鹿児島県の1.65(同0.04ポイント上昇)▼宮崎県の1.64(同0.01ポイント低下)▼島根県の1.62(同0.02ポイント上昇)▼長崎県の1.60(同0.01ポイント低下)―などで高くなっています。
逆に最も低いのは東京都の1.08(同0.04ポイント低下)で、次いで▼宮城県の1.15(同0.05ポイント低下)▼北海道の1.20(同0.01ポイント低下)▼千葉県の1.21(同0.06ポイント低下)▼秋田県の1.22(同0.02ポイント低下)▼埼玉県の1.22(同0.05ポイント低下)▼神奈川県の1.22(同0.04ポイント低下)▼京都府の1.22(同0.01ポイント低下)—などで低くなっています。都道府県別に色分けすると、依然として「明確な西高東低の傾向がある」ことを再確認できます。
前述のとおり、国家が存立するためには▼領土▼国民▼統治機構―の3要素が不可欠です。人口減少は、「国民」の要素が失われつつあること、つまり日本国が消滅に向かっていることを意味します。社会保障制度はもちろんのこと、我が国の存立基盤が極めて脆くなってきていると言えます。
コロナ禍で少子化が一層進行しており、政治が「票にならない少子化対策」にどこまで本腰を入れるのか注目が集まります。
「老衰」による死亡が増加し、2021年には10人の1人が「天寿を全う」した
次に死因別の死亡数を見ると、上位5つは次のような状況です。
▼第1位:悪性新生物(腫瘍)の38万1497人(人口10万対の死亡率は310.7で、前年に比べて4.1ポイント上昇)
▼第2位:心疾患(高血圧性を除く)の21万4623人(同174.88で、同じく8.2ポイント上昇)
▼第3位:老衰の15万2024人(同123.8で、同じく16.5ポイント増加)
▼第4位:脳血管疾患の10万4588人(同85.2で、同じく1.7ポイント低下)
▼第5位:肺炎の7万3190人(同59.6で、同じく4.0ポイント低下)
第1位の悪性新生物は、2021年の全死亡者に占める割合が26.5%(前年度に比べて1.1ポイント低下)で、日本人の3.8人に1人が「がんで死亡している」計算です。
また2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、さらに2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。その後も「老衰」による死亡が増加していることから、医療・医学等の水準が高まり「天寿を全うする」方の増加が伺えます(2021年には10人に1人が老衰で亡くなっている)。「いかに、我が国の医療提供体制が優れているのか」が確認できるデータと言えるでしょう。
なお「老衰」の人口10万対死亡率の増加は、医療・介護分野において「看取り」がさらに重要なテーマとなることを意味します。厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成。そこでは「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいのか、逆に受けたくないのかを我々国民1人1人が考え、家族や親しい友人ら、さらに医療・介護関係者と繰り返し、繰り返し話し合っておく」(可能であればそれを文書にしておく)環境・風土の醸成などを進めていくの重要性が謳われています(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。
ところで主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。
例えば、死因第1を占める「悪性新生物」は、男女ともに5-9歳では大きなシェアを占めますが、その後に低下。しかし30歳を過ぎると増加に転じ(女性では30歳を過ぎた頃から急増)、男性では65-74歳頃、女性では55-59歳頃にピークとなり、再び低下モードにはいります。
高齢になるにつれ「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるのか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないのか」といった議論を継続していく必要があるでしょう。
がんによる死亡、男性では「大腸がん」が「胃がん」を抜いて第3位に
さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2021年の死亡数(人口10万対)は5万3279(前年から32増)、死亡率(人口10万対)は89.3(前年から0.5上昇)となりました。
また男性では、「大腸」がん(同様に2万8079、47.0)が、「胃」がん(同様に2万7196人、45.6)を抜いて第3位に躍り出ている点にも注目する必要があります。多さが分かります。
女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(同様に2万4337、38.6)、第2位は「肺」がん(同様に2万2933、36.3)、第3位は「膵臓」がん(同様に1万9245、30.5)となりました。
なお部位別のがん死亡率の推移を男女別にみると、次のように傾向そのものに変わりはありませんが、その動き方には若干の性差があります。
▼胃がん:男性↓(減少傾向)、女性→(横這い)
▼肝臓がん:男性↓(減少傾向)、女性↓(減少傾向)
▼膵臓がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼肺がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼大腸がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
今後、社会的要因なども含めて男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。
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