医療従事者の教育課程・院内研修において「性と生殖に関する健康と権利」に関する事項を充実せよ—日本医療政策機構
2023.1.11.(水)
我が国では、先進諸国に比べて経口中絶薬や低用量ピルによる避妊など>「性と生殖に関する健康と権利」に関する知識啓発・制度整備などが遅れている—。
「性と生殖に関する健康と権利」に関する主な相談先は医療機関・医療従事者であり、それは産婦人科や助産師にとどまらず、「救急医療」「一般内科」「小児科」など幅広い診療科が想定される。
医量従事者の教育カリキュラム、院内研修の中で「性と生殖に関する健康と権利」事項を充実させることが早急に求められる—。
日本医療政策機構は1月10日に、こうした内容を盛り込んだ政策提言「リプロダクティブヘルス/ライツ・プラットフォーム構築に関する政策提言—全ての人が教育・相談の機会を得られる社会の実現を目指して—」を行いました(機構のサイトはこちら)。
すべての国民が「性と生殖に関する健康と権利」の正しい知識を持てるような教育が重要
セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights、以下SRHR)とは、「性と生殖に関する健康と権利」などと和訳されます。先進諸国では▼体への負担がより少ない中絶手法である「経口中絶薬」の使用▼低用量ピルによる避妊法—が進められていますが、我が国では、こうした点に関する政策・教育が遅れていると指摘されます。
そこで機構では、次の3つの視点に立った政策提言を行いました。
【視点1】日本における時代のニーズに応じた包括的性教育の教育機会の拡充と、社会全体のSRHR に関する理解を促進する
【視点2】誰もが生涯を通してSRHRに関する正しい情報を得られ、必要に応じて悩みを相談できる場を拡充する
【視点3】SRHRの充実した性教育の実施、および効果的な啓発活動や継続的な相談窓口の設置を可能にする長期的な経済的支援を行う
まず【視点1】からは、次のような提言を行っています。
(1) 学校教育での性教育の内容を「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の内容に沿ったものに充実させる
(2) 学校教育で充実した包括的性教育を実施するために、教員養成課程のSRHRに関するカリキュラムと教員への研修機会を拡充する
(3) 教育機関と連携し家庭や地域住民を対象としたSRHRの研修機会を創出する
(4) 主たる相談機関となりうる医療機関において、より当事者の視点に立った医療サービスの提供を目的として、医療者の養成課程でのSRHRの教育機会を拡充させ、さらに、医療従事者に対する卒後研修の機会も充実させる
このうち(4)では、SRHRに関する体の悩みの主な相談先である医療機関・医療者が「SRHR に関する知識を持ち、適切な対応を行う」ことが、相談者の心理的負担を大きく提言させる(相談のハードルを下げる)ことを強調。さらに、相談先は、産婦人科医や助産師にとどまらず、「救急医療」「一般内科」「小児科」など幅広い診療科が想定されることを指摘し、医量従事者(医師に限らない)の教育カリキュラムの中に「SRHRに関する課程」を盛り込むことや、医療機関等においてスタッフに「SRHRに関する研修」機会を設け・充実していくことが必須であると強く訴えています。
また、【視点2】に立ち、▼全国民が就労後もライフステージに応じてSRHRに関する正しい知識を継続して得られ、必要に応じて相談できるサポート体制を充実させる▼産業保健分野における「SRHRに関する議論」を促進させるため、企業へのSRHRに関する「相談窓口の設置」「研修等の実施」に対するインセンティブ付与などを検討する▼公的機関からのSRHRの情報について、ネットメディアやSNS等のツールを積極的に活用し、影響力の強いコンテンツと協働して、無関心層への啓発を強化する—ことを求めています。
さらに、【視点3】からは、▼全国での性教育や研修機会の均てん化に向け、「性教育の実施実態や研修実施状況を把握するための調査」実施と、その結果を踏まえた介入に対して継続的な予算の確保▼SRHRの啓発・相談窓口の設置など、当事者のニーズに合ったサービス提供可能にするための官民連携活動を後押しするとともに、継続的な経済的支援を拡充する—ことを国に要請しています。
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