2023年の給与アップ、病院医師で平均1.8%、看護師で2.0%、その他職員で1.9%と低い水準にとどまる―日病・全日病・医法協
2023.4.19.(水)
2023年の賃上げ状況を見ると、病院の常勤医師で平均1.8%、常勤看護師で2.0%、その他常勤職員で1.9%、うちスタッフ全員の給与・賃金を一律に引き上げる「ベースアップ」については常勤医師で平均0.1%、常勤看護師で0.4%、その他常勤職員で0.5%で、全産業平均の「2.1%」に比べて著しく低い水準にとどまる—。
また病院単位で見ると、定期昇給やベースアップによる賃上げが9割超で実施または実施予定となっているが、7.7%の病院では「賃上げの予定なし」という状況である—。
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が4月17日に公表した「医療機関における賃金引上げの状況に関する調査」結果から、こうした状況が明らかになりました(日病のサイトはこちら)。
7.7%の病院で賃上げの予定なく、賃上げ水準も全産業と比べて低い
医療従事者についても「賃金引き上げ」「労働環境の改善」が強く求められています。その一環として「看護職員の賃金引き上げ」が昨年から実施されています(処遇改善加算に関する記事はこちら)。
そうした中で3病院団体は、厚生労働省からの緊急依頼を受け、本年(2023年)4月に2023年における「賃上げ実施(予定含む)の有無」「常勤の医師、看護職員、その他職員の賃上げ率」などを調査。今般、その結果を公表しました。574病院が有効回答しています。
まず、「賃上げ実施」(予定含む)については、▼定期昇給(スタッフ個々人の年齢、職歴、業務の成果などに応じる昇給)・ベースアップ(スタッフ全員について一律の昇給):20.7%▼定期昇給のみ実施:69.0%▼ベースアップのみ実施:2.6%▼賃上げ未実施:7.7%—となりました。
病床規模別に見ると、次のような状況です。
【100床未満】(116病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:17.2%▼定期昇給のみ実施:66.4%▼ベースアップのみ実施:3.4%▼賃上げ未実施:12.9%
【100床台】(202病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:16.8%▼定期昇給のみ実施:72.8%▼ベースアップのみ実施:3.0%▼賃上げ未実施:7.4%
【200床台】(66病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:19.7%▼定期昇給のみ実施:75.8%▼ベースアップのみ実施:3.0%▼賃上げ未実施:1.5%
【300床台】(74病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:25.7%▼定期昇給のみ実施:70.3%▼ベースアップのみ実施:0.0%▼賃上げ未実施:4.1%
【400床台】(46病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:30.4%▼定期昇給のみ実施:58.7%▼ベースアップのみ実施:2.2%▼賃上げ未実施:8.7%
【500床以上】(70病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:27.1%▼定期昇給のみ実施:61.4%▼ベースアップのみ実施:2.9%▼賃上げ未実施:8.6%
また開設者別に見ると、次のような状況です。
【国立】(24病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:37.5%▼定期昇給のみ実施:50.0%▼ベースアップのみ実施:4.2%▼賃上げ未実施:8.3%
【自治体立】(88病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:27.7%▼定期昇給のみ実施:64.8%▼ベースアップのみ実施:1.1%▼賃上げ未実施:11.4%
【公的】(64病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:21.9%▼定期昇給のみ実施:76.6%▼ベースアップのみ実施:0.0%▼賃上げ未実施:1.6%
【医療法人】(322病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:20.5%▼定期昇給のみ実施:67.1%▼ベースアップのみ実施:3.7%▼賃上げ未実施:8.7%
【その他私的】(76病院)
▼定期昇給・ベースアップの双方実施:13.2%▼定期昇給のみ実施:81.6%▼ベースアップのみ実施:1.3%▼賃上げ未実施:3.9%
大規模病院・公立病院で「定期昇給、ベースアップが積極的に行われ」、小規模病院で「賃上げに消極的」な状況が伺えますが、全体の7.7%の病院で「賃上げ予定なし」、500床以上の大規模病院でも「賃上げ予定なし」が8.6%あることなどには驚きを禁じえません。
また、「平均賃上げ率」を見ると、常勤医師では1.8%(うち定期昇給分1.7%、ベースアップ分0.1%)、常勤看護師では2.0%(うち定期昇給分1.4%、ベースアップ分0.5%)、その他常勤職員では1.9%(うち定期昇給分1.5%、ベースアップ分0.4%)となっています。
全体でみると、1.9%(うち定期昇給分1.5%、ベースアップ分0.4%)の賃上げとなっています。
3病院団体では「病院職員の平均ベースアップ0.4%(金額にして1259円)は、全国労働組合総連合会(全労連)の全産業のベースアップ2.1%(金額にして6086円)を著しく下回っており、『病院職員への処遇改善が不十分』である」とコメントしています。
賃上げを含めた処遇改善に向け、3病院団体では、病院収益の主軸となる「診療報酬の引き上げ」を今後強く主張していくことになるでしょう(関連記事は こちら)。
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