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子宮頸がん予防に効果的なHPVワクチン、一般国民は「より詳しい安全性などに関する情報」提供を希望—厚労省

2023.8.17.(木)

子宮頸がん予防に効果のあるHPVワクチンについて、一般国民の多くは「安全性」などに関するより詳しい情報を欲しており、現場市町村でも「より効果的な情報提供」の必要性を感じている—。

厚生労働省が先頃公表した「HPVワクチンに関する調査」(理解度に関する調査、情報周知の実態に関する調査)結果から、こういった状況が明らかになりました(厚労省サイトはこちら)。

HPVワクチンの情報が十分でなく、ワクチン接種を躊躇するケースも

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんなど多くの疾病の原因であり、国は小学校6年から高等学校1年相当の女子を対象にHPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)の定期接種を行っています。

HPVワクチンについては、「接種後に、体の複数部分に慢性的な痛みが生じる」との報告があり、積極的な勧奨が控えられてきましたが、専門家の「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」との評価を受け、昨年(2022年)4月から、他の定期接種と同様の個別勧奨を再開しています。

そうした中で厚労省は、「接種対象者本人・保護者のHPVワクチンに関する理解の傾向」や、「自治体における情報周知の現状、および自治体担当者が抱えている問題意識」などを調査。その結果が公表されました。

まず「接種対象者本人・保護者の子宮頸がんやHPVワクチンに関する理解度」を見ると、次のような状況がわかりました(本年(2023年)1・2月調査)。

▽子宮頸がんという病気を知っているか?
→接種対象者本人(小学校6年から高等学校1年相当の女子、以下同)では69%、保護者では91%が「知っている」または「少し知っている」

▽子宮頸がんは「深刻な病気」だと思うか?
→接種対象者本人の76%、保護者の85%が「非常にそう思う」または「そう思う」

▽ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交渉経験のある女性であれば、誰でも一生に一度は感染する可能性がある?
→接種対象者本人の37%、保護者の46%が「非常にそう思う」または「そう思う」

子宮頸がんに対する認知度は高いものの、原因についての理解度はそれほど高くないことが伺えます。



また、子宮頸がん予防に効果のあるHPVワクチンの理解度は、次のような状況です。

▽HPVワクチンを知っているか(聞いたことがあるか)?
→接種対象者の28%、保護者の9%が「知らない(聞いたことがない)」と回答

▽HPVワクチンは重要であると思うか?
→対象者本人の49%、保護者の52%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答

▽HPVワクチンは安全であると思うか?
→接種対象者本人の22%、保護者の23%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答
→接種対象者本人の59%、保護者の55%は「どちらともいえない」と回答した

▽HPVワクチンは有効であると思うか?
→接種対象者本人の43%、保護者の49%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答
→対象者本人の50%、保護者の45%は「どちらともいえない」と回答した

HPVワクチンの理解度1(HPVワクチン理解度調査1 230728)



▽HPVワクチンのリスクについて十分な情報がなく、「接種する/させるかどうか」を決められないと感じるか?
→接種対象者本人・保護者のそれぞれ51%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答

▽ワクチン接種で以前報道されたような健康被害(慢性的な痛み)が起きるのではないかと思うか?
→接種対象者本人の38%、保護者の49%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答

HPVワクチンの理解度2(HPVワクチン理解度調査2 230728)



▽「HPVワクチンの接種方法・必要な手続き」「国(政府)がHPVワクチンの接種勧奨を再開したこと」を知っているか(聞いたことがあるか)?
→接種対象者本人の53%、保護者の23%が「知らない(聞いたことがない)」と回答

▽「国(政府)が、1997-2005年度生まれの女性に対し、HPVワクチンを公費(つまり無料)で接種できる機会を提供していること(キャッチアップ接種)」を知っているか(聞いたことがあるか)?
→対象者本人(高等学校2年相当から1997年度生まれの女性)の53%、保護者(小学校6年から高等学校3年相当女子の保護者)の26%が「知らない(聞いたことがない)」と回答

▽公費で接種できるHPVワクチンで、50-70%の子宮頸がんが予防できると思うか?
→接種対象者本人の33%、保護者の47%が「非常にそう思う」または「そう思う」と回答



一般国民(接種対象者、保護者)の多くが「HPVワクチンに関する情報が十分ではない」「HPVワクチンのリスクを恐れている」状況が伺えます。

また、HPVワクチンに関して、▼接種すると子宮頸がんにかかる可能性がある▼接種すると不妊や流産を起こす▼子宮頸がん検診を受けていれば接種する必要はない▼すでに性的接触を経験した人は接種しても意味がない—といった「誤った情報」について一般国民(接種対象者、保護者)の多くが「どちらとも言えない」(誤っていると十分に認識していない)と回答しています。

HPVワクチンの誤情報に関する理解度1(HPVワクチン理解度調査3 230728)

HPVワクチンの誤情報に関する理解度2(HPVワクチン理解度調査4 230728)



さらに、HPVワクチン接種を「受けたくない、させたくない」と考える理由としては、▼HPVワクチンは安全ではないと思うから(接種対象者本人28%、保護者47%)▼接種の決断を下すのに十分な情報を得られていないから(接種対象者本人24%、保護者43%)▼友人・友人の娘もHPVワクチンを接種していないから(接種対象者本人16%、保護者15%)—などが多くなっています。

HPVワクチンを接種したい(させたい)、したくない(させたくない)理由(HPVワクチン理解度調査5 230728)



国・自治体による「分かりやすく、丁寧な正しい情報」の周知が改めて求められていると言えるでしょう。



他方、自治体(市区町村)による「HPVワクチンの情報周知」については、次のような状況が明らかになりました。

▽接種対象者への個別案内:本年(2023年)1月末時点で90%以上の自治体が、年度当初計画していた送付対象者への送付を完了

▽厚労省作成のリーフレットのホームページ掲載、窓口配布:全体の半数程度の自治体で実施

また、自治体担当者は「HPVワクチン接種に対する住民の不安感払拭の必要性」「効果的な周知方法」「対象者の関心が低い」ことに問題意識を抱えており、国や都道府県、専門家などによる自治体支援が重要と言えそうです。



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