訪問看護において「看護師等が暴力・ハラスメントを受ける」ケースが散見され、防犯機器の購入費用などを補助—厚労省
2024.3.11.(月)
地域医療介護総合確保基金の補助メニューの中に「訪問看護を行う看護師等における利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策として、セキュリティ確保に必要な防犯機器の初度整備に係る経費」を追加する—。
厚生労働省は3月8日に通知「地域医療介護総合確保基金(医療分)に係る標準事業例の取扱いについて」を示し、こうした考えを明らかにしました。
地域医療介護総合確保基金の補助メニューに追加
地域医療構想の実現や医療・介護人材の確保のために「地域医療介護総合確保基金」が創設・運用されています。
現在、基金の対象事業(基金から補助を受けられる事業)は次のように定められ、詳細は2017年の通知「地域医療介護総合確保基金(医療分)に係る標準事業例及び標準単価の設定について」で規定されています。
【I-1】地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設または設備の整備に関する事業
【I-2】地域医療構想の達成に向けた病床の機能または病床数の変更に関する事業
【II】居宅等における医療の提供に関する事業
【III】介護施設等の整備に関する事業(地域密着型サービス等)
【IV】医療従事者の確保に関する事業
【V】介護従事者の確保に関する事業
【VI】勤務医の労働時間短縮に向けた体制の整備に関する事業
このうち【II】の「居宅等における医療の提供に関する事業」については、具体的に次のような事業が対象となることが明示されています。
▽在宅医療の実施に係る拠点の整備
▽在宅医療に係る医療連携体制の運営支援
▽在宅医療推進協議会の設置・運営
▽在宅医療の人材育成基盤を整備するための研修の実施
▽かかりつけ医育成のための研修やかかりつけ医を持つことに対する普及・啓発
▽訪問看護の促進、人材確保を図るための研修等の実施
▽認知症ケアパスや入退院時の連携パスの作成など認知症ケア等に関する医療介護連携体制の構築
▽認知症疾患医療センター診療所型における鑑別診断の実施
▽早期退院・地域定着支援のため精神科医療機関内の委員会への地域援助事業者の参画支援等
▽在宅歯科医療の実施に係る拠点・支援体制の整備
▽在宅歯科医療連携室と在宅医療連携拠点や地域包括支援センター等との連携の推進
▽在宅で療養する疾患を有する者に対する歯科保健医療を実施するための研修の実施
▽在宅歯科医療を実施するための設備整備
▽在宅歯科患者搬送車の設備整備
▽在宅歯科医療を実施するための人材の確保支援
▽訪問薬剤管理指導を行おうとする薬局への研修や実施してい る薬局の周知
▽在宅医療における衛生材料等の円滑供給の体制整備
▽終末期医療に必要な医療用麻薬の円滑供給の支援
今般の通知では、この中の「訪問看護の促進、人材確保を図るための研修等の実施」事業について、次のようなメニュー「追加」を行っています。
(これまで)
▽訪問看護の促進、人材確保を図るための研修等の実施
→訪問看護の安定的な提供体制を整備するための機能強化型訪問看護ステーションの設置支援など、訪問看護の人材育成および人材確保を推進するための退院調整研修や人事交流派遣支援など、訪問看護の認知度を高め、訪問看護の役割を地域に浸透させるための講演会等を実施する。上記の研修等の実施に必要な経費に対する支援を行う。
(追加メニュー)
▼訪問看護を行う看護師等における利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策として、セキュリティ確保に必要な防犯機器の初度整備に係る経費
→防犯機器とは、例えば、位置検索機能・緊急呼び出し機能付き防犯ブザーや防犯ボタン付き携帯電話など
→防犯機器の導入に係る初度整備費用以外の、防犯機器の運用に係るランニングコスト等に係る経費は補助対象外とする
密室となる訪問看護において「看護師を守る」ことが重視されており、この補助メニューを活用した「防犯対策」に積極的に取り組み、安心・安全な訪問看護提供体制を構築することに期待が集まります。
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