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GemMed塾 看護モニタリング

公的データベースの仮名化情報利活用、「厳格な審査・監視下で行われ不適切利用がなされない」旨を国民へ説明を—医療等情報2次利用WG

2024.3.21.(木)

医療・介護等の公的データベース(NDBや介護DBなど)の情報を、より生データに近い形で「本人特定を不可能」とし(仮名化)、それらを連結解析することで、「新たな治療法の開発」や「効果的な疾病対策」につなげられると期待される—。

こうし医療・介護等情報の「2次利用」にあたっては、一つ一つ同意を得ることはしないが、その大前提として「情報管理の監視体制充実」「情報利活用にあたっての厳格な審査」「成果物の審査」などが行われるものであり、不適切利用がなされないことを患者・国民に十分に理解してもらうことが必要である—。

3月18日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ」(以下、2次利用ワーキング)で、こうした議論が行われました。次回会合での意見とりまとめを目指します。

「仮名加工情報」を提供するための法制度整備、情報連携・共有の基盤をワーキングで議論

政府の医療DX推進本部が昨年(2023年)6月2日に「医療DXの推進に関する工程表」を取りまとめ、例えば▼全国の医療機関で電子カルテ情報を共有可能とする仕組みを構築し、2024年度から順次稼働していく▼標準型電子カルテについて、2030年には概ねすべて医療機関での導入を目指す—などの具体的なスケジュールを示しています。

その際、「医療機関間で患者情報を共有し、過去の診療情報を現在の患者の診療に活かす」という1次利用に加え、「データを集積・解析し、新たな治療法の開発や医療政策などに活かす」という2次利用も念頭に置かれています。

2次利用ワーキングでは、▼NDBや介護DBなどの「公的データベース」のデータを第三者(研究者等)に提供するにあたり、より利活用しやすい「仮名化情報」での提供を可能とするための制度整備・法整備を行ってはどうか▼公的データベースの2次利用等を行うにあたっての共通した「情報連携基盤」を構築してはどうか—といった議論を続けています(関連記事はこちらこちらこちら)。



2月15日の前回会合で「医療等情報の2次利用に向けた基本的考え方」や「今後の法整備や個人情報保護などに関する論点」を整理(関連記事はこちら)。さらに3月19日の会合では、法整備・情報基盤構築に向けた方向性について議論しました。

厚生労働省大臣官房の西川宜宏企画官(医政局特定医薬品開発支援・医療情報担当参事官室、医政局、健康・生活衛生局感染症対策部併任)は、これまでのワーキング議論等を踏まえて次のような方向性案を提示しました。

【医療等情報の2次利用に向けた制度・法整備を行うにあたっての方向性】
▽公的データベース(以下、公的DB)の仮名化情報の利用・提供は、「相当の公益性がある場合」に可能とし、医療分野の研究開発などについては幅広く公益性を認めるべき
→研究の目的・内容に応じて「仮名化情報利用の必要性とリスクに関する審査」を行い、利用を認める
→公益性の範囲について、医学研究やテクノロジー発展といった状況変化に応じて引き続き議論を継続する

▽個人情報保護法の規定との関係性を整理した上で「本人同意を改めて取ることを前提とせずに仮名化情報の提供を行う」方向で検討を進める(多くの公的DBで本人同意取得を行っていないこと、公的DBの悉皆性を考慮)
→個人や医療現場の十分な理解を得ることが大前提であり、利用の目的・成果やユースケースを丁寧に周知することで国民の理解を深める
→個人の権利利益を保護するための適切な保護措置を設ける

▽現在の安全管理措置等に加え、国民の視点を含めた様々な専門家で構成され、質の担保された「審査」を行う体制を整備し、Visiting解析環境での利用を基本とする
→監視・監督を担う機関について、個人情報保護委員会との関係性等を整理する

▽医療現場や患者・国民の理解を促進するため、医療等情報利活用の目的・メリット、成果等について、様々な情報発信等を行う

▽「仮名化情報の連結」により、精緻かつ幅広い情報解析が可能となるなどのメリットが期待されるが、個人特定のリスクも懸念され、提供するデータの内容や提供方法を適切に審査する

▽業界での公正かつ適切な利用を進めるためにガイドライン作成や関係者間での議論の場を構築するとともに、国のガバナンス体制もしっかり構築する



【医療等情報の2次利用のための情報連携基盤を構築するにあたっての方向性】
▽利活用者(研究者等)が円滑に医療等情報を利用できるよう、「公的DB等にリモートアクセスし、一元的かつ安全に利用・解析できるVisiting環境(クラウド)の情報連携基盤」を構築する

▽公的DB「以外」を情報連携基盤上で取り扱えるようにするかどうかについては、「保有主体」「データの量・質」「適切な組織的、物理的、技術的、人的安全管理措置」「連結に用いる識別子」などの観点に関して、ユーザーニーズを踏まえて検討する

▽「仮名化情報についてはVisiting解析環境での利用」を基本とし、利活用者の利便性も考慮して解析環境等の整備を行う
→仮名化情報自体を受け渡し可能とするかどうかについて、必要性や要件を引き続き検討する

▽医療等情報の2次利用に関する審査は、「利用目的の公益性や安全管理措置等を客観的に判断し、適切かつ円滑に行われる」必要があり、次のような仕組みとする
・公的DBの利用申請の受付窓口・審査体制を一元化し、審査手順・内容の統一化が望ましい
・審査体制については、審査の質や中立性が十分に担保されるものとし、各公的DBの特性を十分に理解している専門家の意見も取り入れられる仕組みとする
・審査体制は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」で規定されている倫理審査委員会の要件を満たすものとし、同指針に基づき倫理的・科学的観点から、研究機関・研究者等の利益相反に関する情報も含めて審査する(各研究機関等における倫理審査委員会の審査は必ずしも求めない)
・利活用者が情報連携基盤上に持ち込む解析ソフトウェアや利活用者が公表する分析の成果物についても、そのリスクや必要性に応じて審査を行う
・今後、各公的DBの仮名化情報の利活用に関する審査基準を含むガイドラインを策定する

▽情報セキュリティについては、情報連携基盤の「管理者側」において厳格な安全管理措置を設け、利活用者に対しては、利便性も考慮して、必要十分な安全管理措置を設けることとし、利活用者が遵守すべき要件等を分かりやすく周知する
→具体的な安全管理措置については「利活用者の認証」「ログの保存・監視・活用」「情報の暗号化」などを念頭に引き続き検討する

▽利用できるデータを一覧的に可視化するなど分かりやすく情報発信を行う
→オープンソースデータを簡易に集計・分析するためのダッシュボード機能を設ける



【電子カルテ情報とも組み合わせた医療等情報2次利用の方向性】
▽電子カルテ情報共有サービスで共有される臨床情報について「2利用を可能とする」方向で検討する
→利用目的に応じて、他のデータベースとの「連結解析を可能とする」方向で検討する

電子カルテに含まれる臨床情報などを各種情報と組み合わせることで研究がさらに充実すると考えられる1(医療等情報2次利用ワーキング1 240318)

電子カルテに含まれる臨床情報などを各種情報と組み合わせることで研究がさらに充実すると考えられる2(医療等情報2次利用ワーキング2 240318)



【その他】
▽医療等情報の二次利用を推進するに当たっては、データの標準化・信頼性確保のための取り組みを進めることが不可欠。

▽マスタ整備を行うとともに、傷病名や医薬品等、各種のコードの標準化・普及を行い、一次利用の段階から二次利用においても有用となる医療等情報の標準化を進める
→マスタ整備等の標準化の取り組みを一元的に進めるための組織体制の構築も検討する
→利用目的に応じたデータクレンジングも重要であり、MID-NETの取り組みも踏まえつつ、その具体的な実施方法等を引き続き検討する

▽医療等情報の利活用に係る環境の整備については、EUにおけるEHDS法案や、改正次世代医療基盤法の施行状況等も踏まえて引き続き検討する



このうち「本人の同意を改めてとらずに2次利用を可能とする」との方向案については、多くの構成員が「個人情報の保護を緩めるものではなく、逆に『監視体制の充実』『審査の充実』『成果物の公表』など、情報保護を厳格化したうえで実施するものである旨を強調すべき」と指摘しています。例えば「患者・国民の権利侵害を防ぐためには、最終成果物(論文など)の審査を厳格に行うことが最も重要である。極論すれば、そこさえしっかりしていれば、幅広い利活用をみとめてよいともいえる」(山本隆一構成員:医療情報システム開発センター理事長)との意見も出ており、こうした点が患者・国民全体にしっかり理解されるとともに、「我々の情報がしっかり管理され、不適切な利用はされない」と国民からの信頼を得ることが非常に重要でしょう。

この点に関連して、中島直樹構成員(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター教授)は「データの2次利用が『あなた自身の治療にも役立つ』となれ、同意取得の在り方なども変わってくるのではないか。自身の治療に役立つとは、それ自体が同意のインセンティブになる」と、井元清哉構成員(東京大学医科学研究所副所長)も「地域医療連携ネットワークが多く稼働しているが、患者サイドは『自分の情報がどこにあるのか』を理解できておらず、好ましい状況ではない。患者が自ら積極的に『自分の情報を活用してほしい』と同意するような、安全・安心な環境整備、広い意味でのインセンティブを考えていく必要がある」とコメントしています。今後の情報利活用において非常に重要な視点と言えます。
また松田晋哉構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)もこの点に関連して「自分が望まないときには情報を削除してもらえる」ような仕組みの検討も要請しています。



こうした意見も踏まえて、さらに「方向性案」をブラッシュアップし、次回会合での意見とりまとめを目指します。意見とりまとめ後のスケジュールなどは明確になっていませんが、「下部組織である技術検討班で、技術的な事項を整理する」、「意見とりまとめ、技術的詰めを踏まえて、制度整備(必要な場合には法律改正も含めて)や情報連携基盤の構築を進める」ことになります。



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