大細胞型B細胞リンパ腫等治療に用いるエプキンリ皮下注、サイトカイン放出症候群による死亡例報告もある点に留意を―PMDA
2024.4.2.(火)
大細胞型B細胞リンパ腫等の治療に用いる「エプキンリ皮下注4mg、同皮下注48mg」(一般名:エプコリタマブ(遺伝子組換え))について、添付文書でも「重度のサイトカイン放出症候群が現れることがある」と警告されているが、使用症例の約4分の1でサイトカイン放出症候群が報告され、中には約死亡事例も報告されているため改めて注意喚起を行う—。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は3月29日に、製薬メーカーからの適正使用等に関する情報提供として「エプキンリ皮下注4mg、同皮下注48mgの適正使用のお願い―サイトカイン放出症候群について」を公表し、こうした点への注意喚起を行いました(PMDAのサイトはこちら)。
本剤使用症例の約4分の1でサイトカイン放出症候群が報告、一部に重症例・死亡例も
「エプキンリ皮下注」(一般名:エプコリタマブ(遺伝子組換え))は▼再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(大細胞型B細胞リンパ腫)▼再発・難治性の濾胞性リンパ腫—の治療に用います。
添付文書の警告欄では、「重度のサイトカイン放出症候群があらわれることがあり、死亡に至る例が報告されている。特に治療初期は入院管理等の適切な体制下で本剤の投与を行う。またサイトカイン放出症候群に対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うとともに、観察を十分に行い、異常が認められた場合には製造販売業者が提供するサイトカイン放出症候群管理ガイダンス等に従い、適切な処置を行う」旨が記載されています。
製造販売会社(ジェンマブ社・アッヴィ社)によれば、昨年(2023年)11月22日の上市から、本年(2024年)3月25日までの約4か月間で、本邦における推定使用患者数「449例」のうち、約4分の1にあたる「118例」でサイトカイン放出症候群が報告され、うち「8例」はGrade 3の重症症例、さらに「2例」は転帰死亡であることが分かりました。
事態を重くみた両社は今般、医療現場に対し改めて「エプキンリ皮下注によるサイトカイン放出症候群について注意してほしい」と呼び掛けています。
なお、死亡2例の概要は次にように報告されています。
【70歳代、女性】
▽患者の状態に鑑みて投与量を過少にしている(通常「1サイクル目は1日目に1回0.16mg、8日目に1回0.8mg、15日目・22日目に1回48mgを皮下投与する」が、本症例では初回0.16mg、2回目0.8mg、3回目4mg)
▽併用薬:▼胃潰瘍等の治療に用いる「ボノプラザンフマル酸塩」▼高コレステロール血症治療に用いる「ロスバスタチンカルシウム」▼角膜炎治療に用いる「アシクロビル」▼精神安定剤の「エチゾラム」▼入眠剤の「ゾルピデム酒石酸塩」▼解熱鎮痛剤の「アセトアミノフェン」▼アレルギー性鼻炎等治療薬の「ビラスチン」▼2型糖尿病治療薬の「インスリン グラルギン」—
▽1回目投与後、2回目投与後にサイトカイン放出症候群が認められたが、トシリズマブ投与で回復
▽3回目投与は本剤を減量したが、臨床検査で「RBC:347×104/µl、WBC:500/µl、Plt:1.9×104/µl、CK増加(2849U/L)、フェリチン増加(2120ng/ml)、腎機能障害(CRE:0.9mg/dl、eGFR:46.6mL/min/1.73平米)」が認められ、血球貪食症候群(HPS)やそこから骨髄壊死のような可能性も報告医は検討したが、酸素化・呼吸数の低下から突然心肺停止となり、患者は死亡
【70歳代、男性】
▽投与量は通常通り(初回0.16mg、2回目0.8mg)
▽併用薬:▼角膜炎治療に用いる「アシクロビル」▼抗菌剤の「スルファメトキサゾール・トリメトプリム」▼乾癬等治療に用いる「チガソン」—その他
▽前治療としてプレドニゾロンを投与。その過程で腫瘍崩壊症候群(TLS)による急性腎不全が認められたが、透析により回復。その後、本剤治療を開始したところ、「皮下血種」「胸水増加」が認められた。またサイトカイン放出症候群が疑われ、トシリズマブ・デキサメタゾンを投与し、一時改善が認められたが悪化し、患者は死亡
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