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有効性・安全性に関する臨床研究を経ない「保険外での子供へのrTMS療法」実施は非倫理的で危険—児童青年精神医学会

2024.4.16.(火)

有効性・安全性に関する臨床研究を経ずに、保険外で子供に対しrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)療法を実施することは、非倫理的で危険である—。

日本児童青年精神医学会が4月2日、「子どもに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法に関する声明」を示し、こうした点への留意を求めました(学会サイトはこちら)。

rTMS療法、保険外で「発達障害治療」として18歳未満の子供に実施されるケースあり

反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation: rTMS)療法は、2017年9月に「薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者に対する治療法」として薬事承認され、保険適用もなされています(I000-2【経頭蓋磁気刺激療法】2000点)。

変動磁場を用いて脳皮質に渦電流を誘導し、ニューロン(神経細胞)を刺激することにより、低侵襲的に大脳皮質や皮質下の活動を修飾でき、「薬物治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者」への治療効果が認められていますが、日本精神神経学会の「反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針(2023年9月改訂版)」では「18歳未満の若年者にはrTMS療法を施行すべきではない」とされています。

しかし、I000-2【経頭蓋磁気刺激療法】の施設基準を満たさない医療機関において、「発達障害に有効」であるとして、「保険外」で反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が実施されています。

この点、同学会では、神経発達症(発達障害)や精神疾患がある18歳未満の子どもに対するrTMS療法の有効性について、海外の臨床試験結果を検索したところ、「現時点では、子供に対するrTMSの有効性・安全性の証左は不十分である」と結論づけ、「保険外診療で、子供の神経発達症や精神疾患に対するrTMS療法を実施することは適切ではない」(有効性・安全性に関する臨床研究を経ずに、保険外診療として子供に実施することは非倫理的であるとともに危険性を伴う)との見解を公式に発表。次のような点への留意を医療現場に求めました。

(1)本邦では、rTMS療法の対象は「既存の抗うつ薬による十分な薬物療法によっても期待される治療効果が認められない中等症以上の成人(18歳以上)のうつ病」に限定される

(2)これまでに報告された研究では、「18歳未満の子供」を対象とした神経発達症や精神疾患に対するrTMS療法の有効性を示す証左は不十分である

(3)rTMS療法は決して副作用のない治療法ではなく、特に発達期にある子供への治療に関する安全性は検証されていない
→頭皮痛・刺激痛、顔面の不快感、頸部痛・肩こり、頭痛のほか、重篤な副作用としてまれにけいれん発作が発現することもある

(4)18歳未満の子供に対するrTMS療法の有効性と安全性は、「十分な症例数を有する、適切にデザインされ、かつ、適切に診断、有効性と安全性の評価、有害事象への対応が可能な研究・医療機関で実施されたランダム化比較試験等の信頼性の高い介入試験」によって評価し確立する必要がある
→将来的にrTMS療法が子どもの神経発達症や精神疾患に対して有効である可能性を否定しているのではない

(参考)I000-2【経頭蓋磁気刺激療法】の施設基準
▽精神科を標榜している病院
▽うつ病治療に関し、専門の知識、および少なくとも5年以上の経験を有し、本治療に関する所定の研修を修了している常勤精神科医が1名以上勤務
▽認知療法・認知行動療法に関する研修を修了した専任の認知療法・認知行動療法に習熟した医師が1名以上勤務
▽次のいずれかの施設基準を届け出ている
・A230-4【精神科リエゾンチーム加算】
・A238-6【精神科救急搬送患者地域連携紹介加算】
・A238-7【精神科救急搬送患者地域連携受入加算】
・A249【精神科急性期医師配置加算】
・A311【精神科救急入院料】
・A311-2【精神科急性期治療病棟入院料】
・A311-3【精神科救急・合併症入院料】



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