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画期的がん治療薬「ブレヤンジ静注」、「グレード1、2、3Aの再発・難治性の濾胞性リンパ腫」にも効能・効果拡大しGLも改訂―厚労省

2024.8.19.(月)

画期的ながん治療薬「ブレヤンジ静注」(成分名:リソカブタゲン マラルユーセル)について、「グレード1、2、3Aの再発・難治性の濾胞性リンパ腫」にも効能・効果が拡大されたことを踏まえ、最適使用推進ガイドラインも改訂する—。

厚生労働省は8月16日に「ブレヤンジ静注」の最適使用推進ガイドラインを改訂し、こうした点への留意を医療現場に求めました(医薬品医療機器総合機構(PMDA)サイトはこちら)。

効能効果の拡大踏まえ、最適使用推進ガイドラインも改訂

「ブレヤンジ静注」(一般名:リソカブタゲンマラルユーセル)は、▼再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫)▼再発・難治性の濾胞性リンパ腫—の治療に用いる医薬品です(ただし、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る)。

従前、再発・難治性の濾胞性リンパ腫については「グレード3B」に対する使用が認められていましたが、今般「グレード1、2、3A」に対する使用も認められることとなり、これに合わせて最適使用推進ガイドラインの改訂も行われました。がん患者にとって、がんと闘う武器がまた1つ増えたこととなり、朗報と言えるでしょう。



最適使用推進ガイドラインは、「画期的ながら極めて高額な医薬品」が乱用された場合に、医療保険財政が逼迫してしまうことを避けるために、使用可能な医療機関の要件・対象可能患者の要件などを定めるものです。改訂内容も含めて、改めて「ブレヤンジ静注」の最適使用推進ガイドラインを眺めてみましょう。

まず、▼製造にあたって白血球のアフェレーシス(分離)が必要である▼投与に際して重篤な有害事象が認められる可能性が高い(サイトカイン放出など)―ことなどから、例えば次のような厳格な要件を満たした施設でのみ本剤使用が許されます【施設要件】

▽以下のすべてを満たす
▼日本造血・免疫細胞療法学会が定める移植施設認定基準の全ての項目を満たす診療科(認定カテゴリー1)または認定カテゴリー1に準ずる診療科(認定基準のうち、移植コーディネーターの配置に係る基準以外を満たす診療科)を有する
▼有害事象に対する全身管理が可能なICU等を有している(A301特定集中治療室管理料の1から6のいずれかを届け出ている、関連記事はこちら)。
▼アフェレーシス機器の使用に熟知した医療スタッフ(医師、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士)が配置され、アフェレーシス中には少なくとも1名の医療スタッフ(医師、看護師、臨床検査技師、臨床工学技士)による常時監視体制および医師への連絡体制が整っている
▼本品の有効性・安全性に関する情報を収集するため、関連学会との連携の下で運営される本品の「患者登録システム(レジストリ)」に患者登録を行い、製造販売後調査を適切に実施することが可能である

▽大細胞型B細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫の診断、治療、不具合・副作用発現時の対応に十分な知識と経験を有し、製造販売業者が実施する講習を修了した医師が、治療の責任者を含めて複数名配置されている
→具体的には、次のすべてに該当する医師を治療の責任者として配置し、あわせて(1)に該当する医師を1名以上配置する
(1)医師免許取得後、6年以上の臨床経験を有し、うち3年以上は血液悪性腫瘍の研修を行っている
(2)造血細胞移植に関する研修による診療実績が通算1年以上あり、必要な経験と学識技術を習得している
(3)同種造血細胞移植の診療実績が5例以上ある

▽再生医療等製品に関する情報管理に従事する担当者が配置され、製造販売業者からの情報窓口、有効性・安全性等に関する情報の管理、医師等に対する情報提供、不具合・副作用が発生した場合の報告に係る業務等が速やかに行われる体制が整っている

▽重篤な不具合・副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、当該施設または連携施設において、発現した副作用に応じて入院管理・必要な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整っている(特に、CRS(サイトカイン放出症候群)の緊急時に備えて、トシリズマブ(遺伝子組換え)(販売名:アクテムラ皮下注、同点滴静注)の在庫が本品投与前に確保されている)

▽大細胞型B細胞リンパ腫・濾胞性リンパ腫の診療に携わる専門的な知識・技能を有する医療従事者が不具合・副作用のモニタリングを含め主治医と情報を共有できるチーム医療体制が整備されており、その体制について患者とその家族に十分に周知されている

▽不具合・副作用に対して、当該施設・連携施設の専門性を有する医師と連携(副作用の診断や対応に関して指導及び支援を受けられる条件にあること)し、直ちに適切な処置ができる体制が整っている



投与対象となる患者については、次のような要件が定められています。

【有効性に関する事項】
▽下記の患者で本品の有効性が確認されている(組織型はWHO分類改訂第四版に基づく)
▼以下の再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
・DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)
・PMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)
・tiNHL(形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫)
・HGBCL(高悪性度B細胞リンパ腫)
▼再発または難治性の濾胞性リンパ腫(グレードによる限定を解除する改訂が行われた)

→ただし、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る

▽「再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫」「再発または難治性の濾胞性リンパ腫(Grade 3B)」について、下記に該当する患者は本品の投与対象とはならない
▼1次治療によりCRを達成したのち12か月を超えてから再発し、2次治療として自家HSCTの適応となる患者
▼リツキシマブ(遺伝子組換え)(販売名:リツキサンほか)およびアントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤(販売名:ドキシルなど)を含む化学療法歴のない患者
▼中枢神経系原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(PCNSL)
▼慢性リンパ性白血病のリヒター形質転換の既往歴のある患者
▼他の悪性腫瘍(ただし、以下の非浸潤性悪性疾患を除く)の既往歴があり、少なくとも2年間寛解が維持されていない患者
・悪性黒色腫以外の皮膚悪性腫瘍、子宮頚部上皮内がん、乳房上皮内がん、前立腺がんの組織学的偶発病変または治癒可能な前立腺がんまたは完全に切除された低再発リスクのステージ1の固形がん

▽「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1、2、3A)」について、下記に該当する患者は本品の投与対象とはならない
▼抗CD20抗体を含む多剤併用療法歴のない患者
▼同種HSCTを受けてから90日以内の患者
▼他の悪性腫瘍(ただし、以下の非浸潤性悪性疾患を除く)の既往歴があり、少なくとも2年間寛解が維持されていない患者
・悪性黒色腫以外の皮膚悪性腫瘍、子宮頚部上皮内がん、乳房上皮内がん、前立腺がんの組織学的偶発病変または治癒可能な前立腺がんまたは完全に切除された低再発リスクのステージ1の固形がん
▼2次治療として使用する場合は、POD24(定義:抗CD20抗体およびアルキル化剤の投与開始から24か月以内に認められた病勢進行)または改変GELF基準(以下a-d)の1つ以上に該当)のいずれにも該当しない患者
a)濾胞性リンパ腫に起因する症状(B症状に限定されない)
b)切迫した臓器機能障害、リンパ腫に起因する血球減少またはbulky病変(7cmを超える腫瘤が1つ、または3cmを超える腫瘤が3つ以上)
c)脾腫
d)6か月以上にわたる持続的な増悪

【安全性に関する事項】
▽下記に該当する場合は本品の投与が禁忌・禁止とされている
▼一度解凍した本品を再凍結した場合
▼患者に本品の成分に対する過敏症の既往歴がある場合
▼現在料として用いた非動員末梢血単核球が、患者本人以外のものである場合

▽下記に該当する患者に対する本品の投与については、本品の安全性が確立されておらず、本品の投与対象とならない
▼ECOG Performance Statusが3-4の患者(ECOG Performance Statusが2の患者については、その他の臨床状態等を考慮し、投与の可否を判断する)

ECOG Performance Status



他方、上述のように有害事象発生の可能性もあるため、投与に当たっては次のような点に留意が必要です。

▽添付文書に加え、製造販売業者が提供する資材、市販後の最新報告等に基づき本品の特性、適正使用のために必要な情報を十分に理解してから使用する

▽治療開始に先立ち、患者・家族に有効性・危険性を十分に説明し、同意を得てから投与する

▽主な副作用のマネジメント
ショック、アナフィラキシーを含むinfusion reactionが現れることがあるので、患者の状態を十分に観察するとともに、異常が認められた場合には、適切な処置を行う。infusion reactionリスクを抑えるため、本品投与の約30-60分前にアセトアミノフェンおよびジフェンヒドラミンまたはその他のヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与する。生命を脅かす緊急時を除き、副腎皮質ステロイド剤は使用しない。アナフィラキシー等の投与に伴う重度の事象が発現した場合に備え、救急措置の準備をしておく

CRSが現れることがあるので、本品投与にあたっては血液検査を行うなど、発熱、低血圧、頻脈、悪寒、低酸素症、血球貪食性リンパ組織球症等の臨床症状について観察を十分に行う。異常が認められた場合には、米国移植細胞治療学会(ASTCT)のCRSグレード等に基づいて、最新の治療指針を参考に対処する。CRSに関連して血球貪食性リンパ組織球症が報告されている(ASTCT)のCRSグレードに基づく旨が追記された)

神経系事象(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS))が現れることがあるので、本品投与にあたっては脳症、失語症、振戦、譫妄、浮動性めまい、頭痛等の臨床症状について観察を十分に行う。異常が認められた場合には、ASTCTのICANSグレード等に基づいて、最新の治療指針を参考に対処する(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)に言及)

感染症が現れることがあるので、本品投与にあたっては臨床症状等を確認し、観察を十分に行う。細菌、真菌およびウイルス等による日和見感染を含む重度の感染症(敗血症、肺炎等)が現れることがあり、死亡に至る例が報告されている。発熱性好中球減少症が現れることがある。進行性多巣性白質脳症(PML)が報告されていることから、神経症状が現れた場合は鑑別のための適切な検査(脳脊髄液検査やMRIによる画像診断等)を行う。本品投与前に臨床的に重要な活動性感染症が認められた場合は、回復するまで本品の投与を延期する

B型肝炎またはC型肝炎ウイルスキャリアの患者または既往感染者において、肝炎ウイルスが再活性化される可能性がある。HIV感染者においてはウイルスが増加する可能性がある。白血球アフェレーシスを実施する前に、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびHIV感染の有無を確認する。肝炎ウイルスキャリアの患者または既往感染者に本品を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行う等、B型肝炎ウイルスの再活性化やC型肝炎の悪化の徴候や症状の発現に注意する

▼本品投与後数週間以上にわたり血小板減少、好中球減少、貧血等の骨髄抑制が現れることがあるので、本品投与にあたっては定期的に血液検査を行い、患者の状態を十分に観察する

低γグロブリン血症が現れることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には適切な処置(免疫グロブリン補充療法を定期的に行う等)を行うとともに、感染症の徴候等に対する観察を十分に行う

腫瘍崩壊症候群が現れることがあるので、本品投与にあたっては、血清中電解質濃度の測定および腎機能検査を行うなど、観察を十分に行う

精神状態変化や痙攣発作等の神経系事象が現れることがあるので、本品投与後の患者には自動車運転や危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する



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