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新たな血液がん治療薬「ブレヤンジ静注」を保険適用、キムリア・イエスカルタと同じく患者1人当たり3264万円の薬価設定―中医協総会(1)

2021.5.12.(水)

血液がんの新たな治療薬「ブレヤンジ静注」(成分名:リソカブタゲン マラルユーセル)を5月19日に保険適用し、薬価はキムリア点滴静注およびイエスカルタ点滴静注と同じく「1患者当たり3264万7761円」とする―。

また、本剤は非常に奏効率の高い画期的な医薬品(再生医療等製品)であるものの、製造にあたって高い技術が求められ、有害事象発生の可能性もあることから、「一定の要件を満たす施設のみで、安全性・有効性が確認された患者に対してのみ使用可能とする」ことなどを規定した最適使用推進ガイドラインに沿った使用を求めることとする―。

5月12日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった点が承認されました。なお、中医協総会では、このほかに▼新たな臨床検査▼新薬▼新医療機器—の保険適用や「2021年度の入院医療に関する調査内容」などについても議題としており、これらは別稿で報じます。

サイトカイン放出症候群(CRS)などの有害事象に対応できる施設でのみ投与可能

本剤は、▼再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫)▼再発・難治性の濾胞性リンパ腫—の患者に対するCAR-T細胞療法に用いる医薬品(患者自身の細胞を増殖した再生医療等製品)です。

CAR-T細胞療法は、キムリアやイエスカルタと同様に、「血液がん患者自身のT細胞(リンパ球の一種)を採取し、遺伝子組み換えを行った上で増殖させる」→「患者に体内に戻し、T細胞によりがん細胞を死滅させる」という治療方法です。血液がんに対する画期的な医薬品の相次ぐ登場は、患者にとって何よりの朗報と言えるでしょう。



キムリア点滴静注の類似薬として、患者1人当たり「3264万7761円」の超高額な薬価が設定されています(キムリアについて費用対効果評価による価格調整が行われるため、その調整後の価格と同額に設定された)。

このように医療保険財政への影響が大きなことから、「最適使用推進ガイドライン」が策定され、これに沿った使用が求められます((中医協資料はこちら(GL案))。

まず、キムリアやイエスカルタと同様に、▼製造にあたって白血球のアフェレーシス(分離)が必要である▼投与に際して重篤な有害事象が認められる可能性が高い(サイトカイン放出など)―ことなどから、例えば次のような厳格な要件を満たした施設でのみ本剤(使用が許されます。

▽日本造血・免疫細胞療法学会が定める「移植施設認定基準」の全項目を満たす診療科などを持ち、A301【特定集中治療室管理料】の「1 特定集中治療室管理料1」から「4 特定集中治療室管理料4」のいずれかを届け出ていること

▽アフェレーシス機器使用を熟知した医療スタッフ(医師、看護師、臨床検査技師または臨床工学技士)が配置され、アフェレーシス中は少なくとも1名の医療スタッフ(医師、看護師、臨床検査技師または臨床工学技士)による常時監視体制・医師への連絡体制が整っていること

▽▼医師免許取得後6年以上の臨床経験を有し、うち3年以上は血液悪性腫瘍の研修を行っている▼造血細胞移植に関する内科研修による診療実績が通算1年以上で、必要な経験と学識技術を習得している▼同種造血細胞移植の診療実績が5例以上—をすべて満たし、本剤の使用に当たっての講習を修了した医師を複数配置していること

▽重篤な不具合・副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、自施設または連携施設において、発現した副作用に応じて入院管理・必要な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整っていること。特に、サイトカイン放出症候群(CRS)の緊急時に備え「トシリズマブ(遺伝子組換え)」(販売名:アクテムラ皮下注、同点滴静注)を速やかに使用できるように準備しておくこと



投与対象となる患者は、「再発または難治性の▼DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)▼PMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫)▼tiNHL(形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫)▼HGBCL(高悪性度B細胞リンパ腫)—」、あるいは「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」(Grade3Bで、2ライン以上の化学療法完全奏功なし、あるいは治療後再発に限る)のうち、次の要件を満たす患者に限定されます。

▽CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法(CAR-T療法)の治療歴がなく、「自家造血幹細胞移植の適応がない」または「自家造血幹細胞移植後に再発した」患者で、以下のいずれかを満たす患者

▼tiNHL以外の大細胞型B細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫の患者では、初発では「2ライン以上の化学療法歴」、再発では「再発後に1ライン以上の化学療法歴」があり、化学療法により完全奏効が得られなかった、または治療後に再発したこと

▼濾胞性リンパ腫が形質転換したtiNHLの場合には、形質転換後の1回以上を含む、通算2ライン以上の化学療法歴があり、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった、または化学療法後に再発したこと

▼濾胞性リンパ腫以外の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫が形質転換したtiNHLの場合には、形質転換後に2ライン以上の化学療法歴があり、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった、または化学療法後に再発したこと



次の患者では有効性が確認されておらず、本剤の投与対象とはなりません。
▽「リツキシマブ(遺伝子組換え)」(販売名:リツキサンほか)および「アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤」(販売名:ドキシルなど)を含む化学療法歴のない患者

▽中枢神経系原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(PCNSL)

▽慢性リンパ性白血病のリヒター形質転換の既往歴のある患者

▽他の悪性腫瘍(ただし、▼悪性黒色腫以外の皮膚悪性腫瘍▼子宮頚部上皮内がん▼乳房上皮内がん▼前立腺がんの組織学的偶発病変または治癒可能な前立腺がんまたは完全に切除された低再発リスクのステージ1の固形がん―という非浸潤性悪性疾患を除く)の既往歴があり、少なくとも2年間寛解が維持されていない患者



さらに、次の場合は「本剤の投与が禁忌・禁止」とされており、投与を行うことが認められません。
▼一度解凍した本品を再凍結した場合
▼本品の成分に対する過敏症の既往歴がある場合
▼原材料として用いた非動員末梢血単核球が、患者本人以外のものである場合

あわせて、次の患者では、本剤の安全性が確立されていないために投与対象となりません
▼ECOG Performance Statusが「3-4」の患者(Status2の患者では、その他の臨床状態などを考慮して、投与の可否を判断する)

ECOG Performance Status



他方、上述のように有害事象発生の可能性もあるため、投与に当たっては次のような点に留意が必要です。

ショック、アナフィラキシーを含むinfusion reactionが現れることがある。infusion reactionリスク軽減のため、投与の約30-60分前に▼アセトアミノフェン▼ジフェンヒドラミン▼その他のヒスタミンH1受容体拮抗薬—を投与する。生命を脅かす緊急時を除き、副腎皮質ステロイド剤は使用しない。アナフィラキシー等の投与に伴う重度の事象が発現した場合に備え、救急措置の準備をしておく

サイトカイン放出症候群(CRS)が現れることがあるので、投与にあたっては血液検査を行うほか、徴候・症状(発熱、低血圧、頻脈、低酸素症、血球貪食性リンパ組織球症等)の観察を十分に行う。異常が認められた場合は、最新のCRS管理アルゴリズム・CRSに対する最新の情報に従い、適切な処置(トシリズマブ(遺伝子組換え)または副腎皮質ステロイドの投与等)を行う。試験では「本剤投与開始からCRSの初回発現まで」の期間の中央値は、5.0日または4.0日(範囲は試験により1-14日または2―14日)であった。CRSに関連して「貪食性リンパ組織球症」が報告されている

神経系事象が現れることがあるので、徴候・症状(脳症、失語症、振戦、譫妄、浮動性めまい、頭痛など)の観察を十分に行い、異常が認められた場合は、最新の神経系事象管理アルゴリズム等に従い適切な処置を行う

感染症が現れることがある。細菌、真菌、ウイルス等による日和見感染を含む「重度の感染症」(敗血症、肺炎など)が現れることがあり、死亡例も報告されている。発熱性好中球減少症が現れることがある。進行性多巣性白質脳症(PML)が報告されていることから、神経症状が現れた場合は鑑別のための適切な検査(脳脊髄液検査やMRIによる画像診断など)を行う。投与前に臨床的に重要な活動性感染症が認められた場合は、回復するまで本品の投与を延期する

▽B型肝炎・C型肝炎ウイルスキャリアの患者また既往感染者において、肝炎ウイルスが再活性化される可能性がある。HIV感染者においてはウイルスが増加する可能性がある。白血球アフェレーシス(分離)を実施する前にB型・C型肝炎ウイルス感染、HIV感染の有無を確認する。肝炎ウイルスキャリアの患者または既往感染者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、肝炎ウイルスの再活性化や増加による悪化の徴候または症状に注意する

▽投与後数週間以上にわたり▼血小板減少▼好中球減少▼貧血—などの「骨髄抑制」が現れることがある。定期的に血液検査を行い、患者の状態を十分に観察する

低ガンマグロブリン血症が現れることがある。異常が認められた場合は、適切な処置(免疫グロブリン補充療法を定期的に行う等)を行うとともに、感染症の徴候等に対する観察を十分に行う

腫瘍崩壊症候群が現れることがある。血清中電解質濃度の測定および腎機能検査を行うなど、観察を十分に行う

精神状態変化や痙攣発作等の神経系事象が現れることがある。投与後の患者には「自動車運転」や「危険を伴う機械の操作」に従事させないよう注意する





関連して、厚労省は、本剤を保険診療の中で投与する場合の留意事項に関する通知を発出する構えです(5月18日に発出予定)。

具体的には、上述したガイドライン遵守を強く求めるとともに、自施設が▼日本造血・免疫細胞療法学会が定める移植施設認定基準の全ての項目を満たす診療科(認定カテゴリー1)を有する施設▼認定カテゴリー1に準ずる診療科(認定基準のうち、移植コーディネーターの配置に係る基準以外を満たす診療科)を有する施設—のいずれかであるかなどをレセプトの摘要欄に記載することが求められます(中医協資料はこちら(通知原案))。



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