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病床機能報告 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

病院における消費税問題は「軽減税率」で解決を、病院の再編統合や実効性のある医療従事者の賃上げなどを税制で支えよ―四病協

2024.8.29.(木)

いわゆる控除対象外消費税負担について、診療報酬での対応で不公平が解消されない場合には、税制上の「抜本的な解決」を行うことを検討してほしい―。

2024年度診療報酬改定で設けられたベースアップ評価料などもを活用して「医療従事者の賃上げ」がなされているが、より実効性の高いものとするための税制上の対応を図ってほしい—。

地域医療構想の実現に向け「病院再編」を支援する税制上の整備を行ってほしい—。

物価や人件費が高騰し医療機関経営が非常に厳しくなる中でも、医療の質向上に向けた取り組みの継続を可能にする環境を税制面でも整備してほしい—。

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)は8月23日に、こうした内容を盛り込んだ2025年度税制改正要望を武見敬三厚生労働大臣に宛てて提出しました(日本病院会のサイトはこちら)。

医療機関経営が厳しくなる中でも、医療の質向上に向けた取り組みを税制でも支えよ

四病協の税制改正要望は、次の16項目です。
(1)社会保険診療報酬等の非課税に伴う控除対象外消費税の抜本的な解決
(2)医療機関に対する事業税特例措置の存続
(3)賃上げ促進税制における税額控除上限の緩和要望
(4)社会医療法人・特定医療法人・認定医療法人の収入要件における補助金等の収入の取扱いの見直し
(5)認定医療法人制度の存続と認定期限の緩和
(6)持ち分のある医療法人に係る相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の創設
(7)社団医療法人の出資評価の見直し
(8)社会医療法人に対する寄附金税制の整備および非課税範囲の拡大等
(9)高額医療用機器の特別償却制度の適用期限延長等
(10)中小企業関係設備投資減税の医療界への適用拡大
(11)医療機関同士での再編による資産の取得を行った場合における登録免許税および固定資産税の軽減措置
(12)病院用建物等の耐用年数の短縮
(13)医療機関における医療DX への対応及び省エネルギー対策への設備投資等に対する税制措置
(14)医療法人の法人税率軽減と特定医療法人の法人税非課税
(15)医療従事者確保対策用資産および公益社団法人等に対する固定資産税等の減免措置
(16)介護医療院への転換時の改修等に関する税制上の支援措置の創設



多岐にわたるため、ポイントを絞って眺めてみましょう。

まず(1)は、従前からと同じように「診療報酬プラス改定では控除対象外消費税の補填の過不足が解消できないため、保険診療にも消費税を課税する」よう求めるものです。日本医師会は「診療報酬での対応の精緻化により控除対象外消費税問題は解消した」との立場をとっていますが、病院、とりわけ急性期の大規模病院では「物品購入に伴って生じる消費税負担が大きい」点を踏まえ「抜本的な対応を行う」よう求めています。

医療機関等が物品を購入した際にも、当然「消費税」を負担します。ただし、保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、中間消費者である医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」)。この負担を補填するために診療報酬での手当てが行われていますが、診療報酬の算定状況は病院により千差万別のため、どうしても補填の過不足(ある病院では負担を上回る補填がなされ、ある病院では負担が十分に補填されない)などが生じます。

2019年10月の消費税対応改定では、この過不足をできるだけ小さくするために「精緻な対応」(補填)が図られていますが、物品購入量の多い病院では補填が十分になされないケースもままあり、とりわけ病院では補填状況に大きなバラつきが生じます。このため四病協では「病院においては軽減税率による課税取引に改めてほしい」と求めています(診療所は診療報酬対応を継続、関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。



また(2)でも、従前と同様に▼社会保険診療報酬に対する非課税(個人、医療法人共通)▼自由診療収入等に対する軽減税率(医療法人のみ)—の2つの税制特例措置を「恒久的に存続する」ことを求めています。



他方(3)では、賃上げ促進税制における税額控除額が「法人税額・所得税額の20%が上限」とされているところ、「人件費率が高くかつ利益率の低い産業(医業もここに含まれる)においては控除税額が上限に達しやすく、税制を十分に活用できないおそれがある」とし、構造的な賃上げを実現するために「税額控除額の上限緩和」を求めています。2024年度診療報酬における「ベースアップ評価料」などの実効性を高めることを求めるものです。



また(4)では、社会医療法人・特定医療法人・認定医療法人の収入要件「社会保険診療等の収入が全収入の80%を超えること」について、補助金等の収入が一時的な増加することによって要件を満たさないケースが生じないような恒久的な措置を講じることを要望しました。



さらに(5)では、認定医療法人(2014年度税制改正で創設)について▼相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置を2027年1月1日以降も延長する▼相続発生後に移行申請を行う際の申請期限を緩和する▼移行期限内に「持分なし医療法人」に移行できず認定取消となっても、再度認定を受けることができるようにする—よう求めています。

関連して、(6)として「『持分あり医療法人』に対し、中小企業の事業承継における相続税・贈与税の納税猶予・免除制度と同様の制度」(贈与税は株式等に対応する税額の全額、相続税は同じく80%の納税を猶予し、後継者が死亡時まで株式等を保有し続ければ最終的に納税が免除されるなど)を創設することを要望しました。



一方(8)では、社会医療法人について、▼税法上の特定公益増進法人とし、これらに対して寄付が行われた場合、寄付側については支出額の一定部分を所得税法上の寄付金控除の対象および法人税法上の損金とする▼附帯業務も含めて医療保健業をすべて「収益事業」から除外し、非課税とする▼「救急医療等確保事業の用に供する固定資産」に対する固定資産税非課税措置の取り扱いを全市町村で統一し、非課税の範囲を「医療の用に供する固定資産」全般に拡大する—ことを求めました。



さらに(9)では、「高額医療用機器の特別償却制度」(1台または1基の価額が500万円以上で、▼高度医療提供▼薬機法指定から2年以内—のいずれかに該当する機器では、特別償却割合を12%とする)について、「2025年4月1日以降の延長」と「対象機器の拡大」を要望しています。



また(10)では、地域医療を下支えする中小医療機関の設備投資を支援するため、▼中小企業経営強化税制の医療保健業についての対象設備に「医療用機器」「建物附属設備」を追加し、適用期限を2025年4月1日以降も延長する▼中小医療機関の医療機器購入について、中小企業経営強化税制と商業・サービス業・農林水産業活性化税制、高額医療用機器の特別償却制度の選択適用を認める▼中小企業投資促進税制の適用期限を2025年4月1日以降も延長する—ことを求めました。



一方、(11)は、地域医療構想(2025年度に実現目標)の推進に向けて「病院再編」が重要な要素になる点に鑑み、▼必要な不動産を取得した場合の登録免許税の軽減措置を継続する▼新たに固定資産税の軽減措置を講じる—よう求めています。



さらに、▼病院・診療所用の建物の耐用年数を、現行の「39年」から「31年」に短縮する(12)▼医療機関における医療DX対応・省エネ対策のための設備投資等(建物附属設備、構築物、器具備品、ソフトウェア)について、「即時償却・税額控除を選択適用できる措置」「一定期間の固定資産税(償却資産税)の非課税措置」とする仕組みを創設する(13)▼医療法人の法人税率を公益法人等の収益事業並みに引き下げる(現行23.2%から19%へ)、特定医療法人に対する法人税(現行19%)を原則非課税とする(14)▼「医療従事者確保対策の用に供される土地、建物」「公益社団法人、公益財団法人、一般社団法人、一般財団法人で医療保健業を営むもののうち、医療保健業が法人税法上の収益事業から除外されているものについて、当該業務の用に供する土地、建物」について、固定資産税・都市計画税・不動産取得税、登録免許税の減免措置を講じる(15)▼病院等が介護医療院転換した場合、施設基準クリアのために要した建物改修等について、取得価額の30%の特別償却または7%税額控除を認めるほか、固定資産税・不動産取得税の減免等の支援措置を講じる(16)—ことを求めています。物価や人件費が高騰し医療機関経営が非常に厳しくなる中でも、医療の質向上に向けた取り組みの継続を可能にする環境整備を求めるものと言えます。



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