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GemMed塾 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

病院における消費税問題の抜本解決、新興感染症や自然災害に備えるための病院へ税制上の手当てを行うべき―日病

2024.8.14.(水)

いわゆる控除対象外消費税負担について、診療報酬での対応で不公平が解消されない場合には、税制上の「抜本的な解決」を行うことを検討してほしい―。

新興感染症対策、自然災害対策の一環として、「感染症対応の補助金や助成金などの公的支援金を益金不算入とする」「災害復旧のための補助金や助成金などの公的支援金を益金不算入とする」などの税制対応を図るべきである—。

日本病院会は8月9日に、こうした内容を盛り込んだ2025年度の「税制改正に関する要望」を、武見敬三厚生労働大臣に宛てて行いました(日病のサイトはこちら)。

消費税問題の解消に向け、公平性・中立性・簡便性の観点から検討を

日病の要望する税制改正項目は、▼国税:7項目▼地方税:2項目▼地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望:1項目―の合計10項目です。

国税については、次の税制改正を要望しています。
(1)控除対象外消費税等を病院が負担しないように税制上の措置を含めた抜本的な対応を行う
(2)持分のある医療法人に対する事業承継税制を整備する
(3)認定医療法人に係る「相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」について、認定医療法人が期限内に移行手続が完了できなかった場合にも再認定が受けられるようにする(出資者が何らかの理由で持分放棄の意思決定ができない不測の事態が生じ、期限内に移行が完了できないこともあり得るため)
(4)医療法人の出資評価で類似業種比準方式を採用する場合の参照株価は「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低い方とする(持分あり医療法人は、「医療福祉」と「その他の産業」の両方の要素を併せ持つ法人であるといえるため)
(5)医療機関の設備投資に係る税制を整備拡充する
(6)公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制を整備する(診療報酬改定や控除対象外消費税など病院を巡る経営環境は厳しさを増しつつあり、寄附金も含めた法人運営の財源多様化等を図ることが重要でああるため)
(7)医療費控除の制度を拡充する



このうち(1)は、従前より日病をはじめとする多くの病院団体が要望している項目です。

医療機関等が物品を購入した際にも、当然「消費税」を負担します。ただし、保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、中間消費者である医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」)。この負担を補填するために診療報酬での手当てが行われていますが、診療報酬の算定状況は病院により千差万別のため、どうしても補填の過不足(ある病院では負担を上回る補填がなされ、ある病院では負担が十分に補填されない)などが生じます。

2019年10月の消費税対応改定では、この過不足をできるだけ小さくするために「精緻な対応」が図られていますが、日病では「診療報酬では不公平(過不足)が解消できないと認められる場合には、課税化転換を含めた税制の抜本的な改正による問題解決」を検討することを要望(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

なお、抜本解決の方法としては、▼診療報酬で個々の病院の控除対象外消費税負担を完全に上乗せする方法▼課税化転換する方法(例えば、ゼロ%の消費税率を課税し、後に消費税負担を還付する方法)―などがありますが、日病では「実質的な差はなく、公平性・中立性・簡便性の観点から検討すべき」と指摘するにとどめています。



また(2)では、中小企業に対して認められている「非上場株式等に係る納税猶予・免除」制度(継続して事業を行う企業の株式継続保有(現経営者から後継者への事業承継)に対する税負担軽減)について、「持分あり医療法人」の事業承継にも適用することを求めています。本制度の趣旨は「地域中小企業の円滑な事業承継が、雇用確保や地域経済の活性化の観点から極めて重要である」点にあると考えられ、全国各地域の医療提供体制を支え、地域住民や地域行政にとって欠かせない存在である「持分あり医療法人」でも同様と考えられるためです。



他方、(5)では、全国の病院において▼地域医療構想等の政策に沿った機能分化や災害対策、高度な医療技術への対応、感染症対策などのため多額の設備投資を行う必要性に迫られている▼技術革新により陳腐化が生じる医療関係設備(建物、建物附属設備、医療機器、電子カルテ等の情報システム、ロボットフレンドリーな環境整備等)については早期の投資回収/再投資が必要となる—ことを踏まえ、例えば次のような税制上の手当を行うべきと求めています。
▽病院用建物、医療機器、医療情報システム等に関する法定耐用年数の短縮
▽設備投資に係る控除対象外消費税等の即時損金算入(現在は60月の分割損金計上)
▽病床転換改修費用の即時損金算入
▽耐震基準を充足するための改修費用の即時損金算入



さらに(7)では、超高齢化社会において国民皆保険制度を持続可能にするために「全国民が健康維持に自ら取り組む運動をより一層促進する制度を充実させる必要がある」こと、感染症拡大が国民生活に甚大な影響を与えるため「多くの国民に対して予防接種推奨を図るべき」ことなどを踏まえ、「医療費控除」について、例えば次のように拡充すべきとしています。
▽医療費控除金額の10万円下限規制を撤廃し、セルフメディケーション税制を通常の医療費控除の仕組みに統合する
▽健診結果にかかわらず、一定金額の上限を設けて健康診査費用を医療費控除の対象とする
▽すべての予防接種費用を医療費控除の対象とする



また、地方税制に関しては次の2点を要望しています。
(1) 医療機関における社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置を存続する
(2) 病院運営に直接的・間接的に必要な固定資産について、固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税を非課税あるいは減税とする

前者(1)に関しては、「医師に応召義務が課された我が国の医療機関が、国民皆保険制度のもとで国民の健康と命を守り、学校健診・救急医療などの地域公共サービス提供主体を担っている」ことなどを踏まえて1952年に創設された「診療報酬の非課税」措置について、超高齢化社会で民間医療機関の役割が重要性を増す中で「今後とも存続する必要がある」と強く訴えています。

また(2)では、▼国公立・公的病院や社会医療法人は、病院運営に直接的に関係する不動産について固定資産税、都市計画税が非課税となっているが、これらと実質的に変わらぬ機能を持ち、地域医療を支えている医療法人・個人病院には非課税措置は適用されない▼医師や看護師等の医療従事者確保に苦慮している医療機関は多く、人材確保のための職員寮整備を行う病院も少なくないが、これら不動産は「教育用不動産でもない」として、民間病院だけでなく公的病院でも固定資産税等が課税される—などの不合理を指摘し、税制の改正を行う必要があると訴えています。



さらに、【地域医療の拠点としての役割と税制に関する要望】としては、▼新興感染症対策▼頻発する自然災害対策—の一環として、例えば次のような制度を早急に整備するよう求めています。
▽病院を開設する法人に対する寄附について税制上の控除を認める(所得税、法人税)
▽病院を開設する法人が受け入れる寄附金について益金不算入とする(法人税)
▽欠損金の繰越控除期間の制限を撤廃し、欠損金の使用可能期間を無制限とすること(法人税、地方税)
▽欠損金の繰戻還付制度の適用要件を緩和して病院を開設する全ての法人が適用できるようにし、遡って法人税の還付請求できる期間を拡大する(法人税)
▽感染症対応の補助金や助成金などの公的支援金を益金不算入とする(法人税)
▽災害復旧のための補助金や助成金などの公的支援金を益金不算入とする(法人税)
▽激甚指定された災害を原因とする受取保険金を益金不算入とする(法人税)



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