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医療法人経営情報DBのデータと、病床・外来機能報告「以外」データとの連結解析を研究者等に認めるべきか?—医療法人経営情報DB検討会

2024.12.23.(月)

昨年(2023年)8月より「原則として、すべての医療法人にG-MIS用いて毎年度の経営情報を報告する義務が課され」ている(医療法人経営情報データベース(MCDB))。このデータを「個々の医療機関情報などが判別できない」形に加工して研究者等に提供【第3者提供】し、学術研究などに活用する—。

ところで、医療法人経営情報データベース(MCDB)のデータと、病床機能報告・外来機能報告「以外」データとの連結解析を研究者等に認めるべきか?—。

12月20日に開催された「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こうした議論が行われました。

データ提供の内容や方法などに異論は出ていませんが、「MCDBのデータ」と「病床機能報告・外来機能報告『以外』のデータ」との連結解析を研究者等に認めるべきか、という点については意見が割れており、さらなる調整が行われます。

厚労省では、遅くとも「2026年5月19日まで」に研究者等の第3者へMCDBからのデータ提供を行う環境を整えます。

12月20日に開催された「第4回 医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会資料」

個別医療機関、個人を特定・推知されることがないような安全配慮が強く求められる

昨年(2023年)8月より、改正医療法に基づいて、原則してすべての医療法人が経営情報を国に届け出る仕組みが稼働しています(関連記事はこちら)。

この「すべての医療法人が経営情報」を格納したデータベース(医療法人の経営情報データベース、MCDB)については、▼国において活用し、医療政策の企画・立案、医療従事者の処遇改善、医療機関の経営支援などを行う▼医療法人の経営状況に関する情報を広く国民に提供するとともに、医療経済研究に向けたデータの第三者提供を行う—方針が決まっています(関連記事はこちら)。

検討会ではこの方針に基づいて「研究者等の第3者へのデータ提供」方法などを議論しており(関連記事はこちら)、12月20日の会合で報告書案が提示されました。第3者へのデータ提供の仕組みの大枠は次のように整理できます。

●報告書案はこちら(赤字部分は前回会合で議論になったところ)

(1)【オーダーメイド集計】
→研究者等からの申請を受け、「厚労省でデータを集計し、統計の作成、統計的研究を行い」、その結果を提供するもの
→情報漏洩、個別医療機関特定などのリスクは低い
▽利用目的は、▼学術研究の発展に資する(例えば医療提供体制や医療経済に関する論文執筆など)▼教育の発展に資する(例えば医療提供体制データを用いた大学での講義など▼医療提供体制の確保に資する(例えば自治体が「国へ分析を依頼する」ケースなど)—ものとし、「これら研究等の成果が公表されること」も共通の要件とする[医療法施行規則(厚労省令)改正]

▽「委託を申し出るにあたって提出書類に記載する事項」「記載内容に不備がある場合の対応」「委託申出を適当と認める場合の対応」などを定める[医療法施行規則(厚労省令)改正]

▽特定個人や医療法人等の識別につながらないよう、「医療法人情報の最小集計単位をあらかじめ定め、集計結果がそれを下回る場合には、集計結果を非表示とする」「集計結果が特定個人や医療法人等の識別につながるものと見込まれる場合には委託を受けない」などの措置にかかる事項をガイドライン・利用規約に定める



(2)【医療法人情報の提供】(いわば個別データの提供)
→研究者等からの申請を受け、医療法人経営情報データベース(MCDB)から「個別医療機関の特定などができない形にデータを加工」して、当該研究者等に提供するもの
→情報漏洩、個別医療機関特定などのリスクが上述【オーダーメイド集計】に比べて高くなるため、「慎重な取り扱い」が強く求められる
▽利用目的について、「▼学術研究の発展に資する▼教育の発展に資する▼医療提供体制の確保に資する—もの」であることを、今後制定する「MCDBの第3者提供に係るガイドライン」に定め、社会保障審議会の部会で「個別に審査」し、データ提供の可否を判断する
→あわせて「これら研究等の成果が公表されること」も共通の要件とする[ガイドライン制定]

▽データ漏洩などのリスクを極力低減するために、「情報セキュリティが確保されたオンサイトセンター」(福祉医療機構に設置するデータ利活用のための部屋)での利活用を原則とする[医療法施行令(政令)改正]
→ただし、公的機関等(主に行政機関)、または公的機関等からの委託・補助を受けて行う研究者等は、「安全管理措置が確認された自施設」または「オンサイトセンター」での利用を可能とする
→▼自施設で安全管理措置を講じる研究者等について、措置が講じられていることを厚労省が実地監査等により確認する方法▼オンサイトセンターの利用期間、持ち出し可能な情報、外部委託の可否などのオンサイトセンターの利用方法—について、ガイドラインや利用規約に規定する

▽特定個人や医療法人等の識別につながらないよう、▼提供する情報は、研究目的に照らして必要最小限の範囲に限定し、直ちに個人や医療法人等の特定につながる情報(法人名、個人名、医療法人番号、医療機関コード等)は提供しない▼研究目的がオーダーメード集計によって達成できる場合は、オーダーメード集計の結果を提供し、医療法人情報は原則として提供しない▼公表可能な最小集計単位を定め、研究者等は、その最小単位以上で研究成果等を公表する▼多角的な分析を行うために「病床機能報告」及び「外来機能報告」と連携した情報の提供を求める研究者等については、社会保障審議会において当該情報の必要性を審査し、特定個人や医療法人等の識別につながらないように十分に配慮したうえで提供する▼厚労省は、公表内容に再識別可能な情報が含まれていないか、最小集計単位が遵守されているかどうか、公表前に確認を行う—こととする



すでに議論された内容であり、異論・反論は出ていません。もっとも▼「自施設(大学研究室など)の安全管理措置」を厚労省が確認するとしているが、それが統計調査等一般の考え方なのか、MCDBに特異なものなのか確認すべき。他の統計調査等と平仄を合わせた仕組みとすべき(荒井耕座長代理:一橋大学大学院経営管理研究科教授)▼実際にどのような形で、どのようなデータが研究者等に提供されるのか、今後、具体的な例示をいただき、確認させてほしい(野木渡構成員:日本精神科病院協会副会長)▼医療法人は「1人法人」が多く、特定個人・医療法人の再識別がなされやすい。そうした点に十分配慮した仕組みを検討すべき(今村英仁構成員:日本医師会常任理事)▼再識別がなされない加工方法について今後検討するガイドラインの中できちんと規定してほしい(北山昇構成員:森・濱田松本法律事務所弁護士)—などの注文が付いています。

厚労省では、こうした声を踏まえて「運用上、十分に配慮する」考えを示すとともに、▼現在、2023年度に決算を迎えた医療法人のデータが登録され、クリーニングを行っている。ガイドライン検討の中で「具体的なデータ提供例」などを示していく▼一目で「どこの医療法人か」が分かるような形でのデータ提供はしない。しかし、他の様々な情報と付け合わせても、「どこの医療法人かを推知することができない」という厳格な運用までは困難である▼医療法人により役員の構成などは大きく異なる。実際に特定個人等の情報が推知されないように留意をしていく—考えを明確化しています。

MCDBデータと、病床・外来機能報告「以外」データとの連結解析を研究者等に認める?

ところで、報告書案の中には「その他」として、「MCDBのデータ」と「病床機能報告・外来機能報告『以外』のデータ」との連結解析を研究者等に認めるべきか、を引き続き検討する、旨の記載があります。

この点については「検討をすべき」という意見と、「検討は許されない、今回の報告書は踏み込みすぎである」という意見とが、大きく対立しています。

話は2年前に戻ります。2年前の検討会では、「医療法人の経営情報データベースを構築するか」「当該データベースのデータをどう利用するか」が議論され、報告書の中では「MCDBのデータ」と「病床機能報告・外来機能報告『以外』のデータ」との連結解析について、たとえば「新たな制度によるデータベースの分析において、医療施設調査などの統計調査も活用することで、主たる診療科ごとの経営情報等の分析も可能となるため、必要に応じて、統計調査も活用した分析も対応できるよう検討すべき」とあります。

この点について、たとえば荒井構成員は「国(厚労省)等の行政内部での活用はもちろん、研究者等への第3者提供も見越したものである。議事録を確認してほしい」と指摘。「MCDBのデータ」と「病床機能報告・外来機能報告『以外』のデータ」との連結解析を研究者等にも可能とする内容であり、今後、具体的なデータ提供方法などを検討していくべきと主張しています。

一方、角田徹構成員(日本医師会副会長)・今村構成員・伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)・野木構成員らは、上記の2年前報告書の記述は「行政機関内部での活用を認めるもので、第3者へのデータ提供を見越したものではない」と解釈。このため、今般の報告書で「『MCDBのデータ』と『病床機能報告・外来機能報告【以外】のデータ』との連結解析を検討していく」こととなれば、2年前の報告書の決定内容を大きく踏み越えるもので「認められない」と強く反対しています。

両者の意見には、きわめて大きな隔たりがあります。「各種のデータを連結解析して、優れた研究成果につなげていくべき」とする荒井構成員の意見にも、「医療法人は6万弱しかなく、1人医療法人も少なくないために、他の情報と組み合わせれば比較的容易に『どの医療法人か』が推知できてしまう。連結解析は極めて慎重であるべきである」との医療提供サイド構成員の意見にも頷ける部分があります。

こうした状況を踏まえて、田中滋座長(埼玉県立大学理事長)は「厚労省・個別構成員らと個別に修文で対応できるかを調整する。調整が整わなければ再度、検討会で議論を行いたい」と述べるにとどめています。



報告書を確定させたのち、厚労省で必要な法令改正(医療法施行規則改正など)を行い遅くとも「2026年5月19日まで」に研究者等の第3者へMCDBからのデータ提供を行う環境が整えられます。

なお、各医療法人からのデータ登録は、来年(2025年)4月より、G-MISではなく「WAM NET上の新システム」で行うことになる点に留意してください(関連記事はこちら)。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

【関連記事】

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