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看護職員の将来需給推計、「看護職員の適正配置」を勘案すべきなのか―看護職員需給分科会

2016.6.10.(金)

 2025年以降の看護職員の需要を、「医療需要(病床数や患者数)当たりの看護職員数」×「将来の医療需要」として推計していく。その際、一般病床と療養病床については、地域医療構想の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに、病床機能報告制度で報告された「現在の看護職員数」をベースとして、「医療需要当たりの看護職員数」を設定してはどうか―。

 10日に開かれた医療従事者の需給に関する検討会「看護職員需給分科会」では、こういった考え方が厚生労働省から提示されました(関連記事はこちら)。

 委員からは「病床機能報告制度では、病院の希望が加わっており、本来の医療機能ごとの需要とは乖離が出る可能性がある」との指摘も出ています。また、「現状の追認ではなく、あるべき看護職員の配置を考えるべき」との意見もあり、厚労省でさらに推計方法の検討が行われます。

6月10日に開催された、「第2回 医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会」

6月10日に開催された、「第2回 医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会」

一般病床・療養病床では、地域医療構想の4区分ごとに看護職員の必要数を推計

 安倍内閣が昨年(2015年)6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2015」では、地域医療構想などとの整合性をとった上で「医師・看護師などの需給について検討する」ことが指示されています。これを受けて厚労省は、医療従事者の需給に関する検討会を設置。医師、看護職員、理学療法士・作業療法士ごとに分科会を設けて、将来の需給を推計しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 看護職員の需給については、次のように推計してはどうかとの、いわば素案が10日の分科会に報告されました。都道府県ごとの需給推計を全国ベースで積み上げたもの(都道府県集約版)とともに、厚労省も自ら全国ベースの需給を推計します。

●需要数(今後必要となる看護職員数)の推計方法

【基本となる考え方】

 「医療需要(病床数や患者数)当たりの看護職員数」(現状)×「将来の医療需要」

(1)一般病床・療養病床

 「地域医療構想の4つの医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとの、現在の病床数当たり看護職員数」×「4機能ごとの、地域医療構想の必要病床数」

(2)精神病床

 「入院期間区分(3か月未満、3か月以上1年未満、1年以上)ごとの、現在の病床数当たり看護職員数」×「入院受療率と将来推計人口から導いた、入院期間区分ごとの、将来の精神病床の必要量」

(3)無床診療所(外来)

 「医療施設調査に基づく、現在の患者数当たりの看護職員数」×「受療率と将来推計人口から導いた、将来の外来患者数」

(4)訪問看護ステーション、介護保険サービス

 「衛生行政報告例に基づく、現在の利用件数当たり看護職員数」×「将来推計人口や介護保険事業計画などから導いた、将来の利用件数」

(5)保健所、市町村、学校養成所など

 ▽保健所▽市町村▽看護師等学校養成所・研究機関▽社会福祉施設▽事業所―などについて、現在の看護職員配置や今後の計画などを踏まえて、具体的に推計する

 これらは、基本的に「現状」をベースにして「医療需要当たりの看護職員数」を設定しますが、ここに「有給休暇取得率の上昇」など労働条件が改善されることを想定した推計も行われます。

 また「常勤換算人数」のみならず、「実人員数」の推計も行い、そこでは今後予想される短時間勤務者の増加も織り込むことを検討します。

●供給数の推計

 「前年の看護職員数+新規就業者数+再就業者数」×(1-離職率)を2025年まで積み上げる

病床機能報告制度の報告内容は、あるべき姿とは異なるため精査が必要となる

 こうした推計方法(素案)に対しては、委員からいくつか注文が付きました。

 まず(1)の「一般病床・療養病床」の需要推計に関して、ベースが「4つの医療機能ごとの、現在の看護職員数」とされていますが、この点について小林美亜構成員(千葉大学医学部附属病院病院長企画室地域医療連携部特任准教授)や伏見清秀座長代理(東京医科歯科大学医療政策情報学教授)は、病床機能報告制度で報告された内容を用いることに疑問を提示しました。

 病床機能報告制度では、基本的に病院が自らの判断で「自院の各病棟がどの機能に該当するか」を選択して報告します。このため客観的に見ると「この病棟は、本当に高度急性期に該当するのであろうか」という疑問が生じます。実際、多くの大学病院では2014年度に「すべての病棟を高度急性期」として報告し、「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」でも問題となりました(関連記事はこちら)。このため、病床機能報告制度の報告内容と、期待される4機能ごとの状況との間には乖離があると考えられるのです(関連記事はこちら)。

 この問題は厚労省も把握しており、厚労省医政局看護課の担当者は「精査が必要となる」との見解を示しています。

2025年の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している

2025年の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している

特定機能病院では、85病院中75病院が「全病棟」を高度急性期と届け出た

特定機能病院では、85病院中75病院が「全病棟」を高度急性期と届け出た

 

 また「4つの医療機能ごとの、現在の看護職員数」そのものは、都道府県別に設定する考えも示されました。

 なお、現在の看護職員数については、病棟看護師だけではなく、▽外来▽オペ室▽退院調整部門―などに配置される看護師も含めて計算されます。

精神病床では、入院期間区分ごとに看護職員必要数を示せないかを検討

 (2)の精神病床については、入院期間区分ごとに「現在の看護職員数」をベースにする考えが示されています。これは、2012年6月に「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」が、今後は入院期間別(3か月未満、3か月以上1年未満、1年以上)に看護職員を含めた医療従事者の配置基準を考えていく必要性を打ち出したことを踏まえたものです。

 厚労省看護課の担当者は、「例えば、診療報酬で平均在院日数が施設基準に設定されている精神病棟(10対1精神病棟入院基本料では40日以内、13対1精神病棟入院基本料では80日以内など)があり、その入院料などを算定している病棟ごとに看護職員数の配置状況を勘案できないか」といったような検討を行っている旨を述べています。

 また精神病床では、「将来の医療需要」を受療率や将来推計人口から機械的に試算するとの考え方が示されていますが、本田麻由美構成員(読売新聞東京本社編集局社会保障部次長)は、「認知症患者を精神病床で受け入れる」傾向の変更などを考慮すべき旨の提案を行っています。

多くの委員から「看護職員の適正配置」を考慮すべきとの意見

 さらに、多くの委員から「現状の追認ではなく、あるべき看護職員の配置を考えるべきではないか」という指摘もなされました。

 勝又浜子構成員(日本看護協会常任理事)は、「看護職員の適正配置に関する議論も行うべき」と主張。また内藤誠二構成員(渋谷区医師会理事)も「ワークライフバランスや適正な業務の仕方などを重視すべき」との見解を示しています。

 しかし、「看護職員の適正配置」という要素を将来推計に織り込むのは、そう簡単ではありません。

 例えば「現在、看護職員はこうした業務を行っており、それを遂行するには何人の看護職員が必要」という試算ができたとして、妥当性の検証が必要になります。また「100床当たり何人の看護職員が必要」とされても、医療機関がその人数を雇用することができるのか、診療報酬をどう考えるのか、などさまざまな要素が絡んでくるからです。

 

 厚労省は、委員から出された意見を踏まえて推計方法素案を進化させ、より詳細な推計方法を8-9月に開催予定の次回会合に提示する考えです。

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