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病院の定員1人当たり建設費は2184万8000円、300床の一般病院建設では67億円余りに―福祉医療機構

2021.7.28.(水)

病院を建設する際の「定員1人当たり建設費」は、2020年度には前年度から2.6%上昇して2184万4000円となった―。

300床の一般病院を新設する場合、直近の底値である2011年度には33億9000万円余りであったが、2020度には67億4000万円余りとなり、2倍近いコスト増となる―。

このような状況が、福祉医療機構(WAM)が先ごろ公表したリサーチレポート「2020年度 福祉・医療施設の建設費について」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら、前々年度の記事はこちら、その前年度の記事はこちら)。

今後の動向については、「東京オリンピック・パラリンピック」こそ終了するものの、さまざまな動きがあり見通すことはなかなか困難です。

病院の1人当たり建設単価、2020年度は2184万円に

まず2020年度における病院の建設費を見てみると、全体の平米単価は全国平均で37万円となりました。前年度から2万2000円・5.6%低下していますが、機構では「依然高い水準にある」とコメントしています。

また病院の「定員1人当たり建設費」を見ると、2020年度は2184万4000円で、前年度に比べて54万8000円・2.6%上昇しています。2011年度以降、上昇が継続していることが分かります。

病院の建設費動向(2020年度 福祉・医療施設の建設費1 210708)



この「定員1人当たり建設費」について、2016-20年度平均で病院種類別に見ると、▼一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%以上):2246万7000円▼療養型病院(同じく療養病床の割合が50%以上):1736万3000円▼精神科病院(同じく精神病床の割合が80%以上):1256万7000円―となっています。

病院種類別の定員1人当たり建設費の状況(2020年度 福祉・医療施設の建設費2 210708)



ただし、一般病院の中には「救急外来・手術室・集中治療室・大型機器を配置する検査室などを整備する急性期病院」から、「回復期リハビリテーション病棟を主とする回復期機能の病院」まであり、建設費の分布は幅広くなっています。後者については「療養型病院」と大差ない状況です。

「定員1人当たりの延床面積」は2020年度には59.6平米。前年度に比べて4.1平米・7.4%広がりましたが、データにおける「一般病院(全病床に占める一般病床の割合が50%以上)・療養型病院(同じく療養病床の割合が50%以上)などのシェアが変わった」ことにあるようです。



病院の建設費は2011年度に底(20万8000円)を打ってから、概ね上昇傾向にあります。この点、2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響(資材納期の遅延や工事の延期・中断など)があり「建設費がどう動くのか」と注目されましたが、機構では「国土交通省の示す建設工事費デフレーターによれば、2020年度の暫定値は 2019年度からほぼ横ばいで推移しており、建設費は高止まりが続いている」と分析。

さらに、より気になる「今後の動向」については、▼首都圏を中心に続いていた大規模開発が一旦落ち着くが、大阪万博やリニア中央新幹線開通、老朽化したインフラの維持・修繕や防災・減災対策に係る事業などが見込まれ、一定の建設需要は維持される▼高齢化の進展による介護施設の新設や医療施設の建替えに加え、感染症予防・対策を踏まえた設備計画がなされていく―ことなどを勘案していく必要があると述べるにとどめています。



なお、300床の一般病院を新築する場合には、建設費のみに着目すると2011年度には33億9000万円余りでしたが、2020度には67億4000万円余りとなり、2倍近いコスト増となる計算です。その一方で、患者単価はそこまでは上昇しておらず、病院の新築・改築にあたっては、「どのようにコストを抑えるか」という視点が必要となり、そこでは「適切な病床数」の設定が極めて重要となります(「300床の病院が本当に必要なのか、より小規模な病院にすべきではないのか」との視点)。地域の医療ニーズ、近隣病院の動向、自院のリソース(医療資源)などを正確に分析し、「自院の適正規模」を探ることが必要です。

老健施設の1人当たり建設単価、2020年度は1463万円に

介護老健保健施設については、2020年度は▼平米単価:31万3000円(前年度から2万5000円・7.4%低下)▼1人当たり延床面積:46.7平米(同1.7平米・3.5%縮小)▼1人当たり建設単価:1462万9000円(同170万6000円・10.4%低下)―という状況で、前年度に比べて建設単価がやや下落していることが分かります。

100床の老健施設を新築する場合、建設費のみに着目すると2011年度には8億9000万円余りでしたが、2020年度には14億6000万円余りとなり、5億7000万円程度のコスト増になる計算です。

特養ホームの1人当たり建設単価、全国では1490万円、首都圏では1548万円

さらに特別養護老人ホーム(ユニット型)について、(1)首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)(2)全国―の地域別に見てみると、次のような状況です。

(1)首都圏
【平米単価】
2010年度:21万7000円 → 2020年度:33万円(11万3000円・52.1%上昇)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:869万8000円 → 2020年度:1548万3000円(678万5000円・78.0%増)

(2)全国
【平米単価】
2010年度:19万9000円 → 2020年度:31万2000円(11万3000円・56.8%上昇)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:1003万5000円 → 2020年度:1489万9000円(486万4000円・48.5%上昇)

特別養護老人ホームの建設費動向(2020年度 福祉・医療施設の建設費3 210708)



介護分野のニーズは、ある地域では、今後も増加し続けるが、別の地域では、今後しばらくすると減少に転じるなど、非常に複雑な状況です。地域の介護ニーズを詳しく精査した上で、施設の新設・改築計画を組んでいくことが必要です(関連記事はこちら)。



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