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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

電子処方箋の有用性・必要性は理解するが、病院の体制が整っておらず、2023年1月スタートに「極めて強い不安」—日病協・山本副議長

2022.11.25.(金)

電子処方箋が来年(2023年)1月からスタートする。その有用性・必要性は十分に理解しているが、システム改修がとても間に合わず、またシステム改修費補助も足りていないなど、病院の体制が整っていない。こうした中で、来年(2023年)1月のスタートには「極めて強い不安」を感じている—。

11月25日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議でこういった議論が行われたことが、会議終了後の記者会見で山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)から明らかにされました。

11月25日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見に臨んだ山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)

電子処方箋の有用性・必要性は理解するが、病院の体制が整ってない

来年(2023年)1月から「電子処方箋」の運用が全国の医療機関・薬局でスタートします。

オンライン資格確認等システムのインフラを活用し、これまで「紙」で運用されていた、医療機関から薬局への処方指示(処方箋発行)を「オンライン」で行うものです。大まかな流れは以下のようになります。

(a)患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望する(オンライン資格確認等システムでの資格認証や診察時などに確認、マイナンバーカード以外で受診する場合には口頭で確認する)

(b)医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」する

(c)医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付する

(d)患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示する

(e)薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行う

(d)患者に薬剤を交付する



このうち(b)および(e)において、患者同意の下で「過去に処方・調剤された薬剤情報」の閲覧が可能になるため、重複投薬や多剤投与、禁忌薬剤の投与などを「リアルタイム」でチェックし是正を図ることが可能になります。「薬剤使用の適正性・安全性が確保される」、「医療費が適正化される」などのメリットが期待できます。

電子処方箋の概要(健康・医療・介護情報利活用検討会1 221019)

電子処方箋の導入スケジュール(健康・医療・介護情報利活用検討会2 221019)



日本私立医科大学協会や地域医療機能推進機構、日本病院会など15の病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)でも、こうしたメリットを踏まえて、電子処方箋の全国運用に大きな期待を寄せています。

しかし、日病協では次のような問題点があり、来年(2023年)1月の運用開始に「極めて強い不安を感じている」ことが厚生労働省に伝えられました。

▽大がかりな院内システム改修が必要になるが、医療機関に対する補助が少なすぎる(例えば200床以上病院では事業額の486万6000円を上限にその3分の1(つまり162万2000円)を補助)

電子処方箋を導入する医療機関等への補助(社会保険診療報酬支払基金の医療機関向けポータルサイト より)



▽システム改修を行うベンダーが極めて多忙であり、来年(2023年)1月のシステム改修が極めて困難である(「とても間に合わない」状況である)

また、電子処方箋システムを利用し処方箋を発行するにあたっては、医師が「電子証明書を内蔵したICカード(HPKIカード)」を用いて「処方箋発行者が医師免許保持者である」ことを証明しなければなりません。しかし日病協では「HPKIを用いた認証は極めて煩雑である。院内システムに医師としてログインしていることで『医師免許保持者の証明』が完了していると見做す仕組み、運用としてほしい」とかねてから要望しています。

病院団体をはじめ、医療現場からは、かねてより、こうした課題があり解決してほしい旨を厚労省へ伝達していますが、日病協の山本副議長は「十分な回答が得られない。コストや期限などについて『モデル事業(山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域で10月末からスタート、厚労省サイトはこちら)を参考に検討していく』とコメントするにとどまっている。すでに11月末である。電子処方箋の有用性・必要性は十分に理解するが、医療現場の対応ができてない中で前に進めようとする厚労省の姿勢には疑問を感じざるを得ない」旨を強調しています。

この10月末(2022年10月末)から電子処方箋のモデル事業が全国4地域で始まっている



日病協および全国医学部長病院長会議は上記の問題点を改めて指摘し「対応・配慮を求める」要望書を11月28日(月)に厚労省に提出する構えです。今後の動きに注目が集まります。



このほか、11月25日の日病協代表者会議では、▼薬剤の供給不安が長引いているが、この背景には「毎年度の薬価改定」があるのではないか(下図のように2011→17年度の6年間の薬価下落率がマイナス2.4%であるのに対し、2017→22年度の5年間の下落率はマイナス5.0%で「下落率が2倍」になっており、これが製薬メーカーの体力を奪い、薬剤供給不安を長引かせている、関連記事はこちら)▼病院薬剤師の確保に向け、日病協でワーキングを設け、日本病院薬剤師会と共同で年度内(2023年3月まで)に要望書のとりまとめを行う(関連記事はこちら)—という議論も行われています。

従前の「2年に一度の薬価改定」時代に比べ、現下の「毎年度薬価改定」時代には、薬価の下落率が倍になっている(米国製薬工業協会(PhRMA)により)



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