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全世代型の社会保障制度構築のため、医療・介護制度の改革とともに、医療・介護分野でDX推進を—全世代型社会保障構築会議

2022.12.20.(火)

医療保険における「世代間・世代内の負担の公平化」、医療機能の分化・連携の強化、かかりつけ医機能を発揮できる制度整備、少子高齢化で深刻化する介護の課題解決などを急ぎ進め、全世代型の社会保障制度を構築せよ—。

12月16日に開催された全世代型社会保障構築会議で、こうした内容の報告書が取りまとめられました(内閣官房のサイトはこちら)。制度改革の具体的な内容は社会保障審議会の各部会で詰められています。

世代間・世代内の医療保険負担の公平化を実現せよ

未曽有の少子高齢化が進んでいます。ついに今年度(2022年度)から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には団塊の世代全員が後期高齢者になります。このため、今後、医療・介護ニーズが飛躍的に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者の「数」そのものは大きく変わらないものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少していきます。

このように、「減少していく現役世代」で、「増加する高齢者」を支えなければならないため、医療・介護・年金をはじめとする社会保障制度の基盤が極めて脆くなる、つまり、「社会保障制度維持が非常に難しくなっていく」のです。

そうした状況を踏まえて構築会議では、「少しでも多くの方に『支えられる側』ではなく『支える側』として活躍してもらうことで、『支える側』と『支えられる側』のバランスを見直していく必要がある」、つまり「負担能力のある高齢者には、社会保障の支え手側に回ってもらう」ことを強調し、社会保障制度全体の見直しを議論してきました。

報告書では、▼「少子化・人口減少」の流れを変える(安心して子育てができる環境を整備する)▼これからも続く「超高齢社会」に備える▼「地域の支え合い」を強める—ことを目指し、社会保障制度の改革方向(「将来世代」の安心を保障する、能力に応じて全世代が支え合う、個人の幸福とともに社会全体を幸福にする、制度を支える人材やサービス提供体制を重視する、DX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組む)を提言。本稿では、医療・介護に関連する部分を眺めてみます。

まず医療保険制度については、「負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合う仕組み」の構築に向けて(1)後期高齢者医療制度の保険料負担の在り方の見直し(2)被用者保険者間の格差是正—の2点を提言しました。

(1)では、「後期高齢者の保険料負担」と「現役世代の支援金」について、負担能力のある高齢者に応分の負担を求めつつ「1人当たりの伸び率が均衡する」ような見直しを行うことを求めています。さらにより具体的に▼後期高齢者の「世代内で能力に応じた負担」を強化する観点から、賦課限度額・所得割率の引上げを行いつつ、低所得者層の保険料負担が増加しないよう配慮すべきとしました。

また(2)では、報酬の低い健康保険組合の負担軽減・被用者保険における保険料率の格差是正の観点から「前期高齢者(65-74歳)の医療費の分担について、 現行の『加入者数に応じた調整』に加え、部分的に『報酬水準に応じた調整』を導入する」ことを提案。さらに、健康保険組合全体として負担上昇が抑制されるよう、企業の賃上げ努力を促進する形で、「健康保険組合を対象として実施されている既存の支援」の見直し、さらなる支援を行うことも求めています。

具体的な制度改正内容については、この方向に沿って社会保障審議会・医療保険部会で固められています(関連記事はこちら)。

かかりつけ医機能が発揮できる制度整備を進めよ

医療提供体制については、機能分化・連携の推進に向けて▼都道府県の責務の明確化等による地域医療構想の推進▼医療法人の経営情報のデータベースの構築などの医療法人改革▼医師等の働き方改革の確実な実施▼医療専門職におけるタスク・シフト/シェア▼医療の担い手の確保▼医師偏在対策—などを着実に推進することを求めるとともに、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を行うよう次のような提言を行っています。

▽かかりつけ医機能の定義については、現行の医療法施行規則に規定されている「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討すべき
→機能の一つとして、日常的に高い頻度で発生する疾患・症状について幅広く対応し、オンライン資格確認も活用して患者の情報を一元的に把握し、日常的な医学管理や健康管理の相談を総合的・継続的に行うことが考えられる
→ほか、例えば、▼休日・夜間の対応▼他の医療機関への紹介・逆紹介▼在宅医療▼介護施設との連携—などが考えられる
→複数の医療機関が緊密に連携して実施することや、地域医療連携推進法人を活用することなども考えられる

▽かかりつけ医機能の活用については、医療機関、患者それぞれの「手挙げ方式」、すなわち「患者がかかりつけ医機能を担う医療機関を選択できる」方式とすることが考えられる
→医療機能情報提供制度を拡充し、医療機関が自らのかかりつけ医機能に関する情報を住民に分かりやすく提供する
→医療機関が保有するかかりつけ医機能を都道府県に報告する制度を創設することで、都道府県が機能の充足状況を把握できるようにする

▽医師により「継続的な管理が必要」と判断される患者に対して、医療機関がかかりつけ医機能として提供する医療の内容を書面交付などにより説明することが重要
→特に高齢者については幅広い診療・相談に加え、在宅医療、介護との連携に対するニーズが高いことを踏まえ、これらのかかりつけ医機能をあわせもつ医療機関を都道府県が確認・公表できるようにすることが重要である

▽地域全体で「必要な医療が、必要なときに提供できる」体制が構築できるよう、都道府県 が把握した情報に基づいて、地域の関係者が、その地域のかかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みを導入すべき

この具体的な仕組みについては、社会保障審議会・医療部会で検討が進められています(関連記事はこちらこちら)。

少子高齢化の進展で介護制度の課題は深刻化、早急な制度改革を

介護に関しては、高齢化に伴う費用の急増、少子化に伴う人材不足などの深刻な問題がある点を強調し、地域包括ケアシステムの深化・推進(医療ニーズ 高い中重度の要介護者を含めた要介護高齢者が在宅で生活できる介護サービス提供体制の整備、ケアマネジメントの質向上、総合事業の整備・活性化など)とともに、次の計画(2024-26年度の第9期介護保険事業(支援)計画)期間に向けて次のような改革を行うよう提言しています。

▽介護現場革新のワンストップ窓口の設置

▽介護ロボット・ICT機器の導入支援

▽優良事業者・職員の総理表彰等を通じた好事例の普及促進

▽介護サービス事業者の経営の見える化

▽福祉用具、在宅介護におけるテクノロジーの導入・活用促進

▽生産性向上に向けた処遇改善加算の見直し

▽職員配置基準の柔軟化の検討

▽介護行政手続の原則デジタル化

▽介護サービス事業者の経営の協働化・大規模化

なお、具体案について社会保障審議会・介護保険部会において意見がまとめられましたが、「給付と負担の見直し」については結論を先送りにしています(関連記事はこちら)。



さらに、医療・介護分野におけるDX推進に向け、(a)医療・介護分野の関連データの積極的な利活用の推進(PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)など、マイナンバー制度の下で公共機関の保有する社会保障関係のデータと、関係事業者の保有する各種のデータの連携推進など)(b)医療 DX の実装化(全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテの標準化、デジタル技術導入による診療報酬改定等作業の簡略化など)—を提言しています。



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