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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

併発症の多い75歳以上の生活習慣病患者の状態把握・検診等に力を入れ、多職種でフレイルに対応する仕組み構築を—日医総研

2023.1.11.(水)

75歳以上と74歳以下とで生活習慣病患者の併発症を比較すると、75歳以上で脳血管疾患やがんなどの併発症が顕著に多い。医師が状態をしっかりと把握し、検診や健診を適切に受けるなどの支援により力を入れる必要がある—。

75歳以上でフレイルの割合が増加し、脳血管疾患、心疾患、認知症などの併発症が多くなることから、多職種で対応する仕組みを構築していく必要がある—。

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が12月28日に公表したリサーチレポート「J-DOME症例における2021年度の高齢者診療の状況」から、こうした状況が浮かび上がってきました(日医総研のサイトはこちら)。

高齢者の薬剤使用適正化(多剤投与の解消)をさらに進めていくことも重要

本レポートは、「日本医師会かかりつけ医診療データベース研究事業」(J-DOME)の2021年度症例データを用いて▼糖尿病▼高血圧症—の高齢患者(65歳以上、2585名)の状況を把握・分析したものです。「糖尿病のみ」の患者が34.9%、「高血圧のみ」の患者が27.5%、「双方に罹患する」患者が37.7%という内訳です。

まず患者の受診頻度が、新型コロナウイルス感染症蔓延の中でどう変化したかを見ると、次のように「受診間隔が長くなった」ことが伺えます。

【2週間に1回】2019年度:5.3% → 21年度:5.2%(0.1ポイント減)

【1か月に1回】2019年度:67.4% → 21年度:64.5%(2.9ポイント減)

【2か月に1回】2019年度:22.3% → 21年度:24.9%(2.6ポイント増)

【3か月に1回】2019年度:4.0% → 21年度:4.9%(0.9ポイント増)

【6か月に1回】2019年度:0.4% → 21年度:0.4%(0.1ポイント増)



次に、「同一患者の状態が2020年から21年にかけてどのように変化したのか」を、検査値を指標に見てみると次のような状況です。全体では、「コロナ禍での症状悪化」は今のところ見られません。

【HbA1c】
▽平均値は2020年の6.88%から、21年には6.90で有意な変化なし

▽分布は、7.5%以上8.5%未満が20年の14.5%から21年には14.7%に微増、8.5%以上が20年の5.2%から21年には5.0%に微減

【血圧】
▽収縮期の平均値は2020年の133.9mmHgから2021年には133.0mmHgに、拡張期の平均値は20年の72.5mmHgから21年の72.2mmHgで、有意な変化なし

▽分布は、収縮期140mmHg以上が20年の31.2%から21年には30.6%に減少、拡張期 90mmHg以上が20年の7.2%から21年には7.5%に増加した



さらに、処方薬について「74歳未満」と「75歳以上」とで比較すると、次のような状況が明らかになりました。

【糖尿病】
▽DPP-4阻害薬(テネリア錠、トラゼンタ錠ほか)の処方割合が75歳以上で高い

▽ビグアナイド薬(メトグルコ錠、ジベトス錠ほか)、SGLT2阻害薬(スーグラ錠、カナグル錠ほか)の処方割合が75歳以上で低い

▽SU薬(スルホニル尿素薬、ジメリン錠、ダオニール錠ほか)は75歳以上でやや低い

▽グリニド薬(スターシス錠、グルファスト錠ほか)は全年齢層を通じて処方割合は高くないが、75歳以上でやや高い(SU薬の代替として使用されている可能性あり)

▽グリニド薬、インスリン製剤、GLP-1受容体作動薬(ピクトーザ皮下注、オゼンピック皮下注ほか)については専門医症例の処方割合が高く、DPP-4阻害薬については非専門医症例での処方割合が高い傾向がある

糖尿病治療薬の使用状況( J-DOME 症例における 2021 年度の高齢者診療の状況2 221228)



【高血圧症】
▽カルシウム拮抗剤(アムロジン、アダラートほか)とARB(ミカルディス、ディオバンほか)の処方割合がいずれの年齢層でも高い

▽専門医症例では「より多くの薬剤」が使用されている

高血圧症治療薬の使用状況( J-DOME 症例における 2021 年度の高齢者診療の状況3 221228)



また、処方薬剤の「数」(種類数)を見ると、合計平均3.8剤(糖尿病系治療薬1.5、降圧薬1.5、抗血栓薬0.2、脂質異常症薬0.6)で、「6種類以上」が18.8%を占めています(74歳以下、75歳以上で差は見られない)。

ただし、上記に「骨粗鬆症」や「睡眠障害」の薬剤などが処方されていることも少なくなく、「より多くの薬剤が処方されている」と日医総研では推測しています。



さらに「フレイルあり」の患者は、全体(65歳以上)の6.2%で、75歳以上に限れば10.4%となります。

フレイルの有無と併発症との関係を見ると、フレイルあり患者では、そうでない患者に比べて▼脳血管疾患▼心血管疾患▼認知症—の割合が有意に高いことが分かりました。フレイル患者では、より丁寧な治療・指導管理が必要と考えられます。

フレイルと併発症との関係(JーDOME 症例における 2021 年度の高齢者診療の状況4 221228)



このほか、「生活習慣病の指導は高い割合で実施されている」「糖尿病網膜症の予防・重症化予防ための眼科定期受診は58.2 %でなされている」「歯周病予防のための歯科定期受診は 34.8%でなされている」「75歳以上では、74歳以下に比べて冠動脈疾患、脳血管疾患、がんなど併発疾患を有する割合が顕著に高い」ことなども明らかになっています。

年齢差と併発症の状況( J-DOME 症例における 2021 年度の高齢者診療の状況1 221228)



こうした状況を踏まえて日医総研では、▼併発症の多い75歳以上の生活習慣病患者には、状態把握と健診・検診などの助言がとりわけ重要である▼高齢患者は多剤による薬物有害事象への懸念が高く、手引きの普及など情報や指針の周知を図り、適正処方のさらなる推 進が重要である(関連記事はこちら)▼今後増加するフレイル患者を多職種で支える仕組みの構築が必要である—と結んでいます。



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