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「最適だが保険適応外の抗がん剤」を保険診療と併用するための患者申出療養、薬剤の添付文書改訂踏まえ実施計画見直し―患者申出療養評価会議

2024.11.22.(金)

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」について、▼抗がん剤「ジャカビ」の対象を小児患者にも拡大する▼抗がん剤「アレセンサ」について患者説明文書に、本剤との因果関係の否定できない腎機能障害が発現している旨を追記する—といった見直しを行う—。

患者申出療養の実施計画書の中に「研究実施計画の適格・除外基準を逸脱した患者に係る具体的対応(当該患者申出療養の中断・中止の可能性など)」を定め、実施医療機関において「研究実施計画の適格・除外基準を逸脱した患者に係る具体的対応」を研究実施計画書・説明同意文書など規定することとする—。

11月21日に開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が固められました。

11月21日に開催された「第55回 患者申出療養評価会議」

最適な抗がん剤治療を行う技術、薬剤の添付文書改訂踏まえて実施計画も見直し

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の18種類の患者申出療養が認められています(ただし「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「9」「10」「11」「12」の技術がすでに新規患者の登録を終了、また後述するように「13」の技術も取り下げとなる)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAFV600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究こちら
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら
(18)小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療(関連記事はこちら



11月21日の会合では、「8」の技術に関し、実施計画の見直しを了承しました。

(8)の「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」は、「遺伝子パネル検査で有効な抗がん剤が見つったもが、当該抗がん剤が保険適応外(当該がん種への効能効果が薬事承認されていない)・未承認(本邦での使用が薬事承認されていない)であった」というケースを救済するために設けられました(保険診療と保険外診療(適応外の薬剤使用)との併用を可能とする、これが認められない場合には保険診療部分も全額自己負担となってしまう)。

▼事前に国立がん研究センターで、「患者申出療養の計画」の言わば「雛形」を準備しておく▼「多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする」手続きを事前に踏んでおく—ことで、患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際に、速やかに未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できるようにするものです(通常診療部分は医療保険を使って1-3割負担、未承認・適応外の医薬品費などは保険外の自己負担)。

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の概要



現在、本技術で使用できる薬剤は下表の23種類あり、薬剤ごとに「50症例」を組み入れる計画となっています。

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の使用可能薬剤(2023年3月29日現在)1

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の使用可能薬剤(2023年3月29日現在)2



11月21日の会合では、▼抗がん剤「ジャカビ」の対象を小児患者にも拡大する▼抗がん剤「アレセンサ」について患者説明文書に、本剤との因果関係の否定できない腎機能障害が発現している旨を追記する—といった見直しを行うことが了承されました。いずれも両薬剤の添付文書が改訂されたことを踏まえたものです。



ところで先頃、「6」の技術(進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」)について、終了後に対象患者が「本技術の実施計画書に定められた要件を満たしていない」ことが判明したことを踏まえ、▼患者申出療養の実施計画書の中に「研究実施計画の適格・除外基準を逸脱した患者に係る具体的対応(当該患者申出療養の中断・中止の可能性など)」を定める▼実施医療機関において「研究実施計画の適格・除外基準を逸脱した患者に係る具体的対応」を研究実施計画書・説明同意文書など規定する—という点も11月21日の会合で了承されました。近く通知改正等が行われる見込みです。



このほか11月21日の会合では、次のような報告も行われています。

▽「13」の技術「BRAFV600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」について、今般、「ダブラフェニブ」(販売名:タフィンラー)が小児にも適用拡大となり、現在、本技術を受けている患者2名も保険診療の中で本技術を実施できる状況になったことを踏まえ、患者申出療養の取り下げが行われた(今後、総括報告書が準備される)



▽患者申出療養の実績は以下のとおりである。
▼本年(2024年)6月30日時点で、7種類の技術が稼働し(上述のとおり、今般「13」の技術が取り下げられている)、昨年(2023年)7月から本年(2024年)6月の1年間で13施設・287名に実施され、保険外併用療養費の総額(保険診療分)は約1億円・患者申出療養費用の総額は約7000万円となった

患者申出療養の実績報(2023年7月-2024年6月)1(患者申出療養評価会議1 241121)

患者申出療養の実績報(2023年7月-2024年6月)2(患者申出療養評価会議2 241121)



▼2016年4月から本年(2024年)6月末までに185件(昨年(202年)11月から本年(2024年)6月末までに9件増)の「患者からの相談等」があり、うち16件(同3件増)で「患者申出療養」が実施されている

▼患者申出療養としての実施が行われなかった167(同5件増)の状況を見ると、以下のとおり
・拡大治験(日本版コンパッショネートユース)等の治験、先進医療等、他の臨床試験へ参加:25件(同1件増)
・既承認の患者申出療養に参加:5件(同増減なし)
・相談継続中:ゼロ件(同4件減)
・制度一般に関する照会など、具体的な技術に関する相談ではなかったもの:67件(同7件増)
・一度相談があったが、その後、現在までに相談がないもの:35件(同1件増)
・医療機関等で「患者申出療養として実施困難」と判断したもの:35件(同増減なし)

患者申出療養制度の運用状況・患者等からの相談事例の現状(患者申出療養評価会議3 241121)



▼相談窓口は多くの都道府県で設置されているが、依然として青森県・群馬県では未設置(ただし青森県では設置検討中)であり、傷病と闘う患者に対する相談窓口設置が急がれる(厚労省サイトはこちら(相談窓口リスト))。



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