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15番目の患者申出療養「胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法」、患者負担を考慮して実施期間を18か月延長—患者申出療養評価会議

2024.9.25.(水)

15番目の患者申出療養「胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法」について、使用機器の保険適用が遅れる見通しであることを踏まえ、患者負担軽減を考慮して、実施期間を18か月延長することを認める―。

9月18日に持ち回り開催された患者申出療養評価会議(以下、評価会議)で、こういった点が了承されました。

保険診療と保険外診療との併用を認めて患者負担を軽減し、症例集積を進める

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器などを使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

通常であれば、「未承認(保険外)等の医薬品や医療機器」を使用する医療技術は、一連の治療すべてが「保険外、自由診療」となり、患者負担が莫大になってしまいます。この点、患者申出療養の対象とし「通常の治療は保険診療を可能とし、未承認(保険外)等の医薬品や医療機器の使用部分を保険外(自己負担)」とすることで、患者負担が一定程度軽減され、「症例集積がしやすくなる→未承認(保険外)等の医薬品や医療機器の保険適用に向けた安全性・有効性のデータを集めやすくなる」ことが期待されるのです。

これまでに、次の18種類の患者申出療養が認められています(ただし「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「9」「10」「11」「12」の技術が既に新規患者の登録を終了)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAFV600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究こちら
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら
(18)小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療(関連記事はこちら



9月18日の持ち回り会合では、「15」の技術に関して実施計画の見直しを了承しています。

(15)の胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」は、標準治療(手術、放射線治療)の適応とならない▼最大径3.5cm以下の肺悪性腫瘍(転移性・原発性)▼同じく10cm以下の縦隔悪性腫瘍・胸膜悪性腫瘍・胸壁悪性腫瘍—に対し、局所麻酔下・CTガイド下に凍結針を穿刺し、凍結機器「Visual-ICE」を用いて「凍結→融解」を3サイクル実施し、壊死を狙うものです。

「胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法」の概要(患者申出療養評価会議3 230317)

「胸部悪性腫瘍に対する経皮的凍結融解壊死療法」の保険適用までのロードマップ(患者申出療養評価会議4 230317)



同機器メーカーでは、本凍結機器の薬事承認を目指した準備を別に進めていますが、「薬事承認→保険適用」が実現するまでには一定の時間がかかるため、現在、本技術を保険診療の中で実施することはできません。

そこで慶應義塾大学病院が「保険適用までの間にも、本技術の実施を希望する患者がおられ、患者申出療養として保険診療と保険外診療との併用を認めてほしい」と申請し、承認されています(関連記事はこちらこちら)。



ところで、当初の実施計画では「2024年9月までに20症例を登録し、本技術を実施して有効性・安全性等に関するデータを集積する」(治療期間は2026年9月末まで)とされていましたが、本年(2024年)9月1日時点の実績は「6症例」にとどまっています。

また、本技術に用いる凍結機器について、当初は「2023年9月に薬事承認申請→2024年9月保険適用」とメーカーサイドは見込んでいました。しかし、メーカーによる最新文献の再収集・臨床評価報告書の更新作業などに時間がかかり、PMDAの対面助言実施が遅れたこと、また新たな治験は不要であるものの、PMDAへの相談事項に関する助言への対応に時間がかかったことから、薬事承認申請スケジュールが後ろ倒しとなり、結果、「保険適用時期が遅れ」ることとなっています。

このため、現在の実施計画のままでは、対象患者は「この10月(2024年10月)以降、本技術は自由診療で行うよりなく、患者の費用負担が著しく重くなってしまう」のです。

そこで今般、慶應大病院から次のような「実施期間の18か月(1年半)延長」を認めてほしいとの申請が行われ、評価会議で了承されました。

(当初の実施計画)
▽患者登録期間:2024年9月末まで
▽試験期間:2026年9月末まで

(変更後の実施計画案)
▽患者登録期間:2026年3月末まで(18か月の延長)
▽試験期間:2028年3月末まで(同)



今回の見直しにより、対象患者において「保険診療と保険外診療の併用」が可能となり、完全自由診療に比べて安価な費用負担で治療を継続することが可能となります。



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