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病床機能報告 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

より身近な施設で、小児がん患者が、遺伝子検査に基づいた「最適な抗がん剤」治療を受けられる環境を整備—患者申出療養評価会議

2024.8.27.(火)

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」について、医療現場の要望を踏まえて、試験登録期間の2年間の延長などを行う—。

また、18番目の患者申出療養「小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療」について、実施可能施設を北大病院・九大病院などにも拡大する—。

8月19日に、持ち回り開催された患者申出療養評価会議で、こういった点が固められました。

より身近な医療機関で、最適な抗がん剤治療を行える環境の整備など続く

患者申出療養は、傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用してみたい」という希望・申し出を起点に、当該医療技術(未承認の医薬品等)に一定の安全性・有効性があることを評価会議で確認した上で、保険診療との併用を許可する仕組みです(2016年4月スタート)。

これまでに、次の18種類の患者申出療養が認められています(ただし「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「9」「10」「11」「12」の技術がすでに新規患者の登録を終了)。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちらこちら
(9)HER2陽性の手術不能または再発の乳房外パジェット病患者に対する「トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ点滴静注用)静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(10)ROS1融合遺伝子陽性の進行性小児脳腫瘍患者に対する「エヌトレクチニブ(販売名:ロズリートレクカプセル)の経口投与療法」(関連記事はこちら
(11)免疫グロブリンGサブクラス4自己抗体陽性難治性慢性炎症性脱髄性多発神経炎患者に対する「リツキシマブ追加投与療法」(関連記事はこちら
(12)BRAFV600変異陽性の進行性神経膠腫を有する小児を対象とした「ダブラフェニブ・トラメチニブ併用療法」(関連記事はこちら
(13)BRAFV600変異陽性の局所進行・転移性小児固形腫瘍に対する「ダブラフェニブ・トラメチニブの第II相試験」(関連記事はこちら
(14)EZH2阻害薬の有効性が期待される標準治療がない、または治療抵抗性の小児・AYA悪性固形腫瘍に対する「タゼメトスタット療法」(関連記事はこちら
(15)胸部悪性腫瘍に対する「経皮的凍結融解壊死療法」(関連記事はこちらこちら
(16)筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する「EPI-589再投与」の安全性に関する研究こちら
(17)線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬投与歴のある進行固形がん患者に対するペミガチニブ経口投与療法(関連記事はこちら
(18)小児・AYAがんに対する遺伝子パネル検査結果等に基づく複数の分子標的治療(関連記事はこちら



6月21日の会合では、「8」と「18」の技術に関し、実施計画の見直しを了承しています。

まず(8)の「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」は、「遺伝子パネル検査で有効な抗がん剤が見つったものの保険適応外(当該がん種への効能効果が薬事承認されていない)・未承認(本邦での使用が薬事承認されていない)であった」というケースを救済するために設けられました(保険診療と保険外診療(適応外の薬剤使用)との併用を可能とする、これが認められない場合には保険診療部分も全額自己負担となってしまう)。

▼事前に国立がん研究センターで、いわば『患者申出療養の計画』の雛形作成までを準備しておく▼多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする手続きを事前に踏んでおく—ことで、患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際に、速やかに未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できるようにするものです(通常診療部分は医療保険を使って1-3割負担、未承認・適応外の医薬品費などは保険外の自己負担)。

8番目の患者申出療養「遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対するマルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の概要



この技術について、例えば次のような見直しが了承されました。
▽医療現場からの要望も踏まえて、試験登録期間を2年間延長する
▽より厳密な効果判定を行うため、腫瘍評価について、現行の「16週時点の評価」に加え、より短期間の「8週時点の評価」などを追加するとともに、「腫瘍径を収集する」ことを規定する
▽本技術では「標準治療後の患者」を対象としていることを踏まえ、本試験の評価に影響がない範囲で許容される併用療法(放射線照射および外科手術)に関する規定を追加する
▽中止時検査のアロワンスを規定



また「18」の技術は、いわば「上記『8』技術の小児・AYA版」と位置付けることができます。小児・AYA世代のがん患者が、より円滑に最適な抗がん剤治療が受けられるよう、成人の仕組み((8)の仕組み)と同様に、あらかじめ▼国立がん研究センターで、いわば『患者申出療養の計画』の雛形作成までを準備しておく▼多くの抗がん剤(分子標的薬)を使用可能とする手続きを踏んでおく—こととし、実際に患者から「未承認・適応外の抗がん剤を使用したい」と要望があった際、速やかにこの仕組みに則って「未承認・適応外の医薬品を患者申出療養の中で使用できる」ような体制が整えられています。

「適応外の抗がん剤」治療で効果があると判明した患者が、一刻も早く患者申出療養を申請できるよう、臨床研究中核病院で「下準備」を進めておく



対象患者は、「標準治療がない、または標準治療に不応・不耐であり、次の(a)(b)いずれかに該当するゼロ歳から29歳のがん患者」です。(a)は成人の仕組み((8)の技術)と同様ですが、小児では(b)のケースも患者申出療養の対象となります。
(a)遺伝子パネル検査(我が国で保険適用済み・評価療養として実施)を受け、actionableな遺伝子異常を有することが判明している。かつ、エビデンスレベルD以上と判定されたactionableな病的バリアンスと、それに基づく治療選択肢を提示したエキスパートパネル報告書、およびその根拠となった遺伝子パネル報告書がある

(b)我が国または海外(FDA(アメリカ食品医薬品局)またはEMA(欧州医薬品庁))で薬事承認された分子標的薬(▼我が国で成人には薬事承認されているが小児では承認されていない(小児の用法用量の記載がない)医薬品▼海外(FDAまたはEMA)で小児に薬事承認されているが、我が国で小児に薬事承認されていない医薬品—)の適応がん種と病理学的に診断されている

小児がん等に最適な分子標的薬使用を可能とする新たな仕組み1(患者申出療養評価会議1 230921)

小児がん等に最適な分子標的薬使用を可能とする新たな仕組み2(患者申出療養評価会議2 230921)



今般、この技術について次のような実施計画の見直しが了承されました。本技術を実施できる医療機関が増え、「小児・AYA世代のがん患者が、より身近な医療機関で最適な抗がん剤治療を受けられる」環境が整うと期待されます。
▽北海道大学病院および九州大学病院を追加する
▽実施可能医療機関として「小児がん連携病院」を追加する(関連記事はこちらこちら



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