地域の保険者協議会と後発品協議会が連携し、後発品の更なる使用促進を―厚労省
2018.4.10.(火)
後発品のさらなる使用促進に向けて、各都道府県の医師会・薬剤師会・保険者・有識者等で構成される「後発医薬品協議会」と、保険者・後期高齢者後期連合で構成される「保険者協議会」とで、例えばデータの利活用や、合同会議開催などの連携とってほしい。また中核病院における汎用後発品リストの地域での共有による備蓄負担軽減や、各種勉強会開催により後発品への不信感払拭に積極的に取り組んでほしい―。
厚生労働省は3月27日に通知「保険者協議会と後発医薬品協議会の連携等による後発医薬品の使用促進について」を発出し、こういった点を強調しました(関連記事はこちら)。
中核病院の汎用後発品リストなどを地域で普及することで、備蓄負担軽減を狙う
我が国には「保険証1枚あれば、低廉な自己負担で高水準の医療を受けられる」公的医療保険制度が整備され、これが極めて高い健康水準を支えています。しかし、我々国民の負担能力を超えて医療費が増加すれば医療保険制度が破たんし、国民皆保険制度が崩壊してしまいます。
そこで医療費の伸びそのものを抑える医療費適正化対策が進められており、その一環として「効果が同じで価格が安いジェネリック医薬品(後発品)」の使用促進が重視されています。政府は、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標値を設定しています。現在、第2目標(80%以上)達成に向けた取り組みが各所で進められていますが、例えば、主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する協会けんぽでは、昨年(2017年)11月時点で「後発品割合(調剤分)は72.0%にとどまっている」、「極めて大きな地域格差がある(徳島、山梨、高知、香川などで、低く、沖縄や鹿児島で高い)など、目標達成に向けた「さらなる方策」の推進が必要な状況です(関連記事はこちらとこちら)。
厚労省は今年度(2018年度)から、新たな医療費適正化計画(第3期計画)がスタートすることも踏まえ(関連記事はこちら)、今般の通知で、各都道府県において▼後発医薬品協議会▼保険者協議会―などが連携し、後発品の使用をさらに推進していくよう要請しています。
前者の「後発医薬品協議会」は、地域の▼医師会▼薬剤師会▼保険者▼有識者―が参集して、後発品使用推進方策を検討する場で、各都道府県が事務局を務めます。また、後者の「保険者協議会」は、(1)特定健診・保健指導の実施等に関する保険者間の連絡調整(2)保険者への助言・援助(3)医療費等に関する情報の調査・分析―を行うために、医療保険者と後期高齢者広域連合で構成する組織です。
連携に向けた取り組みとして、まず「両協議会で、後発品使用推進に向けた課題を共有する」ことが重要です。「医師が後発品に不信を抱いているのか」「後発品の供給体制に問題があるのか」「患者自身が後発品使用に後ろ向きなのか」といった点の分析から始め(調査が必要になることもあるでしょう)、課題の整備を終えた後に「対応方針」を固め、医療機関や薬局、保険者など、さまざまな関係者に取り組みを要請することになります。
後発品使用割合の都道府県格差を見れば、「地域に独自の課題」があることも伺えますが、まず「後発品使用が進んでいる地域(例えば沖縄県)でどういった取り組みを行っていて、自地域で実施していないものはなにか」という対策漏れのチェックが極めて重要です。
また、「後発医薬品協議会の取組を、保険者協議会で保険者・後期高齢者広域連合に周知する」「保険者協議会の保有データを、後発医薬品協議会の取り組みに活用する」「合同会議を開催する」といった連携方法も考えられます。両者で似た取り組みを別々に行っている場合には、協働によって効率的かつ効果的に実施(例えば、重複する事務コストを本体コストに充てる、など)することが期待されます。
さらに厚労省は、具体的な対応方法として次のような例示も行っています。
▼後発品使用に積極的な医療機関・薬局の取組事例や使用医薬品選定の考え方の紹介(医療機関間等での好事例の共有)
▼「地域の中核医療機関で採用されている後発品をまとめた汎用後発品リスト」の作成と、地域の医療機関・薬局への周知(備蓄品目の限定による医療機関・薬局の負担軽減)
▼関係団体、後発医薬品メーカー等による「後発医薬品の品質」「薬事規制」に関する勉強会の開催
▼ジェネリック医薬品品質情報検討会等の後発医薬品の品質信頼性向上のための取組の周知(後発品への不信感の払拭)
▼後発品の品質や安定供給等について理解を深めるため、メーカーの製造工場や卸売販売業者の倉庫等の視察
▼国から提供するNDBデータ(レセプト・特定健診のデータ)や都道府県内の保険者が有するレセプト情報を活用した現状把握や対応方針の検討
▼後発医薬品の使用が進んでいない医療機関・薬局への働きかけ
▼保険者における取組事例や差額通知対象者選定の考え方の紹介(保険者間での好事例の共有)
▼保険者からの差額通知送付時期を医療機関や薬局に伝えることによる「患者に対する一体的な働きかけ」
▼関係者協働での住民や医療関係者への広報活動の企画・実施
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