2017年11月の後発品割合72.0%で前月から大幅増だが、さらなる注視が必要―協会けんぽ
2018.3.20.(火)
主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する協会けんぽにおいて、ジェネリック医薬品(後発品)の使用割合は昨年(2017年)11月時点で72.0%。前月から0.9ポイントの大幅増となったが、今後を注視していく必要がある―。
こうした状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が3月17日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。
「2020年9月に80%以上」の第2目標達成に向け、推進策を再検討する必要あり
我々国民の負担能力を超えて医療費が増加すれば医療保険制度が破たんし、国民皆保険制度が崩壊してしまいます。「保険証1枚あれば、低廉な自己負担で高水準の医療を受けられる」仕組みの崩壊は、我が国の健康水準を大きく低下させます。
そこで医療費の伸びそのものを抑える医療費適正化対策が進められており、その一環として「効果が同じで価格が安いジェネリック医薬品(後発品)」の使用促進が重視されています。政府は、▼2017年央に後発品の使用割合を数量ベースで70%以上とする(第1目標)▼2020年9月に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標値を設定しています。
協会けんぽを運営する全国健康保険協会では、以前より「後発品に切り替えた場合には、自己負担額が○○円軽減されます」といった通知を個別加入者に宛てて発出しているほか、毎月の後発品使用割合を公表などしています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。昨年(2017年)11月の状況を見ると、前月から0.9ポイント上昇し、数量ベースで72.0%(新指標、調剤分)となりました。
後発品使用割合は昨年(2017年)1月に70.6%に達した後、増減を繰り返し、伸び悩んでいましたが、2017年10月から11月にかけて0.9ポイントと大きく伸びています。
もっとも第2目標の「80%以上」との間には8ポイント程度の開きがあります。2017年1月から11月までを見ると、単純計算で「1か月当たり0.14ポイント増加」していることになります。これが継続するとしても、計算上は57か月以上かかることになり、第2目標達成は極めて難しそうです。
また昨年(2017年)10月から11月にかけての「1か月当たり0.9ポイント増加」が、今後も継続すれば、9か月後には第2目標の「80%以上」を達成できますが、その保障はどこにもありません。今後も、後発品割合の動向を注視するとともに、使用推進方策の再検討・実施が必要です。
70%未達は8府県に減少、東京都は70%をかろうじてクリア
後発品使用割合を都道府県別に見ると、依然として大きなバラツキがあることが分かります。
昨年(2017年)11月に後発品割合が低い(第1目標の「70%以上」をクリアできていない)のは、▼徳島県:63.3%(前月から1.0ポイント増)▼山梨県:64.8%(同1.3ポイント増)▼高知県:66.1%(同1.0ポイント減)▼香川県:68.9%(同0.5ポイント増)▼和歌山県:69.0%(同0.8ポイント増)▼大阪府:69.4%(同1.0ポイント増)▼広島県:69.6%(同1.0ポイント増)▼京都府:69.8%(同1.1ポイント増)—の8府県に減少しました。
東京都は70%をかろうじてクリアしましたが、大阪府・京都府といった大都市では「あと一歩」という状況で、先進県(沖縄県の81.8%など)を参考にした「後発品使用促進策」を改めて進めることが必要です。
もっとも、70%をクリアできたとしても、その後に、さらに難しい「80%以上」の第2目標が控えており、さらなる推進策を全国レベルで考えていくことが求められます。
なお、主な薬効分類別に後発品使用割合が高い医薬品を見ると、数量ベースでは血管拡張剤の79.6%(同0.3ポイント増)、去たん剤の75.5%(同0.4ポイント増)、消化性潰瘍用剤の67.2%(同増減なし)など、逆に後発品使用割合が低いのはホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)の13.3%(同0.1ポイント増)、代謝拮抗剤の21.2%(同1.7ポイント増)、などとなっています。
また金額ベースでは、血管拡張剤の67.5%(同0.5ポイント増)、去たん剤の60.3%(同0.4ポイント増)、抗生物質製剤のうち「主としてグラム陽性菌、マイコプラズマに作用するもの」の44.1%(同0.8ポイント増)など、逆に後発品使用割合が低いのは、抗ウイルス剤の5.5%(同0.2ポイント増)、抗パーキンソン剤の6.6%(同0.1ポイント増)、などとなっています。
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