2017年2月の後発品割合は前月から0.1ポイント下がり70.5%、頭打ちか―協会けんぽ
2017.6.16.(金)
主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する協会けんぽでは、ジェネリック医薬品(後発品)の使用割合が今年(2017年)2月時点で70.5%(数量ベース、新指標)となり、前月に比べて0.1ポイントダウンしてしましった―。
こうした状況が、協会けんぽを運営する全国健康保険協会が14日に公表した医薬品使用状況から明らかになりました(協会のサイトはこちら)。政府の掲げる「2017年央の70%以上」という第1目標は調剤分ではクリアできていますが、頭打ちの可能性もあり、「2018-20年度末までのなるべく早い時期に80%以上とする」との第2目標に向けて、さらなる促進策を検討する必要がありそうです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
医療保険全体でも2016年11月時点で67.5%に
新たな医療技術の開発・普及が進み、高齢化の進展がとどまるところを知らない中で、我が国の医療費は増加の一途を辿っています。医療費が国民の負担能力を超えれば、医療保険制度の維持はできなくなるため、医療費の増加そのものを抑えることが急務とされ(医療費の適正化)、その一環として「効果が同じで価格が安いジェネリック医薬品(後発品)の使用促進」が重要施策に位置付けられています。政府は後発品使用割合(数量ベース)について、▼2017年央に70%以上とする(第1目標)▼2018年度から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上とする(第2目標)―という2段階の目標値を設定しています(関連記事はこちら)。
協会けんぽを運営する全国健康保険協会でも、後発品使用促進を重要施策に位置付け、加入者に対し「後発品に切り替えた場合の効果通知」(どの程度自己負担が安くなるのか)を発出しているほか、毎月の後発品使用割合を公表するなどしています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。今年(2017年)2月の状況を見ると、数量ベースで70.5%(新指標、調剤分)となり、前月から0.1ポイント、ダウンしてしまいました。
これまで後発品使用割合は増加を続けており、調剤ベースでは「2017年央に70%以上」という第一目標をクリアできていますが、単なる「踊り場」であるのか、「頭打ち」になっているのか、今後の推移を注意深く見守る必要があります。
沖縄や鹿児島など32道県で70%以上をクリア、東京・大阪・京都などでは未達
後発品使用割合の上昇がストップした背景には、都道府県別のバラつき(後発品割合そのものはもちろん、前月からの変動も含めて)が関係していると考えられます。
今年(2017年)2月に後発品割合70%をクリアしているのは、沖縄県(81.4%、前月から0.5ポイント上昇)、鹿児島県(77.3%、同0.2ポイント上昇)、岩手県(76.3%、同0.4ポイント上昇)、宮崎県(74.5%、同増減なし)、長野県(73.7%、同0.2ポイント増)、富山県(73.7%、同0.3ポイント増)、山形県(73.2%、同0.4ポイント低下)、新潟県(72.9%、同0.5ポイント上昇)、山口県(72.8%、同0.2ポイント上昇)、青森県(72.7%、同0.1ポイント上昇)、佐賀県(72.6%、同0.1ポイント上昇)、宮城県(72.6%、同増減なし)、島根県(72.3%、同増減なし)、熊本県(72.3%、同0.1ポイント上昇)、北海道(72.3%、同0.1ポイント上昇)、石川県(72.3%、同0.1ポイント上昇)、鳥取県(72.0%、同0.1ポイント上昇)、福井県(71.9%、同0.5ポイント低下)、静岡県(71.9%、同0.1ポイント低下)、長崎県(71.5%、同0.2ポイント上昇)、群馬県(71.4%、同0.2ポイント低下)、愛知県(71.1%、同0.3ポイント低下)、三重県(71.1%、同0.3ポイント低下)、滋賀県(71.0%、同増減なし)、福岡県(70.7%、同0.2ポイント低下)、岡山県(70.8%、同0.1ポイント低下)、埼玉県(70.5%、同0.5ポイント低下)、秋田県(70.5%、同0.1ポイント低下)、千葉県(70.2%、同0.2ポイント低下)、栃木県(70.2%、同増減なし)、兵庫県(70.1%、同0.1ポイント低下)、岐阜県(70.1%、同増減なし)、の32道県で、7割の自治体で目標を達成していることになります。しかし、このうち▼山形県▼福井県▼静岡県▼群馬県▼愛知県▼三重県▼福岡県▼岡山県▼埼玉県▼秋田県▼千葉県▼兵庫県―では、前月よりダウンしており、原因を探ったうえで、今後の対策に結び付けていく必要があります。
一方、徳島県59.6%(同0.1ポイント低下)、山梨県62.6%(同0.1ポイント低下)、高知県65.1%(同0.5ポイント上昇)などでは、目標達成までにまだまだ距離があります。また徳島県と山梨県では、前月よりも低下という事態に陥っており、早急な原因究明が求められます。
前述のとおり、前月からのダウンが単なる「踊り場」にとどまるのか、あるいは「頭打ち」になってしまっているのか、できるだけ早期に見極め、次の一手を打つ必要があります。
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