後発品割合80%の目標達成に向け、処方箋の「変更不可」欄は廃止すべきか―中医協総会(2)
2017.2.22.(水)
後発医薬品の使用割合について、「2017年央に後発品割合を70%以上にする」との短期目標達成は見えてきたが、「2018から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上とする」との大目標に向けたハードルはまだ高い。診療報酬上でどのような対策がとれるか、さらに検討する必要がある―。
22日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、こういった議論も行われました(関連記事はこちら)。支払側委員からは「処方箋の『変更不可』欄を廃止すべき」との意見も出ていますが、「いくら安くなっても後発品使用したくない」と考える患者も1割以上おり、どう考えるかで診療側・支払側の意見は異なっています。
目次
後発品割合、病院では2016年9月時点で67.2%、DPC病院に限定すれば74.8%
22日の中医協総会、それに先立って開催された診療報酬改定結果検証部会には、2016年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(2016年度調査)のうち、「後発医薬品の使用促進策の影響及び状況調査」結果が報告されました(関連記事はこちら)。そこからは、次のように後発品の使用が進んでいる状況が明らかになっています。
▼2016年10月1日時点で、後発医薬品使用体制加算1(後発品割合70%以上)を算定している病院は16.3%、加算2(同60%以上)を算定している病院は3.9%、加算3(同50%以上)を算定している病院は2.9%で、合計23.1%が加算を算定している(改定前の15年10月1日時点の23.2%から0.1ポイント減)
▼入院患者に「積極的に後発品を処方する」方針の病院が41.8%、有床診療所が15.9%
▼後発品使用促進が期待される「一般名処方」による処方箋を発行している医師は、病院で58.2%(前回調査よりも9.4ポイント増)、診療所で74.8%(同6.4ポイント増)
▼2016年19月時点で、後発医薬品調剤体制加算2(後発品割合75%以上)を算定している保険薬局は30.3%、加算1(同65%以上)を算定している保険薬局は34.2%
▼改定前に旧加算2(同65%以上)を算定し、改定後に新加算2(同75%以上)を算定している病院は65.3%、改定前に旧加算1(同55%以上)を算定し、改定後に新加算1(同65%以上)を算定している病院は71.3%
▼薬局に来た処方箋のうち「一般名処方」となっていたものの割合は31.1%で、前回調査よりも6.3ポイント増加し、後発品名で処方され「変更不可」となっていたものの割合は1.0%で、前回調査より1.2ポイント減少(2016年10月の1週間分の処方箋が対象)
▼一般名で処方された医薬品について、薬局で後発品を調剤したものの割合は年々増加し、2016年度調査では77.4%になった(前回調査よりも4.4ポイント増)
▼「安くなるかどうかに関わらず後発品を使用したい」「少しでも安くなるなら後発品を使用したい」と考える患者の割合は年々増加し、2016年度調査では62.6%になった(前回調査よりも5.9ポイント増)
▼病院における後発品使用割合(数量ベース)は2016年9月時点で平均67.2%(DPC対象病院では78.4%)、診療所における後発品使用割合は2016年7-9月分で平均47.8%
このように全体的に見て後発品の使用割合は増加しています。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「全国健康保険協会(協会けんぽ)では7割近い(2016年9月時点で68.3%)」ことを紹介し、「「2017年央に後発品割合を70%以上にする」との短期目標達成が射程圏内に入ったとの見解を明確にしました。
処方箋の「変更不可」欄、支払側委員は廃止を提案、診療側は真っ向から反対
ところで、政府は後発品の使用割合について「2018から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上とする」との大目標も掲げています。これについては吉森委員や、同じく支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)、さらに診療側の安倍好弘委員(日本薬剤師会常務理事)ら多くの委員が「相当、ハードルが高い。さらなる対策を検討する必要がある」旨を強調しています。
吉森委員は、「全国健康保険協会では支部によって後発品使用割合に大きなバラつきがある(最高の沖縄では79.7%、最低の徳島では56.6%)。他の保険者でも同様ではないか。80%達成に向けて全体的な底上げはもちろん、『地域差』を分析し、診療報酬での対応を検討すべき」と提案。
また幸野委員は、「国民の意識を『後発品使用が当然』という方向に変えていかなければ目標達成はできない」と指摘。例として▼2018年度改定では『変更不可』欄を廃止する▼患者が「後発品を使いたくない」と言った場合には医師・薬剤が説得する▼分割調剤により「後発品のお試し」を可能とする―ことを提案しています。
幸野委員の指摘の背景には、今般の特別調査において「患者の12%が『いくら安くなっても後発品を使いたくない』と考えている」との結果が出た点があります。いかに診療報酬や調剤報酬で誘導しても、患者が「使いたくない」と考えていたのでは、確かに後発品割合は一定以上には増加しないでしょう。
しかしこの提案に対して、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は、▼患者が後発品を使いたくない理由として「後発品の効き目・副作用に不安がある」との回答が72.6%ある▼「後発品の効き目・副作用に不安がある」と回答した人のうち、29.3%は「効き目が悪くなった」と答え、12.2%は「副作用が出たことがある」と答えている―との特別調査結果をあげ、「プラセボではなく、実際に後発品の中には『完璧とは思えない』ものもあるとの現場医師の指摘もある。患者の希望には沿うべきである」と、幸野委員の「処方箋の『変更不可』欄廃止」提案に真っ向から反対しています。
東日本大震災・熊本地震に伴う診療報酬特例を9月まで継続
22日の総会では、このほか次のような点も了承されました。
▼東日本大震災・熊本地震に伴う診療報酬上の被災地特例(定数超過入院であっても入院料を減額しないなど)について、「現に利用している特例措置」について地方厚生局に届け出た上で、今年(2017年)9月まで継続利用を可能とする
▼2018年度診療報酬改定に向けて、「選定療養」(個室や予約などで、実費を徴収しても混合診療とならない)の拡大に関する意見募集を行う(関連記事はこちらとこちらとこちら)
前者については、被災によって医療機関に患者が一時的に集中したり、入院医療が必要でなくなっても患者の退院が困難(仮設住宅などで受け入れられない)となったりした事態に対応するものです。現在、半年を目途に状況確認が行われ、必要な延長措置が行われています(関連記事はこちら)。
また、先進医療とDPCに関して、下部組織(先進医療会議など)からの報告も受けています。
▼新たな先進医療:進行期乳房外パジェット病に対するトラスツズマブ、ドセタキセル併用療法(HER2陽性の切除不能な進行期パジェット病患者に対し、抗がん剤であるトラスツズマブとドセタキセルを21-35日間隔で3サイクル併用投与し、安全性・有効性を確認する)
▼DPC対象病院の合併:旧「淀川キリスト教病院」(大阪府大阪市)と旧「淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院」(同)が合併し、新「淀川キリスト教病院」(同)となる
▼DPC準備病院の合併:旧「新札幌豊和会病院」(北海道札幌市)と旧「豊和会札幌病院」(同)が合併し、新「新札幌豊和会病院」(同)となる
▼DPCからの退出:明芳会新葛飾病院(東京都葛飾区)【回復期リハビリ病院に機能変更するため】
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