在宅自己注射指導管理料、「14日制限のある新薬」は1年経過後まで対象としないことを明確化―中医協総会
2016.8.25.(木)
在宅自己注射指導管理料の対象薬剤は、「補充療法などの頻回投与」または「発作時の緊急投与」が必要な注射剤で、かつ「必要性が確認されている」「維持期における投与期間が概ね4週間以内」などの要件を満たすものであることを確認する。
あわせて対象薬剤の追加時期について、14日未満の間隔で注射を行うものは「原則として薬価収載の次期」、14日以上の間隔をあけて注射を行うものは「14日を超える投薬が可能になった後」(事実上、薬価収載から1年経過後)に追加を検討する―。
こういった運用方針が24日に開かれた中央社会保険医療協議会・総会で承認されました。
目次
14日制限のある医薬品、14日以内に患者が医療機関を受診するため
患者への注射は、安全性を確保するために「医師などの有資格者が実施」することが原則です。しかし、頻回の注射が必要なケース、あるいは発作が起きた場合に緊急の注射が必要なケースについては、患者に医療機関への受診を求めることは困難です。
そこで厚労省は、こうしたケースについては限定的に在宅で患者自身が注射することを認め、「医師がそのための十分な指導管理を行う」ことを保険診療として扱うことを認めています(在宅自己注射指導管理料)(2016年度改定における在宅自己注射指導管理料の見直し内容はこちら)。
この在宅自己注射指導管理料の対象薬剤については、2013年11月の中医協総会で「15日以上の間隔をあけて注射を行う薬剤は対象外としてはどうか」「14日以上の間隔をあけて注射を行う薬剤は、投与期間の制限(14日制限)がなくなるまで算定対象から除外する」などといった論点が厚生労働省から提示されましたが、十分な議論がなされていませんでした。
こうした状況を踏まえ、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に関する運用を明確にするため、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は改めて次のように提案。24日の中医協総会で承認され、同日から運用されています。
【対象薬剤】
補充療法などの頻回投与または発作時に緊急投与が必要な注射剤で、以下のいずれも満たすもの
▽関連学会などのガイドラインなどにおいて、在宅自己注射を行うことについての診療上の必要性が確認されている
▽医薬品医療機器法上の用法・用量として、維持期における投与間隔が概ね4週間以内
▽上記を踏まえ、在宅自己注射指導管理料対象薬剤への追加の要望がある
【対象への追加時期】
(1)新薬のうち「14 日未満の間隔で注射を行う医薬品」については、上記内容を満たす場合、原則、薬価収載の時期に合わせ対象薬剤に追加することを検討する
(2)新薬のうち「14 日以上の間隔をあけて注射を行う医薬品」については、14 日を超える投薬が可能になった後に、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することを検討する
(2)は慎重投与が求められるとして「投与期間を14日間とする」と制限される医薬品であり、14日以内毎に患者が医療機関を受診することになります。したがって、在宅での自己注射を認める必要性が低いことから、この14日制限が切れる(薬価収載から1年が経過する)までの間、在宅自己注射指導管理料の対象には追加されないことが明確にされたものです。
なお24日の中医協総会では、尋常性乾癬・関節症性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症治療薬の『ブロダルマブ(遺伝子組換え)製剤』(販売名:ルミセフ皮下注210mgシリンジ)と、同じく『イキセキズマブ(遺伝子組換え)製剤』(販売名:トルツ皮下注80mgシリンジ、同80mgオートインジェクター)が、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加されました。
東日本大震災、熊本地震に対する診療報酬上の特例、2017年3月まで延長
また、24日の中医協総会では、東日本大震災と熊本地震に対する「被災地特例」の取扱いについても了承されています。
大規模地震(東日本大震災、熊本地震)で被災した地域では、医療機関も大きなダメージを受けたため、通常の診療報酬算定ルール(施設基準など)に沿うことが難しいところもあり、厚労省は「診療報酬上の特例措置」を認めています(2016年9月30日まで)。例えば、看護師確保が極めて困難かつ被災者を多く受け入れなければならない(看護配置7対1などを満たすことが一時的に困難)なケースについては、「看護職員などの数や入院患者と看護職員の比率、看護師比率について、1割以上の一時的な変動が生じても、当面、届け出を要しない」としています(関連記事はこちら)。
東北3県では、徐々に震災からの復旧・復興に特例措置の利用が減少していますが、今年(2016年)7月時点でも12医療機関(岩手4件、宮城3件、福島5件)が利用しており、その継続が希望されています。
これを受け厚労省は、「特例措置を来年(2017年)3月31日まで延長する」方針を固め、24日の中医協総会で了承されました。半年後(17年2月頃)に改めて状況を確認し、さらなる延長が必要かどうかが検討されます。
また熊本地震の被災医療機関などに対する特例措置については、一旦「来年(2017年)3月31日まで」との期限を設け、復旧・復興状況を勘案しながら特例措置の延長が必要かどうかを検討することになっています。
都立小児総合医療センター、迅速な先進医療の実施が可能に
このほか24日に中医協総会には、次の事項が報告されています。
▽「国家戦略特区における保険外併用療養の特例」(特別事前相談を活用し、迅速に先進医療の実施が可能となる)の対象医療機関に、東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)を追加する(関連記事はこちらとこちら)
▽次の「DPC対象病院の合併」について、DPCへの参加継続を認める(関連記事はこちら)
・日野病院(大阪府堺市)と池田病院(同)が合併し『日野病院』(同)となる
・心臓血管センター北海道大野病院(北海道札幌市)と札幌第一病院(同)、五輪橋産科婦人科小児科病院(同)が合併し、『北海道大野記念病院』(同)と『札幌第一病院』(同)となる
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