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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

長期収載品から後発品への置き換え促進、新薬創出等加算などとセットで議論すべき—中医協・薬価専門部会

2017.6.2.(金)

長期収載品(先発品)の後発医薬品への置き換えを進める方策の一つとして、長期収載品の薬価を後発医薬品と同水準に引き下げる案が浮上しているが、これをどう考えるか—。

5月31日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、こうした議論が行われました。委員の多くはこの案を「慎重に検討すべき」とし、▼新薬▼長期収載品▼後発品—をセットで考えるべきとの見解を示しています。また、支払側委員から後発品への置き換えが進まない長期収載品の価格を引き下げる「Z2」ルールの強化を求める意見も出ています。

5月31日に開催された、「第133回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

5月31日に開催された、「第133回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

先発品価格を後発品と同水準に引き下げるべきか、中医協委員から批判相次ぐ

医療費適正化の一環として「後発品の使用促進」が重要施策の一つとなっており、塩崎恭久厚生労働大臣は5月23日の経済財政諮問会議で「後発品使用割合80%を達成する期限を2020年9月とする」考えを示しています。

塩崎厚労相は、後発品使用割合80%を「2020年9月」までに達成する考えを示している

塩崎厚労相は、後発品使用割合80%を「2020年9月」までに達成する考えを示している

 
そうした中、5月17日に開催された社会保障審議会の医療保険部会では、「長期収載品と先発品との差額分を患者負担とする」あるいは「長期収載品の薬価を後発品と同水準に引き下げる」ことをどう考えるかというテーマで議論が行われました。
厚労省が示した論点

厚労省が示した論点

 
前者は、いわゆる参照価格制に近い考え方ですが、「後発品の安全性が十分に確保され、患者が積極的に選択できる状況になってから議論すべき」「治療に関わるテーマで選定療養には馴染まない」などの批判があります。この仕組みを導入する場合には医療保険制度を見直す必要があり、主に医療保険部会で議論が行われますが、5月31日の中医協薬価専門部会でも診療・支払双方の委員から導入に否定的な意見が相次いでいます。

後者は「薬価」を見直すもので、まさに中医協で議論すべきテーマです。5月17日の医療保険部会では「先発品と後発品の価格を同水準にすれば、長年の実績がある先発品を選択する医師・患者が多くなり、後発品メーカーが撤退するであろう。となれば先発品のみの市場となり、価格競争が働かず、結果として薬価・薬剤費は高止まってしまう」との指摘が数多くなされています。

5月31日の薬価専門部会でも、中医協委員からは否定的な見解が相次ぎました。診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「スペインでは、長期収載品と後発品との価格を同じにした結果、医療費が増加したとの重要な調査結果がある。長期収載品の薬価は下げていくべきだが、同水準とするべきかは慎重に検討する必要がある」と指摘。

また同じく診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)も「価格を同水準とすればさまざまな弊害が出る」とした上で、「長期収載品価格は市場実勢価格に基づくのではなく、後発品の1割増し・2割増しにするといった価格設定方式を検討してはどうか」と提案しています。

さらに診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は「後発品の使用割合の目標達成が見えてきているが、最後に参照価格制や長期収載品価格引き下げを行って、これまでの努力を壊そうとしているようなイメージである」と指摘しています。

長期収載品の後発品置き換え促すZ2ルール、支払側委員が厳格化求める

ところで2014年度の薬価制度改革から、後発品への置き換え率に着目し「後発品への置き換えが進まない長期収載品の薬価を引き下げるルール」(いわゆるZ2)が導入されています。後発品が登場してから5年経過した以降の長期収載品について、後発品への置き換え率が30%未満では2%、置き換え率30%以上50%未満では1.75%、50%以上70%未満では1.5%の薬価引き下げを行うものです(関連記事はこちらこちら)。

後発品への置き換えが進まない長期収載品の薬価を引き下げる、いわゆるZ2ルールの概要

後発品への置き換えが進まない長期収載品の薬価を引き下げる、いわゆるZ2ルールの概要

 
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「我が国では先進諸外国に比べて長期収載品シェアが多いとのデータがあり、後発品への置き換えが十分進んでいないようだ。Z2の対象は『後発品が登場してから5年経過した以降の長期収載品』だが、『5年以降』という対象要件が妥当か、より短くすべきかを検討してはどうか」と提案しました。また同じく支払側の幸野庄司委員も同様に、「5年以降」というZ2の対象要件の妥当性を検討する必要があるとし、「先発品の特許が切れたら、速やかに後発品への移行を促すことも考えられる」と述べ、「5年以降」という対象要件の短縮を求めました。

これに対し厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「長期収載品と後発品の価格差があるために置き換えが進むとの指摘もある(上記のように価格が同一であれば、信頼性が確保されている先発品を選択する医師・患者が多いとの指摘が少なくない)」と述べ、「5年以降」という期間設定には一定の合理性があることを説いています。

なお支払側のZ2見直し提案に対し、製薬メーカー代表の立場で参画している加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「後発品への置き換えが進まない理由・背景を問わず適用されるZ2は非常に厳しいルールである」と述べ、厳格化(5年以降の期間短縮ももちろん厳格化)に強く反対しました。

Z2は、いわば「市場を明け渡すか、価格を引き下げるか」の選択を迫るもので、先発品メーカーにとっては極めて厳しいルールであることは確かです。このため加茂谷専門委員は、▼新薬▼長期収載品▼後発品▼基礎的医薬品(極めて長期間販売され、医療現場になくてはならない医薬品)—を「セットで議論すべき」と訴えています。

仮に長期収載品の価格設定ルールを厳しくする(例えば上記のZ2厳格化)のであれば、製薬メーカーは「長期収載品での収益をあきらめ、後発品の出ていない新薬での収益を確保する戦略」を取る必要があります。その際、別個に「新薬創出・未承認薬解消等促進加算を廃止する」という議論が行われれば、いずれの分野での収益確保も難しくなり、結果として画期的新薬の開発が阻害され、我々国民が不利益を被ることになるからです(関連記事はこちら)。

この訴えには、診療側委員、支払側委員も「長期収載品に依存せず、高い創薬力を持つ産業構造への転換を目指すべきである」と述べ、賛意を示しています。

長期収載品に依存するモデルから、高い創薬力を持つ産業構造への転換イメージ

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