薬価調査において、医療機関に対する価格調査は継続すべきか—中医協・薬価専門部会
2017.3.30.(木)
2年に一度行われている薬価調査は、「卸業者に対する全数調査」と「医療機関に対する抽出調査」とで構成されているが、正確性を担保できることを条件に「卸業者に対する全数調査」に絞ってもよいのではないか—。
29日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、このような議論が行われました。「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では調査の正確性担保が指示されており、厚生労働省は「調査データ検証」の仕組みと合わせて検討していく考えです。
正確性を担保した上で、調査客体の負担軽減を図る必要がある
昨年(2016年)末に「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」でが取りまとめられ、(1)一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するための薬価見直し(2)市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するための「毎年の薬価調査」(3)革新的新薬創出に向けた「新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の抜本的見直し」と「費用対効果評価の本格的導入」―などを行うことになりました。中医協の薬価専門部会では、これら改革を実現するための具体案に関する議論を精力的に行っており、29日には、(2)に関連した薬価調査の「正確性担保」と「調査方法」を議題としました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
医療用医薬品については公的価格(保険償還価格)である「薬価」が設定されていますが、医療機関や保険薬局が卸業者から購入するに当たっては、通常の商取引のため、自由な価格設定が行われます(市場実勢価格)。両者の乖離を埋めるために2年に一度、薬価が見直され(薬価改定)が2年に一度行われ、改定のベースとなる資料収集のために、やはり2年に一度「市場実勢価格の調査」(薬価調査)が行われます。抜本改革基本方針では、薬価改定の頻度を「2年に一度」でなく「毎年」行うよう指示しています。
現在、薬価調査は「販売側である卸業者に対する調査」(全卸業者を対象)や「購入側である医療機関・保険薬局に対する調査」(対象施設を抽出)、行政職員による訪問調査、本調査以外の定期調査を組み合わせて行い、正確性を担保しています。
この点について診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「卸代表である吉村恭彰専門委員(株式会社アステム代表取締役社長)によれば卸からは正確なデータが提出されており、内容の信頼性は非常に高いと言える。そうであれば、負担減も考慮し、医療機関・薬局に対する調査は廃止してはどうか」と提案しました。厚労省医政局経済課の大西友弘課長は「かつては購入側(医療機関・薬局)の調査が薬価調査の中心であった時期もあるようだ。薬価調査をめぐる環境も変化しており、正確性に留意した上で、負担軽減を図る必要がある」とコメントし、中川委員の提案を前向きに検討する考えを示しています。
ただし、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「片方の調査となれば正確性が破壊される可能性もある。慎重に検討すべき」と反対しており、また卸側調査結果と医療機関・薬局調査結果には齟齬が出ることもあることから、「薬価調査結果を検証する仕組み」とセットで負担軽減策を練ることになりそうです。
また大西経済課長は「調査結果の精度向上のために、回収率を上げることが重要」とも考えています。2015年9月時点で、卸調査の客体は6280(日本医薬品卸売業連合会1301、日本ジェネリック医薬品販社協会144、直接販売しているメーカー営業所76、その他4759)ありますが、回収率は72.3%となっています。大西経済課長は、「卸連など団体を通じた調査では回収率は9割を超えていますが、団体に属してない『その他』の客的では回収率が低い」ことを明らかにしており、ここがポイントの1つとなりそうです。
なお、薬価調査は現在、都道府県を通じて卸業者や医療機関などに調査依頼が行われていますが、負担軽減のために2017年度の調査(2018年度改定のベースとなる)から「都道府県を経由せず、厚労省から直接調査票を配布し、回収する」仕組みに見直すことが了承されています。大西経済課長は「回収率確保のために『厚労省からの調査』である旨を明示したり、問い合わせに対応するコールセンターの設置などを行う」考えを示しています。
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