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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

西日本の豪雨を受け、看護必要度など診療報酬算定上の当面の特例措置などを設定―厚労省

2018.7.10.(火)

 今般の豪雨(平成30年7月豪雨)では、医療機関も大きな被害を受けています。土砂崩れなどで建物が流されてしまった、建物や機器、重要書類などが冠水してしまったという医療機関も少なくないことでしょう。厚生労働省は、こうした医療機関に対してもさまざまな特例の救済措置を行うことを7月9日に決めました。

2018年6月診療分のレセプトを棄損した場合など、直近の状況踏まえた概算請求も可能

 まず、6月診療分のレセプト請求間際に豪雨が発生したため、レセプトを滅失・汚損・浸水・棄損してしまった医療機関・保険薬局・訪問看護ステーションについては、「概算請求」という方法が認められます。これは、個々の医療機関における直近の支払額に準じて6月分の請求額を決める方法で、具体的には次のように計算します(公費負担医療に係るものも含まれる)。

【入院診療分】
「今年(2018年)4月・5月の実際の支払額」÷61日×「今年(2018年)6月の入院診療実日数」

【外来診療、保険薬局、訪問看護ステーション】
「今年(2018年)4月・5月の実際の支払額」÷41日×「今年(2018年)6月の外来診療実日数」

この「概算請求」方法を採る場合には、▼7月14日までに「概算請求」方法によることを審査支払機関に届け出る(通常請求の場合も7月14日までに請求すればよい)▼罹災証明書または罹災届出書を審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)に提出しなければならない▼2018年6月の支払額は確定する(後に「実際はより多くの診療を行っており、高額な報酬を請求したい」と申請することなどはできない)―という点に留意が必要です。

仮設建物での診療、柔軟に「保険診療」を認める特例

 また、建物が浸水等したため、やむを得ず「仮設の建物」で診療等を行う場合もあることでしょう。この点、▼場所的な近接性▼診療体制―などから保険医療機関等としての継続性が認められれば、仮設建物で実施した診療行為などを「保険診療」「保険調剤」として取り扱うことが可能です。原則論に立ち返れば、改めての保険指定が必要となり、それまでは自由診療とせざるを得ませんが、今般、柔軟な対応が図られています。

一時的に要件を満たさずとも、従前どおりの診療報酬請求を可能に

また、今般の被災により「診療報酬の届け出に係る施設基準」などを満たせない医療機関が出てくると予想されます。例えば、▼職員が被災し、必要な看護配置が十分に満たせない▼被災者の緊急受け入れをせざるをえず、許可病床数を超えた入院医療を提供する―など、さまざまなケースが生じると考えられます。

保険診療の原則に立ち返れば、「診療報酬の減額」「変更届け出」などを行わなければいけませんが、厚生労働省は被害の甚大さなどに鑑み、当面の間、たとえば次のような柔軟な対応をとること可能としています。

▼定員超過入院であっても診療報酬の減額措置は適用しない、DPC病院においても診断群分類点数表による算定を可能とする

▼入院基本料の「月平均夜勤時間数」について、1割以上の一時的変動があった場合でも変更届け出を行わなくてよい

▼1日当たりの看護要員数、看護配置、看護師比率について、1割以上の一時的変動があった場合でも変更届け出を行わなくてよい

▼DPCの参加基準(データ/病床比が0.875以上など)を満たせなくなったとしても、届出を行わなくてよい

▼被災地の保険医療機関の医師等が、避難所に居住する疾病、傷病のため「通院困難」な患者に対し、当該患者が避難所にある程度継続して居住している場合に、定期的な診療が必要と判断され、患者の同意を得て継続的に避難所を訪問して診察を行った場合には、訪問診療料等を算定できる。同一避難所に複数

▼被災前から【在宅時医学総合管理料】【施設入居時等医学総合管理料】の対象となる医学管理を行っている患者が避難所に避難し、当該患者に当該医学管理を継続して行う場合でも、在総管等は「被災前の居住場所に応じた区分」に従って算定できる。ただし、避難場所が分散し、被災前の居住場所と比べて「単一建物居住患者の人数」が減少した場合には、減少後の人数に基づいて算定する

▼従前、定期的に外来診療を行っていた患者が、避難所等に避難し、そこである程度継続して居住している場合、その患者からの求めに応じて被災地医療機関の医師等が避難所等に赴き診療を行った場合には、【往診料】を算定できる。ただし、2人目以降は【再診料】を算定する(通常の往診料と同じ取り扱い)

▼被災地の保険医療機関において、透析設備が豪雨で使用不可能となっている場合、当面の間、被災地医療機関に豪雨前から継続して入院している慢性透析患者の転院を受け入れ、それが真にやむを得ない事情があった場合には、透析目的の他医療機関受診日でも入院料の控除は行わない

●定員超過入院等の取扱い
▼被災地の保険医療機関が、災害等やむを得ない事情で許可病床数を超過して入院させた場合、次のように入院料を算定する。
○原則
→「実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料」を算定する
○会議室など「病棟以外」への入院
→速やかに入院すべき病棟へ入院させることを原則とするが、必要な診療が行われている場合に限り、当該患者が入院すべき病棟の入院基本料を算定する(診療、看護内容を具体的に記録する)
○医療法上、本来入院できない病棟への入院(精神病棟に精神疾患でない患者が入院するなど)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院
→入院基本料を算定する病棟では、入院した病棟の入院基本料を算定する(例えば、精神病棟に入院の場合は精神病棟入院基本料を算定する)
→特定入院料を算定する病棟では、医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハビリ病棟に、回復期リハの施設基準を満たさない患者が入院した場合には、13対1・15対1看護配置が求められているので【地域一般入院基本料】を算定する)

▼被災地以外の保険医療機関において、被災地の保険医療機関から、医療法上の許可病床数を超過して転院の受け入れを行った場合、次のように入院料を算定する
○原則
→実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定する。
○医療法上、本来入院できない病棟への入院(精神病棟に精神疾患でない患者が入院するなど)、診療報酬上の施設基準要件を満たさない患者の入院
→入院基本料算定病棟では、入院した病棟の入院基本料を算定する(例えば、精神病棟に入院の場合は精神病棟入院基本料を算定)
→特定入院料を算定する病棟では、医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハビリ病棟に、回復期リハの施設基準を満たさない患者が入院した場合には、13対1・15対1看護配置が求められているので【地域一般入院基本料】を算定する)

 
●平均在院日数の計算方法
▼被災地の保険医療機関において、他医療機関で診療継続が困難となったために、転院患者を受け入れた場合、「転院患者を含めて」平均在院日数を計算する。この場合、施設基準(例えば【急性期一般入院料1】では18日以内)を超えた場合であっても、当面の間、従前の入院基本料を算定できる

▼被災地以外の保険医療機関において、被災地の保険医療機関から医療法上の許可病床数を超過して転院の受け入れを行った場合に、当面の間、「当該患者を除いて」平均在院日数を計算する

 
●要件を満たさない入院患者の取扱い
▼被災地の保険医療機関において、災害等やむを得ない事情により、特定入院料の届出病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院(例えば回復期リハビリ病棟に回復期リハビリを要しない患者が入院するなど)した場合には、当面の間、「当該患者を除いて」施設基準の要件を満たすかどうかを判断する

▼被災地以外の保険医療機関において、災害等やむを得ない事情により、特定入院料の届出を行っている病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院(例えば回復期リハビリ病棟に回復期リハを要しない患者が入院するなど)した場合に、当面の間、「当該患者を除いて」施設基準の要件を満たすかどうかを判断する

 
●重症度、医療・看護必要度を満たさなくなる場合の取扱い
▼被災地の医療機関が、災害等やむを得ない事情により患者を入院させたことにより、「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3患者割合」を満たさなくなった場合でも、当面の間、直ちに施設基準の変更届け出を行う必要はない。なお、ICU・HUCにおいて、やむを得ず「本来、当該治療室への入院を要さない患者」を入院させた場合、当該医療機関の「入院基本料」を算定した上で、これらの患者は「重症度、医療・看護必要度」を計算から除外する

▼被災地以外の保険医療機関において、当該被災地の保険医療機関から転院の受け入れを行ったことにより、「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」については、当面の間、「被災地から受け入れた転院患者を除いて」算出することができる。ICU・HCUに、やむを得ず「本来、当該治療室への入院を要さない患者」を入院させた場合については、当該医療機関の「入院基本料」を算定した上で、これらの患者を「重症度、医療・看護必要度」の計算から除外する  
 
 
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