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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

2019年10月からの特定処遇改善加算で、Q&Aを公開―2019年度介護報酬改定QA(1)

2019.4.16.(火)

 厚生労働省は4月12日に、2019年度介護報酬改定に関するQ&AのVol.1(疑義解釈その1)を公表しました。

 2019年10月には消費税率引き上げ(8%→10%)が行われる予定で、これにあわせ「基本単位数の引き上げ」(消費税対応改定)と「特定処遇改善加算の創設」という2つの介護報酬改定が行われます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 今般のQ&Aでは、後者の特定処遇改善加算について介護現場の疑問に答えています。

勤続10年以上の介護福祉士がいなくとも、要件を満たせば特定処遇改善加算を取得可

 特定処遇改善加算は、従前の【介護職員処遇改善加算I-III】を取得している介護サービス事業所・施設(以下、介護事業所等)において、おもに「勤続10年以上の介護福祉士」の処遇改善を行うための原資を提供するものです。もっとも、各介護事業所等の判断で「それ以外の職員」(介護職員、介護職員以外)の処遇改善にも柔軟に充てることが可能です。
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 具体的には、一定の要件を満たした介護事業所等((介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリ、(介護予防)居宅療養管理指導、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、居宅介護支援、介護予防支援は除く)において、「利用者に提供したサービスに係る介護報酬」に加算を上乗せして請求することができます。加算率は下表のとおりに設定され、サービス提供体制強化加算などの取得事業所等では、より高い加算率が設定されています。
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 「一定の要件」(特定処遇改善加算を取得するための要件)には、(1)現⾏の介護職員処遇改善加算I-IIIの取得(加算IV・Vの取得等では不可)(2)介護職員処遇改善加算の職場環境等要件における「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」のそれぞれで1項目以上の実施(3)介護職員処遇改善加算に基づく取り組みの見える化(ホームページへの掲載など)―があります。
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この点、今般のQ&Aでは、こうした要件を満たせば特定処遇改善加算の取得が可能で、「勤続10年以上の介護福祉士がいなくともよい(特定処遇改善加算を取得できる)」旨を明確にしています。

また(2)(3)の「現行の介護職員処遇改善加算に基づく取り組み」については、「介護職員処遇改善加算取得のためにこれまでに取り組んできている取り組みで、(2)(3)の要件を満たせばよく、新たな取り組みを求めるものではない」ことを示しています。もっとも、職場環境等要件について、「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」のそれぞれで1項目以上の実施していない場合(介護職員処遇改善加算は、各1項目を実施しなくとも取得できる)には、新たな取り組みをしなければならない点には留意が必要です。

さらに(3)の「見える化」では、厚労省の実施する「情報公表制度」を活用せず、自前のホームページ等を活用することも可能です。ただし、介護等従事者や利用者への十分な情報提供に鑑みた場合、できるだけ多くのツールを活用する(ホームページも情報公表制度も活用する)ことが期待されます。

各介護事業所等で「勤続10年」を柔軟に解釈してよい

 この加算を原資に、介護事業所等では「勤続10年以上の介護福祉士」を中心にスタッフの給与改善等を行うことになります。給与改善等の方法は、介護事業所等の裁量が相当程度認められますが、全くの自由とすれば「勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善」という本来の趣旨が損なわれることもあるため、一定のルールが定められています。
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 まず、「勤続10年以上の介護福祉士」を基本とする経験・技能のある介護福祉士(介護福祉士であることは必須)に対しては、▼事業所等の中で「月額8万円の処遇改善となる者」または「改善後の賃金が年収440万円(役職者を除く全産業平均賃金)以上となる者」が1人以上▼平均の引き上げ幅が「その他の介護職員」の引き上げ幅の2倍以上―となるような処遇改善を行う、という最低限のルールが定められています。

 この点、Q&Aでは次のような考えを明確にしました。

▽「勤続10年」の考え方について、各事業所等で▼同一法人だけでなく、他法人や医療機関等での経験等も通算する▼すでに事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなどし、「10年以上」の勤続年数を有しない者でも業務や技能等を勘案して対象とする―など柔軟に設定可能である

▽介護福祉士がいない場合や、開設から日が浅く、介護職員間で経験・技能に明らかな差がない場合などは、「月額8万円の処遇改善となる者」または「改善後の賃金が年収440万円以上となる者」が1人以上いなくともよい(ただし、「経験・技能のある介護職員」のグループを設定しない理由を、処遇改善計画書・実績報告書に具体的に記載する必要がある)

▽小規模事業所や開設して日の浅い事業所等では、8万円等の賃金改善に当たり「事業所内の階層・役職、能力・処遇の明確化」のために▼規程整備▼研修・実務経験の蓄積―などに一定の期間が必要となるため、「合理的な説明」が求められる。その際、当該地域における賃金水準や経営状況など、各事業所等で状況が異なることから、一律の基準で「一定期間」を定めることや、計画を定めて一定の期間で改善を求めることは適切でない

▽「経験・技能のある介護職員」に求められる経験・技能については、労使でよく話し合い、各介護事業所等で判断することが重要である

▽「月額8万円の処遇改善」の計算に当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分とは分けて判断しなければならない(現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算してはいけない)

▽「月額8万円の処遇改善」「処遇改善後の賃金が440万円以上」については、手当等を含めて判断する。「月額8万円」の処遇改善では法定福利費等の増加分も含めて判断し、処遇改善後の賃金「440万円」では社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含まずに判断する

▽特定処遇改善加算は2019年10月施行予定であり、「12か月間加算を算定すれば年収440万円以上となる」と見込まれれば、要件を満たすと考えてよい

 
 また、「経験・技能のある介護福祉士」以外については、▼「その他の介護職員」では平均引き上げ幅が「その他の職員」の引き上げ幅の2倍以上となるような処遇改善を行う▼「その他の職種」では改善後の賃金額が「役職者を除く全産業平均賃金(年収440万円)」を超えない場合に、処遇改善を可能とする―というルールも設けられています。

 後者の「その他の職種」については、Q&Aで次のような考えが明らかにされました。

▽その他の職種の440万円の基準については、手当等を含めて判断し、法定福利費等は含めない

▽その他の職種の440万円の基準について、非常勤職員の給与の計算に当たっては「常勤換算」方法で計算し賃金額を判断する

 
 このほか、処遇改善方法について次のような考えも示されました。

▽各グループ(経験・技能のある介護福祉士グループ、その他の介護職員グループ、その他の職種グループ)の対象人数は「原則として常勤換算方法による」が、「その他の職種」グループについては、常勤換算方法のほか、実人数による算出も可能である(各事業所等において、労使で十分に話し合い、適切に判断する)

▽各グループの平均改善額の計算にあたり、「賃金改善を行う職員」だけでなく、「賃金改善を行わない職員」も計算対象に含める

処遇改善の積算根拠資料(各職員の賃金・改善額リストなど)の準備を

 新たな特定処遇改善の取得にあたって、各事業所等では都道府県知事・市町村長(介護サービス等の指定等権者)に対し「処遇改善計画書」(処遇改善の内容など)や「実績報告書」(処遇改善の実績など)を提出する必要があります。

 その際、都道府県知事や市町村長が「適切に処遇改善がなされているのか」を判断できるよう、各事業所等では「積算の根拠資料」(各職員の賃金額や改善額のリストなど)を準備しておくことが求められます(実績報告等に当たって提出することは求められないが、提出を求められた場合には速やかに提出できるような準備が必要)。

この点、「介護事業所等の事務負担軽減」が求められている点に鑑み、Q&Aでは「過去の経緯等を踏まえ、特定の事業所に個別に添付書類の提出を求めることは差し支えないが、地域内のすべての事業所等に詳細な積算資料の事前提出を一律に求めることは想定していない」との考えを示しています。従前の介護職員処遇改善加算等の取得にあたり「処遇改善に関する不適切な事例(実際には十分な処遇改善をしていないなど)」が生じている介護事業所等では、事前の積算資料提出が求められる可能性があります。

法人単位で加算申請できるが、月額8万円以上の処遇改善は事業所につき1人以上必要

 
 なお、法人単位(介護事業所等を開設する法人単位)で特定処遇改善加算取得を申請することも可能で、その際には次のような点に留意することが必要です。

▽法人単位で「月額8万円の処遇改善となる者」「改善後の賃金が440万円以上となる者」を設定・確保すること、「経験・技能のある介護職員」「その他の介護職員」「その他の職種」の設定が可能である

▽法人単位で「月額8万円の処遇改善となる者」などを設定・確保する場合であっても、事業所等の数に応じて「月額8万円以上の処遇改善等が1人以上」となることが必要で、月額8万円以上の処遇改善となる者が法人内に1人だけでは要件は満たさない(なお、小規模事業所等がある場合には、合理的な説明を条件に、当該事業所等に「月額8万円以上の処遇改善等」がいなくともよい)

▽法人内に加算I・加算IIが混在していても一括の取得申請が可能(ただし未取得事業所や処遇改善加算の非対象サービス事業所(訪問看護など)、介護保険制度外の事業所については一括した取扱いは認められない)

 

 

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