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消費税問題、介護分野でも「個別事業所・施設の補填過不足を調整する」仕組みを四病協が提案―介護給付費分科会(2)

2018.10.16.(火)

 10月15日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、医療・介護関係団体から「来年(2019年)10月の消費増税に向けた対応」に関する意見聴取も行われました。四病院団体協議会からは「改定の検証」の必要性が指摘されています(関連記事はこちら)。

また、2021年度の次期介護報酬改定に向けた「先般の2018年度介護報酬改定の結果検証調査」(2018年度調査実施分)の内容について概ねの了承も行われました。

10月15日に開催された、「第162回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

10月15日に開催された、「第162回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

 

福祉用具団体は抜本的解決を目指し、「ゼロ税率課税」を提唱

お伝えしているように、来年(2019年)10月には消費税率の引き上げ(8%→10%)が予定されています。その際、介護事業所・施設の控除対象外消費税負担を補填するための、特別の介護報酬プラス改定(以下、消費税対応改定)が行われる見込みです。公的介護の費用は消費税が非課税となっており、介護事業所・施設が物品等を購入した際に支払う消費税は、利用者等に転嫁できず、介護事業所・施設が負担しなければなりません。消費税率が上がれば、この負担も大きくなり、経営を圧迫してしまうため、消費税対応改定による補填が行われているのです。

介護給付費分科会では、医療・介護関係団体から「消費税対応改定」に関する意見を募っており、10月15日には、(1)四病院団体協議会(日本医療法人協会が代表して意見発表)(2)全国個室ユニット型施設推進協議会(3)日本認知症グループホーム協会(4)日本福祉用具・生活支援用具協会(書面発表)(5)全国リハビリテーション医療関連団体協議会(書面発表)—の5団体から意見聴取を行いました。

このうち(1)の四病協(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は、診療報酬における消費税対応と同様に、「特別のプラス報酬改定を維持」した上で「個別事業所・施設の補填の過不足を申告により調整する」仕組みを提唱(加算等の算定状況は、介護事業所・施設によって異なり、当然、補填状況にもバラつきがでる)。さらに、2014年度の消費税対応改定(5%→8%)時に「補填不足」「補填のバラつき」が生じていたことに触れ、「毎回の改定時などに、消費税の補填不足、バラつきが生じていないかを検証する」ことを求めています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

  
また(2)の個室ユニット型施設推進協は、物価や委託費等の高騰を踏まえた▼食費▼居住費―の見直し(引き上げ)を、消費税対応改定と同時に実施するよう要望。

 
 また(3)の認知症グループホーム協は、▼委託費の増大▼災害対応(発電機など)—などへの配慮を求めたほか、とくに認知症高齢者の処遇で活躍する「見守りセンサー」などの介護ロボット・ICT機器の導入費・維持費等が大きくなっている現状に鑑みた、何らかの支援(介護報酬だけでなく、補助金や税制対応なども含めた)を行うよう求めています。

 
 一方、(4)の福祉用具・生活支援用具協は、かつて病院団体等が声高に提唱していた(現在は、当面の対応として(1)の「過不足を調整する」仕組みを提唱)「ゼロ税率課税」を要望しています。

医療機関等や介護事業所・施設が負担した消費税分を、税制上の措置として返還(いわば還付)を受けるためには、制度上は「消費税が課税」されていなければなりません。その際、消費税率を「ゼロ%」として課税することで、医療機関等や介護事業所・施設が負担した消費税は満額返還されることになります。ただし、非課税措置を「ゼロ%課税」に改めるためには、当然、税制の見直しが必要であり、厚生労働省が単独で解決できる問題ではありません。非常に魅力的かつ、抜本的な対策と言えますが、「将来の検討課題」である点も否定できません。

 
さらに(5)の全国リハビリ医療関係団体協では、やはり▼委託費の増大▼複数事業所の開設に当たっての建築費増大—などへの配慮や、区分支給限度基準額の見直しを求めています。介護保険の居宅利用者については、要介護度別に「1か月当たりに受給可能な公的介護サービス費の上限」(区分支給限度基準額、超過分は全額自費でサービスを受けることが可能)が定められています。このため、介護サービスの費用(基本報酬や一部加算)が消費税対応改定で引き上げられた際、区分支給限度基準額も引き上げなければ、受給(利用)可能なサービスの量が少なくなってしまうのです。2014年度の前回、消費税対応改定時にも引き上げが行われており、今回も引き上げに向けた検討が行われることになるでしょう。

特養ホームや老健施設の事故など、「入院加療が必要か」など詳しく調査

介護報酬改定には、例えば▼物価や人件費等の変動に報酬をマッチさせる▼新たな介護技術などを保険で評価する▼介護現場の課題等を解決する―といった重要な役割があります。

このうち介護現場の課題解決は、例えば「施設から居宅へのシフト」を促すために、▼居宅サービスでの重度者処遇を高く評価する▼施設における軽度者入所に歯止めをかける―といった見直しなどが考えられますが、「1回の改定で課題が解消する」ものではありません。このため、前回改定(今回であれば2018年度改定)の効果・影響を調査し、その結果を次期改定(今回であれば2021年度改定)に反映させることが重要となるのです。

2021年度改定に向けては、▼2018年度▼2019年度▼2020年度―の3回に分けて調査を行うことになっており、2018年度には(1)介護保険制度におけるサービスの質の評価(2)介護ロボットの効果(3)居宅介護支援事業所・介護支援専門員の業務等の実態(4)福祉用具貸与価格の適正化(5)介護医療院におけるサービス提供事態等(6)介護老人福祉施設における安全・衛生管理体制等の在り方(7)介護老人保健施設における安全・衛生管理体制等の在り方—の7項目の調査が実施されます。

10月15日の介護給付費分科会では、この7項目の調査内容等の詳細が示され、表現等について注文は付いたものの概ね了承されました。間もなく近く調査を実施し、年明け(2019年)3月頃に結果速報が明らかにされる見通しです。

なお、調査内容については10月3日の、社会保障審議会・介護給付費分科会「介護報酬改定検証・研究委員会」で揉まれ(関連記事はこちら)、そこでの意見を踏まえて、例えば(6)(7)の安全・衛生管理体制の調査において、各施設における介護事故ヤヒヤリ・ハット事例の認識・把握状況をより詳しく調べる(例えば「事故で治療が必要になった」場合に、「医療機関受診が必要となったか」「入院が必要になったか」など、詳細に状況を把握する)といった見直しが行われています。ただし詳しい調査は、介護事業所・施設の負担を大きくし、回答率を下げることにもつながるため、委員からは「紙媒体だけでなく、ネットを活用した調査」などの提案も行われています。今後の重要検討課題となることでしょう。
介護給付費分科会(2) 181015の図表
 
 
 
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