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常勤介護職員の月給、2017年度から18年度にかけて1万850円アップ―介護給付費分科会(1)

2019.4.11.(木)

 2017年9月から2018年9月にかけて介護職員(月給・常勤)の平均給与は1万850円増加し、30万970円となった。2018年度には【介護職員処遇改善加算】については特段の見直しがなされていないが、▼介護サービス事業所・施設の自助努力▼処遇改善加算Iの取得増▼2018年度の介護報酬プラス改定―などにより、介護職員の給与増に充てる原資を確保したと考えられる―。

 4月10日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚生労働省からこういった報告が行われました。

4月10日に開催された、「第170回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

4月10日に開催された、「第170回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

 

常勤介護職員の月給、あくまで平均だが「30万円」台に乗る

 介護人材の確保・定着が重要課題となる中で、厚労省は【介護職員処遇改善加算】(以下、処遇改善加算)の創設・拡充などの対策をとっています。主に介護報酬改定の度に処遇改善加算の取得状況、職員の給与等状況などが調査され(介護従事者処遇状況等調査)、その効果が検証されています(2019年度調査の関連記事はこちら)。

 2018年度には、7908の介護サービス事業所・施設を対象に「2017年9月の状況」と「2018年9月の状況」とが調べられました。

 まず処遇改善加算の取得状況を見ると、▼加算I:69.3%(2019年度の調査に比べて4.4ポイント増)▼加算II:11.6%(同1.9ポイント減)▼加算III:9.1%(同1.6ポイント減)▼加算IV:0.4%(同0.7ポイント減)▼加算V:0.6%(同0.4ポイント減)―となり、91.1%(同0.1ポイント減)の介護サービス事業所・施設で何らかの処遇改善加算(加算I-V)を取得していることが分かりました。加算IIからVの取得事業所・施設が、より上位の加算I取得に向けて動いたことが分かります。

 また、加算I-Vのいずれかを取得する事業所・施設における介護職員の平均給与は、次のように動いています。

▽月給・常勤の者:1万850円増(3.7%増)
2017年9月:29万120円 → 2018年9月:30万970円

▽時給・非常勤の者:1730円増(1.7%増)
2017年9月:10万3300円 → 2018年9月:10万5030円

 2018年度には処遇改善加算そのものについて特段の見直しが行われなかったにも関わらず、このような大幅な処遇改善が実施された点については、「介護サービス事業所・施設の努力が伺える」とともに、「人材確保・定着に相当苦慮している」ことも再認識できます。厚労省では大幅処遇改善の背景として▼介護サービス事業所・施設の自助努力▼処遇改善加算Iの取得増▼2018年度の介護報酬プラス改定▽加算Iの取得事業所・施設―の3点を掲げています。
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若手職員で給与増の程度が大きく、処遇改善加算は主に「人材確保」に活用

 次に「月給・常勤の介護職員」の平均給与1万850円増について、少し詳しく見てみましょう。:

 勤続年数別に見ると、▼1年(1年-1年11か月):2万8590円・11.8%増▼2年(2年-2年11か月):1万2230円・4.6%増▼3年(勤続3年-3年11か月):1万870円・4.0%増▼4年(4年-4年11か月):1万710円・3.9%増▼5-9年:9970円・3.5%増▼10年以上:8160円・2.5%増―で、新入職員に手厚くなっています。各事業所・施設で「人材確保」に力を入れている状況が分かります。
介護給付費分科会(1)2 190410
 
この点、今年(2019年)10月に創設される予定の「特定処遇改善加算」は、主に勤続10年以上の介護福祉士をターゲットにしており(各事業所・施設で一定程度柔軟な対応が可能)、例えば「介護職員処遇改善加算で若手の給与を引き上げて人材『確保』を行い、特定処遇改善加算でベテランの給与をアップし人材『定着』を狙う」という戦略をとることなども考えられそうです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
 また保有資格別に見ると、▼介護福祉士(平均勤続年数8.4年):9290円・3.0%増▼実務者研修(同6.5年):7660円・2.7%増▼介護職員初任者研修(同6.8年):1万1690円・4.3%増▼保有資格なし(同5.2年):9110円・3.6%増―となりました。特定処遇改善加算を組み合わせると、介護福祉士の給与が相当アップし「職種の魅力」も増すことになります。
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 なお、「月給・常勤の介護職員」の平均給与1万850円増の内訳について、厚労省は▼基本給:3230円(1.8%増)▼手当:3610円(5.3%増)▼一時金(賞与等):4010円(9.0%増)―と分析。一時金の割合が高いですが、安定的な処遇改善のためには「基本給」の引き上げが望まれます。

 給与等の引き上げ方法を見ると、▼給与表改定による賃金水準の引き上げ(予定含む、以下同):21.1%(2017年度調査に比べて1.4ポイント減)▼定期昇給の実施:69.9%(同3.5ポイント増)▼手当の引き上げ・新設:31.3%(同13.4ポイント減)▼賞与等の引き上げ・新設:16.0%(同3.1ポイント減)―となりました。このうち「定期昇給」については、処遇改善加算との関係性はやや薄く、「給与表改定」などの割合が低くなっている点が気になります。

もちろん給与表改定は人件費を恒久的に押し上げることとなり、「事業所・施設の経営」という側面では、ハードルが高いことも事実です。しかし、一時的な給与増等で「人材の確保・定着が十分に可能なのか」という、より長期的な視点に立った検討も必要でしょう。

 
 ところで、時給・非常勤者の給与について、前述のように介護職員では1730円の増加が確認されましたが、その他の職員(看護職員や生活相談員、事務職員など)では平均給与が下がってしまっています。この点について厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は「労働時間の短縮が確認され、そのために平均給与が下がっている(時間給ゆえ)」と説明しました。
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この背景として「働き方改革などで労働時間が短縮している」可能性もありますが、「単価(時給)増によって、従前と同じ労働時間とすれば、いわゆる『130万円の壁』(年収130万円を超えると国民健康保険などに加入しなければならなくなる)などに当たってしまい、そのために労働時間を短くしている」可能性も考えられます。後者であれば、「処遇改善等で、かえって労働力の不足を招いてしまう」ことにもなりかねず、より詳細な調査を行う必要がありそうです。

働きながらの研修受講支援やトラブルマニュアル作成などでの介護職員支援も好調

 また、「給与等のアップ」以外の処遇改善については、例えば▼働きながら介護福祉士取得を目指す者への「実務者研修」受講支援等:69.3%の事業所・施設で実施(以下同)▼非正規職員から正規職員への転換:73.8%▼職員増員による業務負担軽減:64.2%▼ミーティング等の職場内コミュニケーションの円滑化による「個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境・ケア内容の改善」:83.0%▼事故・トラブルへの対応マニュアル等作成による責任所在の明確化:84.5%▼健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化、職員休憩室・分煙スペース等の整備:82.5%―などが多くなっています。

 一方、▼小規模事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築:21.2%▼ICT活用による業務省力化:28.9%▼介護職員の腰痛対策を含む負担軽減のための介護ロボット・リフト等の介護機器等導入:18.3%―などに取り組む事業所・施設はまだ少数派です。
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依然1割弱では処遇改善加算を未取得、「人材確保に困っていない」可能性も

 ところで8.9%の事業所・施設では、処遇改善加算を取得していません。その理由を見ると、依然として「事務作業が煩雑」(53.2%)、「利用者負担が発生してしまう」(33.1%)、「対象が制約されている(看護職員等では処遇改善加算を原資にした処遇改善が行えず、職種間の給与バランスが崩れたり、それを維持するためには事業所・施設の持ち出しが生じてしまう)」(25.8%)などが上がっています。

この点について、介護給付費分科会に先立って開催された「介護事業経営調査委員会」(介護給付費分科会の下部組織)では、「処遇改善加算を取得しない事業所・施設は、いつまでたっても取得していない。より一層の打開策・支援策が必要ではないか」(千葉正展委員:福祉医療機構経営サポートセンター参事)という声が出る一方、「介護事業所・施設の中には、それほど人材確保等に困っておらず、処遇改善加算を取得せずに済んでいるところもあるのではないか」(藤井賢一郎委員:上智大学准教授)との指摘も出ています。今後の検証調査では、藤井委員の指摘も考慮した調査・分析が必要になってくるかもしれません。

なお、介護療養の29.5%は「事務負担が煩雑」との理由で処遇改善加算を取得していませんが、介護療養とはすなわち「病院」(一部診療所も)であり、一定の規模があり、事務職員等も配置されていることから、この理由づけに「大きな違和感を覚える」(藤井委員ら)との声も出ています。より詳しい調査を検討する必要があるかもしれません。

4月10日に開催された、「第28回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

4月10日に開催された、「第28回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

 
 
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