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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

介護職員処遇改善加算の新加算(I)、キャリアパス要件IIIの設計方法などを調査—介護事業経営調査委員会

2017.6.6.(火)

 本年度(2017年度)の臨時介護報酬改定で新設された、「介護職員処遇改善加算」の新加算(I)を取得するために、各介護事業所はどのようなキャリアパスを設計したのか、また新加算(I)を取得できない、あるいはしない理由はどこにあるのか―。

 2日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会「介護事業経営調査委員会」では、こういった点を把握するために、本年度(2017年度)に介護従事者処遇状況等調査を実施する方針を固めました。今年(2017年)10月に調査を実施し、来年(2018年)3月に結果報告を受けることになります。

6月2日に開催された、「第23回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

6月2日に開催された、「第23回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

新加算(I)、経験・資格などに応じて昇給する仕組みの構築などが要件

 介護職員処遇改善加算の見直しについて、おさらいしておきましょう。介護職員については「労働実態に比べて賃金が低すぎる。このため新規人材が参入せず、職場定着もしない」という指摘があり、厚生労働省は▼介護職員処遇改善交付金の創設(2009年、後に加算に組み換え)▼介護職員処遇改善加算の創設(2012年度に創設し、後に拡充)―などの対応を講じています。

 しかし安倍晋三内閣総理大臣は「さらなる処遇改善が必要」とし、ニッポン一億総活躍プラン(2016年6月閣議決定)などの中で「新たなキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の改善を行う」方針を打ち出しました。

介護給付費分科会では、この方針に沿って検討を進め「介護職員処遇改善加算について、新たな加算(I)を設ける」ことを決定。本年(2017年)4月から施行されています。加算(I)の概要は次の通りです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

介護職員処遇改善加算の概要

介護職員処遇改善加算の概要

 
▼月額3万7000円相当の処遇改善を行う

▼現在の加算I(2015年度の介護報酬改定で新設、17年度から加算IIとなる見込み)の要件である、▽キャリアパス要件I(介護職員の任用要件や賃金体系を定め、すべての介護職員に周知するなど)▽キャリアパス要件II(介護職員の資質向上計画を定め、また研修実施などを行うとともに、これらをすべての介護職員に周知するなど)▽職場環境要件(2015年4月以降の賃金改善実績の職員への周知)―のすべてを満たす

▼新たに、事業所内で(1)経験年数(2)資格(3)事業所内での評価―のいずれか(組み合わせも可能)に応じた昇給(基本給、手当、賞与などを問わない)の仕組みを設け、これを就業規則等の明確な根拠規定の書面での整備・全ての介護職員への周知している(キャリアパス要件III)

 従前のキャリアパス要件Iは「職位・職責に応じた賃金体系」を整理するもので、例えば主任になったら月給がいくら、などと規定するイメージです。しかし、どうすれば主任になるのかなどが明確でなく、新設されたキャリアパス要件IIIでは、例えば「経験6年以上であれば主任に昇格し、月給がいくらになる」「介護福祉士資格を取得すれば班長に昇格し、月給がいくらになる」など明確な昇給基準を設定することが求められます。

キャリアパス要件IIIでは、「勤続何年で一定の職位に就き、給与がいくらになる」「どのような資格を取得すれば昇進し、給与がいくらになる」などの明確な基準や給与体系を構築することが求められる

キャリアパス要件IIIでは、「勤続何年で一定の職位に就き、給与がいくらになる」「どのような資格を取得すれば昇進し、給与がいくらになる」などの明確な基準や給与体系を構築することが求められる

新加算(I)を取得しない事業所、昇給の仕組み構築が難しいのかなどの理由を調査

 厚生労働省は、主に新加算(I)の取得状況などを把握するために、今般、介護従事者処遇状況等調査(2017年度調査)を実施することにしたものです。「臨時調査」という位置づけで、2016年度調査で詳しく調べられた「介護職員処遇改善加算そのものを取得しない理由」などについては、2017年度調査では割愛されます(関連記事はこちらこちらこちら)。

新加算(I)に関する調査項目としては、▼届出、取得の状況▼キャリアパス要件IIIについて、経験・資格など・一定の基準のいずれによる昇給の仕組みとしたか▼加算(II)を取得しながら、加算(I)を取得しない理由はなにか—という3点が注目されます。

2日の委員会では「加算(I)を取得しない理由」の把握が「極めて重要である」との共通認識の下、活発な意見交換が行われました。

厚労省は、加算(I)を取得しない理由として次の5つの選択肢を準備しました。加算(II)取得事業所を対象とした設問ゆえ、キャリアパス要件(I)や(II)はすでに満たしているという前提での設問です。

(1)キャリアパス要件Ⅲについて、施設・事業所内で合意形成が難しいため

(2)キャリアパス要件Ⅲをどのようにして定めたらよいかわからないため(昇給の仕組みを定める知識・経験を有する職員がいない場合も含む)

(3)キャリアパス要件Ⅲを設けるための事務作業が煩雑であるため

(4)今後長期的に昇給の財源を維持・確保できるか懸念されるため

(5)介護職員の昇給の仕組みを設けることにより、職種間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため

 厚労省老健局老人保健課の担当者は、(1)は「賃金テーブルなどを作成し説明したものの、事業所内で合意が得られていないケース」を、(2)は「賃金テーブルなどの作成がそもそも困難なケース」、(3)は「昇給の仕組みと併せて人事評価基準なども構築する必要があり、そうした事務の煩雑さを吸収できないケース」、(4)は「経営面を考慮し、あえて加算(I)を算定しないケース」、(5)は「看護職などの給与を2万7000円までは引き上げたが、3万7000円までの引き上げは無理というケース」と補足説明しています。

 この選択肢について堀田聰子委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、「(4)と(5)は『昇給の仕組み構築そのものに合意が得られない』段階、(2)と(3)は『昇給の仕組み構築の意思はあるが、できない』段階、(1)は『昇給の仕組みを構築したものの、合意が得られない』段階と整理できそうだ。こうした段階が分かるように並べ替えるべき」と指摘。

 また藤井賢一郎委員(上智大学准教授)は、「(4)や(5)の理由で、(1)を選択してしまうケースもある。表現を工夫すべき」と指摘。また「介護報酬について悲観的に捉える事業所が多く、その観点で(4)を選択する事業所が多くなる可能性もある。キャリアパス要件IIIは、要件に合致すれば自動的に賃金が上がり、事業主側でのコントロールできない仕組みと言える。こうした点を踏まえて(4)を選択できるような表現に見直す必要がある」と要望しています。

今後、田中滋委員長(慶應義塾大学名誉教授)と厚労省で、意見を踏まえた修正を行い、近く親組織である介護給付費分科会に報告。そこで調査内容を確定し、▼本年(2017年)10月に調査実施▼来年(2018年)3月に結果公表(委員会や分科会に報告)―となります。

  
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