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ゲル充填人工乳房、自主回収品の「代替品」を迅速に薬事承認―厚労省

2019.10.9.(水)

ゲル充填人工乳房の埋め込み患者が悪性リンパ腫を発症したことを踏まえ、医療機器メーカーが製品を自主回収したため、我が国では保険適用されている「ゲル充填人工乳房」が存在しない状況となっていました。

しかし、乳がんで乳房切除等を受けた患者からの強い要望を受け、厚生労働省は「代替品」の審査を迅速に行うようPMDA(医薬品医療機器総合機構)に依頼。10月8日に薬事承認が行われました(厚労省のサイトはこちら)。

今後は、「迅速な保険適用」に期待が集まります。

ゲル充填人工乳房、因果関係不明だが「リンパ腫」発症の可能性で自主回収

 乳房再建術あるいは乳房増大術においてゲル充填人工乳房を用いることがあります。我が国では、2013年に▼ナトレル ブレスト・インプラント▼ナトレル 410 ブレスト・インプラント―が薬事承認され、2014年度の診療報酬改定で、乳がん等で乳房を全摘した患者等を対象に「ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術」が保険適用されています。

 しかし、本製品については因果関係の解明はなされていないものの、▼乳がん▼乳がん以外のがん▼未分化大細胞型リンパ腫(ALCL:Anaplastic large cell lymphoma)▼結合組織疾患/自己免疫疾患▼神経系疾患▼自殺―の各疾患等と「将来的には関連があると思われるリスクの可能性がある」ことが示されており、さらに海外では、▼乳がん▼脳腫瘍▼呼吸器がん▼肺がん▼子宮頸がん▼外陰がん▼胃がん▼白血病▼リンパ腫▼視覚、知覚、筋力、歩行、平衡感覚、思考力または記憶力困難などの神経系の症状▼多発性硬化症などの疾患―が報告されていました。

 また先般、「未承認のゲル充填人工乳房を植込んだ患者において、未分化大細胞型リンパ腫(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫:BIA-ALCL)の診断を受けた症例」が日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会から報告され、厚労省は「ナトレル ブレスト・インプラント」の製造販売メーカー(アラガン・ジャパン社)に、「使用上の注意」を改訂すること、および医療機関等へ適切な情報提供を行うことを依頼しました。

 さらにその後、米国FDA(食品医薬品局)が、「BIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)のリスクから新規患者を保護するため、BIOCELLと呼ばれる表面テクスチャード加工のブレスト・インプラントおよび組織拡張器を米国国内で自主回収する」ようAllergan社に要請。この決定を受け、我が国のアラガン・ジャパン社も「日本国内における製品の自主回収」を実施(今年(2019年)7月25日から)。

 この結果、我が国において「保険適用されたゲル充填人工乳房」が存在しない状況となってしましました。

 
 医療現場や患者からは「乳房再建術等の再開」に関する強い要望が出ており、これに応えるために今般、下記の代替品について迅速な薬事承認が実現したものです。今後の「迅速な保険適用」に期待が集まります。

▼ナトレル 133 ティッシュ・エキスパンダー(アラガン・ジャパン)
乳房再建術時に人工乳房の埋入を容易にするため、事前に乳房皮下または大胸筋下に一定期間埋め込み、乳房周辺部の皮膚およびその他の組織を拡張・伸展させる皮膚拡張器

▼ナトレル ブレスト・インプラント(アラガン・ジャパン)
 乳房の形状を修復または形成するために、乳房再建術または成人女性の乳房増大術に使用されるゲル充填人工乳房

 
 
 
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