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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

サンドスタチン皮下注、「先天性高インスリン血症に伴う低血糖」治療に保険診療で使用可―厚労省

2020.3.4.(水)

消化管ホルモン産生腫瘍に伴う諸症状の改善や、がん患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善などに用いる「オクトレオチド酢酸塩」(販売名:サンドスタチン皮下注用50µg、同100µg)について、新たに「先天性高インスリン血症に伴う低血糖(他剤による治療で効果が不十分な場合)」の治療に用いることを、保険診療上可能とする―。

厚生労働省は2月28日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日から保険診療に組み入れられています(厚労省のサイトはこちら)。

「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスを考慮

欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない―。こうした「ドラッグ・ラグ」は、最新の医療技術へのアクセスを阻害するものとして、かねてより問題視されています。

このため厚労省はドラッグ・ラグの解消に向けた取り組みを積極的に進めており、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行っています。また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で新薬創出・未承認薬解消等促進加算を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革では「制度化」を行いました。

さらに医療保険制度の中でドラッグ・ラグ解消に向けて強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「適応外使用とされている医薬品について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、翌日から自動的に保険収載する」という特例ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するため、医薬品は「効能・効果が認められた傷病の治療」以外に用いることはできません(仮に使用すれば自由診療となり、当該治療全体が全額患者負担となるのが原則)。「新たな傷病の治療に効果がある」と考えられる場合には、治験などを実施してエビデンスを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。安全性・有効性が確認されていない治療を、限られた公的財源(保険料、税)で賄うことは好ましくないからです。

しかし、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査を受けるとなれば、相当の時間がかかってしまい、この原則をあまりに厳格に適用すれば、「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(重篤な疾患であるほど、患者に酷な状況となる)。

そこで中医協は、「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記の特例ルールを創設。▼適応外使用であれば、既に人体への安全性は審査済であること▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められていること―に鑑みた特例ルールです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。

今般、この特例ルールにより次の医薬品を、適応外の傷病治療に用いることが保険診療上、認められました。

◎オクトレオチド酢酸塩(販売名:サンドスタチン皮下注用50µg、同100µg)

▽現在認められている効能・効果
・消化管ホルモン産生腫瘍(VIP産生腫瘍、カルチノイド症候群の特徴を示すカルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍)に伴う諸症状の改善
・先端巨大症・下垂体性巨人症(外科的処置、他剤による治療で効果が不十分な場合または施行が困難な場合)における成長ホルモン、ソマトメジン-C分泌過剰状態および諸症状の改善
・進行・再発がん患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善

▽今般、新たに認められた効能・効果
「先天性高インスリン血症に伴う低血糖(他剤による治療で効果が不十分な場合)」

▽追記される用法・用量
通常、1日量5µg/kgを3-4回に分けて皮下投与、または24時間持続皮下投与する。患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は「1日量25µg/kgまで」とする

▽追記される注意喚起
【効能・効果に関連する使用上の注意】
(1)高インスリン血性低血糖症治療剤「ジアゾキシド」治療で効果が不十分な場合に本剤投与を検討する
(2)「重症低血糖によって引き起こされる中枢神経症状に対する有効性」は認められていない

【用法・用量に関連する使用上の注意】
先天性高インスリン血症に伴う低血糖について、本剤の用量は、患者の▼低血糖状態の重症度▼血糖値▼臨床症状―に基づき、「最も少ない用量で効果が認められる」よう個別に調整し、増量は観察を十分に行いながら慎重に行う

【使用上の注意】
(1)新生児・乳児において「壊死性腸炎」が報告されており、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行う必要がある
(2)「成長遅延」が報告されており、小児への投与では定期的に身長、体重を測定する必要がある



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