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死亡前1年間の医療費・介護費、年齢よりも「死期」と強く関連―都健康長寿医療センター

2020.3.24.(火)

死亡前1年間の医療費・介護費は、患者の「年齢」ではなく、「死期」と大きく関係する―。

こういった研究結果を、東京都健康長寿医療センター研究所・石崎達郎研究部長らの研究グループ(以下、石崎研究グループ)が3月18日に公表しました(東京都健康長寿医療センター研究所のサイトはこちら)。

年齢階級別にみると、65-74歳>74-84歳>85歳以上の順で医療費が高い

我が国では未曽有の高齢化が進み、これがために医療費が膨張し、医療保険財政や国家財政を圧迫していると指摘されます。年齢と医療費との間には強い相関関係があるとされているためです。しかし、諸外国の研究では医療費との関連は、「年齢」よりも「死までの期間」であるとの研究結果もあります。

そこで石崎研究グループでは、福島県相馬市の「死亡した65歳以上高齢者」882名の医療レセプト・介護レセプトデータを用いて、▼年齢階級別(65-74歳、75-84歳、85歳以上)▼要介護状態の程度別(自立、要支援1-要介護3、要介護4以上)▼死亡時期別(死亡前12-10か月(T1)、死亡前9-7か月(T2)、死亡前6-4か月(T3)、死亡前3か月-死亡当月(T4))―に分析。そこから、次のようなことが明らかになっています。

【死亡前1年間にかかった1人あたり医療介護費の総額(年額)の平均】
▽年齢階級別にみると、65-74歳:395万円、75-84歳:273万円、85歳以上:238万円で、85歳以上が最も低い

▽要介護状態の程度別にみると、自立:244万円、要支援1-要介護3:278万円、要介護4以上:328万円で、自立が最も低い

ここからは、高齢者においては「年齢」と「1年間の医療費・介護費」との間には逆相関があり、「要介護状態の程度」と「1年間の医療費・介護費」との間に相関があるようにも見えます。

死亡前1年間の医療費と年齢との間にはそうかんはなさそうだ(健康長寿医療センター研究1 200318)



さらに、▼年齢▼要介護状態の程度▼死亡時期―のそれぞれが「四半期ごとの医療費・介護費の総額」に及ぼす影響を統計解析すると、次のような状況が明らかになりました(図表は単純集計)。

【年齢】
「85歳以上」が、「65-74歳」よりも医療費・介護費が44%低い

【要介護状態の程度】
「自立」に比べ、「要支援1-要介護3」では医療費・介護費が1.31倍高く、「要介護4以上」ででは1.65倍高い

【死亡時期】
死亡に近づくと医療費・介護費が高くなる傾向があり、死亡直前である「死亡前3か月-死亡当月」では、「死亡前12-10か月」よりも1.83倍高額である

死亡前医療費と年齢との間に相関はなく、要介護度との間には相関がありそうだ(健康長寿医療センター研究2 200318)



ここから、死亡前1年間の医療費・介護費は「年齢」ではなく、「死期」と大きく関係することが分かります。

ただし、医師をはじめとする医療従事者であっても「患者の死期」を1年前の時点で正確に予測することは不可能です。このため石崎研究グループでは、「高齢者の終末期医療・介護サービスの利用を制限すれば、死亡前の医療費・介護費の増加を抑制できる」との解釈はできないことを強調しています。



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