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7月豪雨で市町村事務が停滞し「期限切れの保険証」しかない場合でも、氏名や連絡先等の申告で保険診療を受診可能―厚労省

2020.7.31.(金)

保険診療において、患者は医療機関窓口で一部負担(所得・年齢により1-3割)のみを支払うことで、医療を受けることが可能です(残りの7-9割は、国民全員が毎月収める保険料を原資として、保険者から医療機関に支払いが行われる)。

このように保険診療を受けるためには、原則として、自身の加入する医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)の発行した被保険者証(保険証)を医療機関の窓口に示し、「自分は公的医療保険の加入者である」との資格証明をしなければなりません。医療機関サイドにすれば、患者の公的医療保険加入状況が曖昧なままでは、「この患者には1-3割の自己負担を請求するだけでよいのか?もし医療保険に加入していなければ10割請求となるのだが?」などの不安が生じ、事務が滞ってしまいかねません。

被保険者証を持参しわすれるなどして提示できない場合には、患者は一旦、医療費の全額を医療機関の窓口で支払い、後日、自分自身で医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請し、保険給付分(年齢や所得に応じて7-9割)を償還してもらうのが原則です。



しかし、今年(2020年)7月に九州地方等で生じた豪雨で被災された方の中には、「被保険者証」(保険証)を持つ余裕もなく、避難を余儀なくされた方も少なくないと思われます。被災され、日常生活への復帰の目途が立たない被災者に、上記の原則を適用することはあまりに酷です(また河川の氾濫等で被保険者証等が滅失してしまった方もおられる)。そこで厚生労働省は「特例措置」を設けることを7月4日に決定(厚労省事務連絡「令和2年7月3日からの大雨による災害に伴う被災者に係る被保険者証等の 提示等について」)。東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨、北海道地震、台風などで被災された方にも、同様の対応がとられています(関連記事はこちら)。

特例措置の具体的な内容は、被保険者証を持たずに避難したために、医療機関窓口に提示できない場合であっても、▼氏名▼生年月日▼連絡先(電話番号等)▼被用者保険(健保組合や協会けんぽ)の被保険者では「事業所名」(会社名)▼国民健康保険・後期高齢者医療制度(75歳以上の方が加入)の被保険者では「住所」▼国民健康保険組合では、住所と組合名―を医療機関の窓口で申し立てることで、保険診療を受けられるようにするものです。



ところで、被災地市町村の一部では「被保険者証等の交付手続き」に支障が出ているところがあります。この場合、被災していない住民の手元にも「期限切れの被保険者証」しか存在しなくなってしまい。

この点について厚労省は、7月30日に事務連絡「令和2年7月豪雨による災害に伴う被保険者証等の提示等における取扱いについて」を示し、「被保険者が被保険者証等を紛失あるいは家庭に残したまま避難している場合と同様に取り扱う」考えを明確にしました。

このような特例に沿って医療機関等を受診する方も少なくないと思われ、医療機関等においても十分な留意が必要です。

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