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地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなる、交流減少や町内会活動不参加は危険信号―都健康長寿医療センター

2020.8.7.(金)

地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなることが分かった。周囲との交流減少や町内会活動への不参加は、「社会的孤立」に向かう危険信号である―。

こういった研究結果を、東京都健康長寿医療センター研究所・大渕修一研究部長の研究グループ(以下、大渕研究グループ)が8月4日に公表しました(東京都健康長寿医療センター研究所のサイトはこちら)。

「調査への回答」状況を、「社会との繋がり」の指標に活用することが可能

これまでに都健康長寿医療センターでは、▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど▼身体機能低下▼抑うつ▼要介護状態―などのリスクが高い—などの研究成果を発表しています。

高齢化がますます進展する(2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度にはすべてが後期高齢者となる)中では、「社会的孤立をいかに防ぐか」が極めて重要な施策になると考えられます。

ところで、こうした社会的孤立はどのようにして生じるのでしょうか。大渕研究グループでは、「社会からの離脱」(これまで行っていた活動をやめた、外出が減り閉じこもりがちになったなど)は、「突然起こる」わけではなく、「段階があるのではないか」との仮説を立てました。

そのうえで、「社会からの段階的な離脱」を評価する指標として、「調査からの脱落の段階」に注目しています。公的機関等では、地域住民に対しさまざまな「調査」を行います。例えば、地域住民の健康状態等を把握するために「医療機関にかかているか、どのような傷病で、どの程度の頻度でかかるのか、投薬は受けたのか」「食事はとれているか、その内容はどのようなものか」「運動はしているのか、どのような内容を、どの程度の時間、どのような頻度で行っているのか」「毎日は楽しいか、沈んだ気分にならないか」といった事項について調査を行うことがあります。

こうした「調査への回答」を「社会との繋がり、社会参加」の1つと捉えれば、逆に「調査に参加しなくなる(離脱する)ことは、社会からの離脱・孤立を意味する」と考えることができます。調査には「郵送等に調査」「調査員が訪問して行う調査」などの種類があり、また調査内容が多いものから少ないものまで様々です。郵送等による調査や項目数の多い調査では「面倒で回答しない」ケースも少なくなく、これに回答・対応する高齢者は、「社会との繋がり・参加の意欲が強い」と考えることができます。一方、調査員が自宅等を訪問して行う調査は、相手が目の前にいるために「回答・対応しなければならない」という心理的圧迫があり、これに回答・対応しない高齢者は「社会との繋がり・参加の意欲が弱い」と考えることができます。

大渕研究グループでは、こうした考えのもとに「調査からの脱落の段階」を次のように設定しました。上の調査への対応ほど「社会との繋がり、社会参加の意欲が強い」と考えられ、下の調査に対応しない高齢者ほど「社会との繋がり、社会参加の意欲が弱い」と考えることになります。

▼郵送調査(調査項目数:24)

▼簡易調査(調査項目数:10)

▼はがき調査(調査項目数:5)

▼訪問調査

今般、東京都板橋区に居住する65-85歳の高齢者3696名に対し、追跡調査を行ったところ次のように、段階的に脱落者が発生しています。

▽3696名に対して、2年後に追跡郵送調査(24項目)を行ったところ、2361名(63.9%)が回答(脱落レベルゼロ)

▽郵送調査の未回答者966名に対して、簡易調査(10項目に調査項目を減少)を行ったところ、462名(47.8%)が回答(脱落レベル1)

▽簡易調査の未回答者499名に対して、はがき調査(5項目に調査項目を減少)を行ったところ、234名(46.9%)が回答(脱落レベル2)

▽はがき調査の未回答者261名に対し、調査員による訪問調査を実施したところ、84名(32.2%)が回答(脱落レベル3)

▽いずれの調査にも回答しなかった人は、101名であった(脱落レベル4)

「社会からの段階的な離脱」を評価する指標として、「調査からの脱落の段階」に注目(都健康長寿医療センター研究 200804)



さらに大渕研究グループでは、「脱落レベル」と「高齢者の心身状況」(初回郵送調査時の▼日常生活動作能力▼社会活動参加率▼主観的健康感▼主観的経済状況)とを比較したところ、「脱落レベルが高いほど、心身状況のレベルが低く、社会的孤立者が多い」傾向があることを発見。

例えば「脱落レベルゼロ」と比べて、▼脱落レベル1・2の人では「日常生活動作能力が低く、趣味活動に不参加である」こと▼脱落レベル3の人では「スポーツ活動へ不参加である」こと―、さらに、脱落レベル4の人では、「社会的に孤立しており、町内会活動へも不参加である」ことなどが明らかになりました。



これらを総括し、大渕研究グループでは、「周囲との交流の減少や町内会活動への不参加は、将来的な社会からの離脱の危険信号である」と警鐘をならしています。

例えば市町村で、こうした郵送・はがき・訪問など段階に分けた調査を行い、そこへの回答状況から、「どの高齢者が、どの脱落レベルにあり、社会からの離脱リスクがどの程度あるのか」を推測することができます。また「周囲との交流が少なくなった」り、「町内の活動などへの参加をしなくなった」利する高齢者については、「社会的孤立」になりつつあることが分かります。こした高齢者を速やかに発見し、民生委員や地域のボランティア等による働きかけ(例えば「通いの場」に一緒に参加するように促すなど)を行うことで、社会との繋がりを確保し、さらに要介護状態の防止・重度化防止などにつなげることが期待できそうです。

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