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新型コロナ対策 医療崩壊の真実

医療・介護サービスの標準化など進め、「1人当たり医療費・介護費の縮減」を図れ―経済財政諮問会議で有識者議員

2020.12.8.(火)

財政の健全化に向けて、社会保障費の伸びを抑えていくことが必要であり、そのために「1人当たり医療費・介護費」の地域差縮減に向けた取り組みを強力に推進せよ。例えば都道府県の権限強化、インセンティブ強化、医療・介護サービスの標準化などが重要ではないか―。

また経済再生に資する「予防・健康づくりの産業化」に向けた取り組みも推進する必要がある—。

12月4日に開催された経済財政諮問会議で、有識者議員からこうした提言が行われています。

予防・健康づくりの「産業化」等に向けた取り組みを推進せよ

経済財政諮問会議は、我が国の「財政を健全化」し、同時に「経済を再生」するために、毎年度「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太の方針)を策定します(骨太方針2020に関する記事はこちら)。現在、ここに「新型コロナウイルス感染症対策」が加わっており、難しい舵取りが求められています。

そうした中で財政の健全化を阻んでいる、つまり「財政赤字」をもたらしている最大の原因は、膨張し続ける社会保障費にあると指摘されます(関連記事はこちら)。

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため、今後、急速に医療・介護ニーズが増加していきます。その後2040年にかけて、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、支え手である現役世代人口が急速に減少していくことが分かっており、社会保障制度の基盤が極めて脆くなっていきます。

経済・財政の再生には、「社会保障費の膨張を抑える」(国民が負担可能な水準に抑える)とともに、「安定した社会保障制度を運用する」(確実なセーフティネットを整備する)ことが必要と言えます。

12月4日の会合では、民間議員(竹森俊平議員:慶應義塾大学経済学部教授、中西宏明議員:日立製作所取締役会長兼執行役、新浪剛史議員:サントリーホールディングス代表取締役社長、柳川範之議員:東京大学大学院経済学研究科教授)から社会保障制度改革に関して、(1)予防・健康づくりの産業化等(2)1人当たり医療費・介護費の地域差半減・縮減(3)医療・福祉サービスの生産性向上等―の大きく3項目の提言がなされました。

このうち(1)では、▼新技術を活用した血液検査等の特定健診等での活用▼データヘルス計画の標準化・共同化の推進など民間企業等の参入拡大に向けた制度改革▼民間委託を促す保険者へのインセンティブ強化、先進・優良事例の全国展開―などを例示し、取り組みのパッケージを早急に検討・作成すべきと提言しています。ヘルスケア分野における新たな産業を生み出し、経済の活性化を目指すものと言えるでしょう。

この点、臨時議員として出席した田村憲久厚生労働大臣は、▼PHR(国民1人1人が自分のヘルスケアデータを確認出来る仕組み)を行う民間事業者向けのガイドライン策定▼指先採血キットを一般人が使用する際の精度・実用性等に関する研究―などが進められている状況を紹介しています。

なお、PHRについては、すでに多くの民間企業が独自の開発を行っていますが、厚生労働省の「健康・医療・介護情報利活用検討会」において▼個人情報保護の必要性が高い▼電子カルテの二の舞を避ける(各企業が独自に工夫を凝らす中で、データの互換性がなくなってしまう)―などの点から、ガイドラインの策定が求められているものです。

1人当たり医療費・介護費の地域差縮減に向けた取り組み強化を

(2)は、従前から指摘されている論点です。2018年度の国民医療費を見ても、1人当たり医療費は、最高の高知県(45万2500円)と最低の神奈川県(30万100円)との間に1.51倍の格差があります。民間議員は、その背景として▼「病床の地域差」解消の遅れ▼医療費適正化計画の実効性の欠如▼都道府県の主体的機能強化とそのインセンティブの不十分さ▼医療サービスの標準化の遅れ―などを指摘し、次のような取り組みを強力に進めることを求めています。

▽地域医療構想の実現や後発医薬品の使用割合などを必須目標として医療費適正化計画に盛り込む
▽都道府県へのインセンティブ強化
▽毎年度の医療費見込みの改訂やKPI検証と必要な取り組みへの反映
▽保険者協議会の役割強化
▽後期高齢者医療制度の都道府県への移管など、都道府県知事の役割や権限の強化
▽医療サービスの標準化推進

「1人当たり医療費」「人口当たりベッド数」「平均在院日数」との間には一定相関があります。多いベッドを埋めるために、入院期間が長くなり、結果として1人当たり医療費が高くなる、という関係が見えてきます。医療費は国民全員が公費・保険料の形で負担しており、地域で完結しているわけではありません。つまり「高い医療費の地域」では相対的に負担が低くなり、「低い医療費の地域」では相対的に負担が高くなっているのです。これは「公平性」という面でも大きな問題であり、地域差縮減に向けた取り組みの強化が強く求められます。田村厚労相はこの点、「2024年度からの第4期医療費適正化計画に向けて、▼国と地方が連携して医療費適正化のために取り組む事項▼効果的なPDCA管理ができる新たな仕組み—を、都道府県の意見も聞きながら検討していく」考えを強調しています。

1人当たり医療費の地域差について(その1)(経済財政諮問会議1 201204)

1人当たり医療費の地域差について(その2)(経済財政諮問会議2 201204)



この地域差は、介護分野でも同様にあります。2018年度の「介護保険事業状況報告(年報)」によれば、1人当たり介護給付費は、最高の島根県(31万800円)と最低の埼玉県(20万9600円)との間に1.48倍の格差があります。

介護保険は市町村単位の財政運営が行われていますが、極端の財政の不均衡を是正するための調整(負担の小さい地域でより高く負担し、負担の大きな地域の軽減を行う)が行われており、やはり「地位僅差の縮減に向けた取り組み」を進める必要があります。

民間議員は「1人当たり介護費の地域差縮減に向けた取り組みは医療よりも遅れている」とし、次のような取り組みを強力に進めることを求めています。

▽既存の介護給付費適正化事業の効果検証、ケアプラン点検へのAI活用など、より適正化効果の高い取り組みに重点化し、市町村の実施状況を見える化する
▽より効果の高い給付適正化事業、軽度者の要介護認定率の地域差縮小のための予防推進、都道府県単位の介護給付費適正化計画の策定など、1人当たり介護費の地域差縮減に寄与する取り組みを具体化し、進捗状況や原因を検証可能なKPIを設定する
▽都道府県、市町村に対する保険者インセンティブの評価指標について、上記のKPIに重点化する
▽科学的介護データベース(CHASE)を積極的に活用し、自立支援や重度化防止につながる質の高い介護サービスに向けた標準化を推進する

ただし、注意しなければならないのは「1人当たり介護費の低い地域では、介護保険施設等が整っておらず、医療療養病床などが機能補填をしている」可能性もある点です。つまり、単純に「1人当たり介護費が高い=介護サービスに無駄がある」「1人当たり介護費が高い=効率的で適切な介護サービスが行われている」という構図にはないのです。

医療と介護を合わせた「1人当たり医療・介護費」に基づく分析などをさらに進める必要があるでしょう。

生産性向上に向けて、ロボットやAI等の活用を推進せよ

また(3)の生産性向上は、人手不足解消においても非常に重要な視点です。民間議員は、▼全国的に介護ロボットやAIなどを実装するために、地域医療介護総合確保基金などによる補助制度を抜本的に強化する▼レセプトと所得・出生・死亡等のデータとの連携に向けた工程を具体化する―ことなどを求めています。

この点について田村厚労相は、▼見守りセンサーやインカム等をパッケージで導入する介護事業所等への補助率拡充▼介護ロボットの実用化推進に向けたオンライン相談の充実、大規模実証への支援強化▼保健医療分野と国民生活に関するデータの連結解析―などを検討していることを説明しています。



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