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2022年度診療報酬改定に向け「医療経済実態調査」論議スタート、単月対象に2021・20・19年の3か年調査も—中医協

2021.1.13.(水)

2022年度の次期診療報酬改定に向けて「医療経済実態調査」を行うことになるが、医療機関経営には▼2020年度診療報酬改定▼新型コロナウイルス感染症―の双方が影響しており、両者を切り分けるために、単月(6月・5月・4月のいずれか)を対象として、2021年・20年・19年の3か年調査を行うことを検討してはどうか—。

1月13日に開催された中央社会保険医療協議会・調査実施小委員会でこういった議論が始まりました。7月に調査を行うこととなり、調査内容の設計論議が今後、活発化していきます。

調査精度上げるため、有効回答率アップに向けた工夫も

2022年度には診療報酬改定が控えており、中医協でこれから議論を行っていきます。その素材の1つとして「医療経済実態調査」(医療機関等調査と保険者調査とがあるが、ここでは医療機関等調査を医療経済実態調査と呼ぶこととする)があります。

診療報酬は保険医療機関の収入の中心となるため、診療報酬改定を考えるにあたり「医療機関などの経営がどのような状況にあるのか。前回(ここでは2020年度)の診療報酬改定が医療機関等の経営にどのような影響を及ぼしているのか」を捉えることが不可欠なためです。通常であれば、「2019年度」(改定前)と「2020年度」(改定後)の経営状況を調べ、「2020年度改定後に医療機関等の経営は上向いているのか?下降しているのか?」を把握することになります。

ただし、2020年度改定の適用と前後して、我が国でも新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっており、診療報酬改定以上に医療機関経営に大きな影響を及ぼしています。通常どおりの調査では「2020年度改定後の医療機関経営への影響が、改定によるものか、新型コロナウイルス感染症によるものか」を判別することが困難です。

また、新型コロナウイルス感染症により多くの医療機関では経営にマイナス影響が出ていることを踏まえ、政府は各種の補助(空床確保、備品等の整備など)を行っています。これは医療機関にとっては「収益」となりますが、他の補助金と一緒に考えるべきではないでしょう。

さらに、医療機関等と一口に言っても、「新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている病院」と、それ以外の病院とでは経営状況にも差が出ていることが強く推察されます。

こうした点を踏まえて厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の山田章平室長は、今般の医療経済実態調査について、主に次の3つの工夫を行う考えを提示しました。

(1)通常の「年度調査」に加えて「単月調査」を行い、新型コロナウイルス感染症の影響と2020年度診療報酬改定の影響との分離を試みる
(2)新型コロナウイルス感染症に関連する補助金収益を、従来の補助金等と分けて把握する
(3)新型コロナウイルス感染症患者の受け入れの「有無」による経営状況を把握する



このうち(1)は、通常の「2019年度と2020年度の収支状況」(通年調査)のほかに、新型コロナウイルス感染症の影響が比較的少ない月を対象に「2021年・2020年・2019年」の3か年調査を行ってはどうか、という工夫です。

今後の新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めて、▼「6月」(2021年6月・20年6月・19年6月)▼「5月」(2021年5月・20年5月・19年5月)▼「4月」(2021年4月・20年4月・19年4月)―のいずれかの収支状況を見ることが考えられます。例えば、この5月に新型コロナウイルス感染症が仮に一定程度収まっていれば、「5月」分を対象に3か年調査を行います。すると、▼2021年5月:新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなり、「2020年度改定の影響」が色濃く現れている▼2020年5月:新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く現れている▼2019年5月:2020年度改定前(当然、影響はゼロ)―と見做すことができ、「2020年度改定の影響」を一定程度把握することができると考えられるのです。

この工夫に対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「単月調査の意味は大きい。看護必要度などの経過措置が延長され、2021年度に入ってからの医療機関等の状況を見る必要がある」と歓迎の意を示しましたが、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)や池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)らは「医療機関等の負担が大きくなり、回答率が下がってしまうのではないか」との懸念を示しています。山田保険医療企画調査室長は「単月調査に向けた準備を進めさせてほしい。実際に単月調査を行うのか、調査対象月をどうするのかは、今後の新型コロナウイルス感染症の動向を見ながら改めて中医協で検討してもらう」と要請しています。

なお、「単月調査」への回答がないケースでも、通常の「通年調査」に対する回答があれば、後者については有効回答と見做される見込みです。



関連して城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「新型コロナウイルス感染症が、医療機関等の会計年度にも関係してくる」点を指摘しています。多くの医療機関では「4月-3月」を会計年度に設定していますが、この場合、通年調査の対象は「2019年4月-2020年3月」と「2020年4-2021年3月」となり、両者を比較することになります。2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出ることになります。

しかし、例えば「5月-4月」を会計年度に設定している医療機関等では、通年調査は「2018年5月-2019年4月」と「2019年5月-2020年4月」とが対象となり(2021年3月末までに終了する直近2事業年(度)が対象となるため)、新型コロナウイルス感染症の影響が「過少評価」(数か月分のみとなってしまう)されることになってしまうのです。山田保険医療企画調査室長もこの点について「工夫する」考えを明確にしています。



また、医療機関の収益に関しては、これまでに実施されている各種の診療報酬臨時特例を無視することもできません。この点、厚労省保険局医療課の井内努課長は「臨時特例の算定回数などを集計しており、医療経済実態調査結果と合わせて中医協で議論してもらう。ただし、通常の診療報酬と臨時特例とを厳密に切り分けることは難しい」とコメントしています。今秋に調査結果を見ながら「どう解釈するべきか」を検討していくことになるでしょう。



一方、山田保険医療企画調査室長は、医療経済実態調査の「回収率向上」に向けて次のような工夫を行う考えも提示しました。回収率は50%台半ばですが、回収率をさらに高めることで「実態把握の制度が高まる」ためです。

▽回答医療機関への「経営状況フィードバック」について、事前に「フィードバックが行われる」旨をPRする(前回調査では「事後にフィードバックする」のみであった)

▽調査票の体裁(レイアウトや書体など)をさらに工夫し、分かりやすく記入しやすい調査票とする

▽電子調査票(Excel版)の利用を促進する(利用案内のレイアウト工夫や、メリットのPRなど)

▽医療法人の事業報告書等の活用を進める



なお、回答率を詳しく見ると、「国公立・公的医療機関では高いが、民間医療機関では低い」傾向があり、必然的に「民間病院が多い都市部で比較的低い」傾向が伺えます。都市部では新型コロナウイルス感染症の影響が大きなことから、地域間の回答バランス如何によっては、集計結果にもバイアスが生じることになります。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)もこの点を指摘しています。

民間医療機関への調査協力を強く求めていくことが重要でしょう。

医療経済実態調査に関する開設主体別の有効回答率(中医調査実施小委1 210113)

医療経済実態調査に関する都道府県別の有効回答率(中医調査実施小委2 210113)

2022年度から「不妊治療の保険適用」に向け、中医協でもエビデンス踏まえた議論

なお、同日に開催された中医協・総会では、2021年度の薬価改定の詳細(昨年(2020年)末に固められた骨子を具現化したもの)を了承したほか、「不妊治療の保険適用」に関する議論等の報告を受けました。

不妊治療については、従前より▼男性の精管閉塞▼女性の卵管癒着やホルモン異常—などについては、個別の治療法が保険適用されてきていますが、菅義偉内閣総理大臣、安倍晋三前首相が「不妊治療の保険適用を強力に進める」方針を打ち出したことを受け、さらなる保険適用が推進されますす。

この点、社会保障審議会・医療保険部会では、昨年(2020年)末に、▼助成金を今年(2021年)1月から拡充する▼不妊治療を実施する医療機関や国民全般に対する実態調査を行う(この3月に詳細報告が行われる)▼関係学会においてエビデンスを踏まえた不妊治療実施ガイドラインを策定する▼ガイドライン等を踏まえて中医協で議論を進め、2022年度から保険適用を行う—といった工程表を取りまとめました(関連記事はこちら)。

不妊治療の保険適用に関する工程表(中医協総会3 210113)



公費による治療費助成が行われている▼体外受精▼顕微授精▼顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)―といった夫婦間の不妊治療や、いまだ取り扱いが決まっていない▼第三者からの精子・卵子提供▼代理懐胎(いわゆる代理母)―などについて、「どういった部分を保険適用するのか」、また「保険適用を目指して保険外併用療養制度をどう活用するのか」(例えば保険適用されていない医薬品については自費で、それ以外の治療について保険診療を認めるなど)などを議論していくことになるでしょう。

不妊治療と医療保険との関係(医療保険部会(2)1 201014)

不妊治療の内容(医療保険部会(2)2 201014)



なお、不妊治療実施医療機関(86施設)を対象に行った実態調査結果の速報値はすでに示されており、体外受精の価格は、▼新鮮胚移植では最高89万円、最低16万円(中央値は37-51万円)▼凍結胚移植では最高98万円、最低21万円(中央値は43-58万円)―と大きなバラつきがあることが分かっています。この3月(2021年3月)には詳細な結果報告が行われ、また今夏(2021年夏)には学会によるガイドラインが示されます。それらを踏まえて、中医協でどういった議論が行われるのか注目が集まります。

不妊治療に関する実態調査速報(中医協総会4 210113)



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