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2019年度に看護職の離職率が上昇、夜勤形態等の見直しがキーポイントの1つ—日看協

2021.4.7.(水)

看護職員の離職率を見ると、正規雇用・新卒ともに大きく上昇(悪化)してしまっている―。

また看護補助者、とりわけ「正規職員」の確保に多くの病院で苦労している―。

夜勤形態・月平均夜勤回数と離職率との間には一定の関係があり、「三交代制で月夜勤8回以下」の病院では、その他に比べて離職率が低い―。

小児患者が一般病院に入院するケースが増え、「小児看護」に関する課題が浮上してきている―。

日本看護協会が3月26日に公表した「2020年 病院看護実態調査」結果速報から、このような状況が明らかになりました(日看協のサイトはこちら)。

看護職員の離職率、2018年度から19年度にかけて正規雇用・新卒とも「大きく上昇」

日看協は毎年、病院看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などを調査(病院看護実態調査)しています(前年の状況に関する記事はこちらこちら)。

2020年調査では、(1)看護職員の離職率(2)看護補助者の状況(3)夜勤状況(4)外来看護(5)小児看護―などに焦点を合わせて調査が行われました。ポイントを絞って調査結果を眺めてみます。



まず(1)の離職率に関する調査です。

2022年からいわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年にはすべて後期高齢者となります。このため、地域の医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者の増加スピードは鈍化するものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少するため、「医療・介護提供体制の確保」が極めて重大な課題の1つとなります。

この点、2019年度における看護職の離職率を見ると、▼正規雇用で11.5%(前年度から0.8ポイント上昇)▼新卒で8.6%(同0.8ポイント上昇)―となっており、過去10年間で最も高い数値となっています。2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響もあり、「今後の動向」を注視していく必要があるでしょう。

離職率の推移(2020病院看護実態調査1 210326)



病院の規模別に見ると、▼99床以下:正規雇用13.5%(前年度から2.0ポイント上昇)・新卒14.8%(同3.5ポイント上昇)▼100-199床:正規雇用12.9%(同1.4ポイント上昇)・新卒10.2%(同1.7ポイント上昇)▼200-299床:正規雇用12.4%(同1.4ポイント上昇)・新卒8.2%(同0.3ポイント上昇)▼300-399床:正規雇用11.8%(同1.2ポイント上昇)・新卒8.0%(同1.2ポイント上昇)▼400-499床:正規雇用10.0%(同0.2ポイント低下)・新卒7.6%(同0.7ポイント低下)▼500床以上:正規雇用10.7%(同0.3ポイント上昇)・新卒8.5%(同1.1ポイント上昇)―という状況です。概ね「小規模になるほど離職率が高い」状況に変化はありませんが、小規模病院で離職率が大きく跳ね上がっている点が気になります。

また、「離職率の高い病院」が増えている状況も一目瞭然です。今後の状況を注視していく必要があります。

病床規模と離職率(2020病院看護実態調査2 210326)



あわせて設置主体別に見ると、離職率が高いのは、正規雇用では▼個人:20.3%(前年度に比べて6.2ポイント上昇)▼その他公的(日赤や済生会など以外):17.7%(同0.7ポイント上昇)▼済生会:14.9%(同2.8ポイント上昇)―など、新卒では▼個人:20.8%(同15.8ポイント増)▼済生会:11.3%(同0.3ポイント低下)▼私立学校法人:10.2%(同3.2ポイント上昇)―などです。

逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼公立(自治体立、地方独立行政法人など):8.5%(前年度に比べ0.7ポイント上昇)▼会社:8.9%(同0.7ポイント上昇)▼日赤:9.4%(同0.6ポイント上昇)―など、新卒では▼その他公的:4.9%(同0.9ポイント上昇)▼厚生連:5.7%(同0.8ポイント低下)▼会社:5.7%(同0.9ポイント低下)―などとなりました。

設立母体別の離職率(2020病院看護実態調査3 210326)



さらに都道府県別に見ると、離職率が高いのは、正規雇用では▼東京都:14.9%(前年度から0.4ポイント上昇)▼千葉県:14.3%(同1.5ポイント上昇)▼兵庫県:14.2%(同1.6ポイント上昇)―など、新卒では▼愛媛県:12.7%(同0.5ポイント上昇)▼香川県:12.2%(同5.6ポイント上昇)▼東京都:12.1%(同1.5ポイント上昇)―などです。

逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼岩手県:5.6%(前年度に比べ0.8ポイント上昇)▼秋田県:6.7%(同0.6ポイント低下)―など、新卒では▼山形県:3.1%(同4.9ポイント低下)▼富山県:3.3%(同0.3ポイント低下)▼福井県:3.4%(同2.8ポイント上昇)―などとなっています。

正規雇用では、東京や大阪などの大都市とその周辺で高く、「転職しやすさ」が離職率に大きく関係しているようです。

看護補助者、「正規職員」の確保に多くの病院で苦労

次に(2)の「看護補助者の状況」を見てみましょう。

まず100床当たりの看護補助者数は、全体では正規8.4人、非正規4.6人で、正規割合は64.9%となりました。病院の病床規模別に見ると、「小規模病院で看護補助者配置が多く、正規割合も高い」ことが伺えます。大規模病院では「看護師等の資格を持ちながら看護補助業務を行う」いわゆる「みなし看護補助」の割合が高いことが、この裏返しとして存在すると考えられます。

看護補助者の状況(2020病院看護実態調査4 210326)



また看護補助者について「採用したい人数」に対する「実際の採用人数」の割合を見ると正規では76.7%にとどまっています。一方、非正規では105.1%となっているため、「看護補助のなり手」そのものが大きく不足しているわけではなさそうです。病院では、看護補助者確保のために「研修の充実」「意見を吸い上げる場や仕組みの構築」などに取り組んでいますが、「給与引き上げ」は26.3%にとどまっています。今後「看護補助者確保のために、どのような取り組みが効果的なのか」の調査研究を行うことも重要でしょう。

三交代制で平均夜勤回数が月8回以下の病院では離職率が低い

次に(3)の「夜勤の状況」に目を移してみます。

夜勤の形態は、▼二交代制のみ:66.7%▼二交代制と三交代制のミックス:17.0%▼三交代制のみ:14.6%—などという状況です。

夜勤形態の状況(2020病院看護実態調査5 210326)



夜勤形態と離職率との関係を見ると、「三交代制のみ」で低く、「二交代制のみ」で高いことが伺えます。

夜勤形態と離職率との関係(2020病院看護実態調査6 210326)



また、月夜勤平均回数を見ると、次のような状況です。

▽夜勤形態別では、二交代制のみでは4.7回、三交代制のみで7.8回

▽夜勤回数と離職率との関係を見ると、「三交代制で月8回以内」の病院で、顕著に離職率が低い

夜勤形態・夜勤回数と離職率との関係(2020病院看護実態調査7 210326)



夜勤のみが離職率を左右するわけではありませんが、離職率の高さに悩む病院では「夜勤形態の見直し」を検討することも重要です。



なお、▼療養病棟▼回復期リハビリ病棟▼地域包括ケア病棟―における「月平均夜勤時間が72時間を超過してしまう看護職」の割合を見ると、「看護職員を加配している」病棟で高くなっていることが分かりました。さらなる調査・分析が待たれます。

療養・回リハ・地ケアにおける「月平均夜勤が72時間を超過する看護職」の割合(2020病院看護実態調査8 210326)

一般病院への小児患者入院が増加する中で「小児看護における課題」も浮上

また(4)では「看護外来」(専門知識・技術を持つ看護師が、通院治療中の患者・家族から療養生活に関する相談を受ける外来)の状況を見ており、28.4%の病院で設置が行われています。▼ストーマ・スキンケア▼糖尿病(フットケア)▼がん看護相談▼助産師外来―などが多くなっています。看護外来は、患者の療養生活をサポートするうえで非常に重要であることはもちろん、「医師の業務負担軽減」にも大きな意味を持ちます。開設に向けた積極的な検討に期待が集まります。



一方(5)の小児看護について見てみると、27.6%の病院で「小児と成人とが混在する病棟」が設置されています。

そこでは「小児を担当する看護師を決めている」ところが20.6%、「病棟のすべての看護師が小児看護にあたっている」ところが73.4%、「小児専門チームを作っている」と頃は3.9%という状況です。

「小児と成人とが混在する病棟」の課題としては、▼小児看護に関する看護職への教育や研修▼親への対応▼小児の成長発達に合わせた看護の提供▼小児にも成人にも対応できる看護職のチーム編成—などがあがっており、また「小児の在宅医療」を支援するにあたっての課題としては、▼小児対応の訪問看護事業所が少ない▼対応困難事例が増加している▼行政機関との連携が難しい▼転院先が不足している―ことなどが浮かび上がってきています。

少子化が進み、小児科標榜病院が減少する中では、「一般病院に小児患者が入院する」ケースが増加してきます。上記の課題を1病院で解決することは困難であり、都道府県と各病院、さらに看護協会などが連携して、課題解決に向けた方策を検討する必要があります。



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