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72時間超の夜勤する看護師が多い病院では、離職率も高い—日看協

2017.4.5.(水)

 1か月当たり72時間超の夜勤をする看護師の割合が高い施設では、離職率も高い―。

 日本看護協会が4日に公表した「2016年 病院看護実態調査」結果速報から、このような状況が明らかになりました(日看協のサイトはこちら)。

 また円滑な退院支援のために新設された「訪問看護同行加算」を算定している病院の割合は6.9%にとどまっており、算定上の課題として「日程調整の難しさ」などがあることも分かりました。

他院後訪問指導料の算定割合は12.7%、うち半数弱は訪問看護同行加算を算定せず

 日看協は毎年、病院看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などを調査(病院看護実態調査)しています(前年の状況はこちら)。

 今般の調査(2016年調査)では、2016年度の前回診療報酬改定後の状況について、▼退院後訪問指導料▼訪問看護同行加算▼認知症ケア加算—の3つの新加算にフォーカスを併せて調査しています。

 退院後訪問指導料(B007-2)は、患者の退院から直後(1か月間)に、入院医療機関の看護師などが患家などを訪問し、患者や在宅療養支援を行う人(家族など)に対して、在宅療養上の指導を行うことを評価(1回580点、5回を限度)する点数です。患者が安心して退院し、在宅療養へ移行することを目指す「退院支援」の一環となるものです(関連記事はこちら)。

 日看協が、病院の看護部長(3549施設)を対象に指導料の算定状況を聞いたところ、算定病院は452施設・12.7%にとどまっていることが分かりました。訪問指導を行う看護職員を確保できる大規模な病院で、算定割合が高くなっています。算定上のハードルとして「訪問指導にあたる看護師の確保」をあげる病院が6割近くに上るほか、「訪問指導を行うための看護師の教育・研修」に難儀している病院も半数近くあります。

 ただし算定病院では、退院後訪問指導を実施した結果、▼訪問指導を行う看護師のスキルアップ▼在宅療養への円滑な移行▼訪問看護ステーションなどへの円滑な引き継ぎ—という効果があったと回答しており、退院支援の強化にとって重要な診療報酬項目と言えます。

退院後訪問指導料を算定することで、「看護師のスキルアップ」や「在宅への円滑な移行」などの効果がある

退院後訪問指導料を算定することで、「看護師のスキルアップ」や「在宅への円滑な移行」などの効果がある

 

 また退院後訪問指導料の加算である「訪問看護同行加算」(退院後1回、20点)を算定している病院は246施設で、回答病院全体の6.9%、退院後訪問指導料算定病院の54.4%にとどまっています。この加算は、上記の在宅療養の指導について「在宅療養を担う訪問看護ステーションまたは他の保険医療機関の看護師などと同行して行う」ことを評価するものです。

 病院側は「同行訪問の日程調整などが難しい」「退院後に訪問看護の利用につながるケースが少ない」ことを課題にあげていますが、入院医療機関の看護師と訪問看護ステーションの看護師が同行して訪問指導を行うことで、▼患者の安心感が一層高まる▼看護師間の情報共有がさらに円滑に進み、深化する―ことが期待されるため、積極的な算定とあわせて、2018年度の次期改定での対応(要件の見直しなど)も求められそうです。なお、「加算の点数(20点)が低すぎる」との回答は1割程度にとどまっています。

訪問看護同行加算を算定する上での課題として「日程調整の難しさ」などがあがっている

訪問看護同行加算を算定する上での課題として「日程調整の難しさ」などがあがっている

認知症ケア加算、認知症認定看護師の配置などがハードルに

 認知症ケア加算は、身体疾患で入院した認知症患者に対し、認知症の悪化予防や円滑な身体疾患治療に向けた環境調整などに関する計画を立て、それに基づいた必要なサポートを行うことを評価する点数です。認知症ケアチームを設置し、チームと病棟スタッフが連携するなどの要件を満たす場合には加算1(入院から14日までは1日につき150点、15日以降は1日につき30点)が、病棟スタッフのみで実施する場合には加算2(同14日までは1日につき30点、15日以降は1日につき10点)を算定できます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 今般の調査では、全体の24.4%に当たる866施設で加算を算定しており、うち加算1が185施設(加算算定病院の21.4%)、加算2が681施設(同78.6%)となっています。高齢化の進展に伴い認知症患者が、今後急増していくことから、厚労省は「全病棟で加算1を算定してほしい」と期待していますが(関連記事はこちら)、病院側は▼認知症ケアに関する手順書の整備▼認知症看護認定看護師などの配置▼地域で看護師の研修受講機会が少ない—ことから加算の要件を満たせないと回答しています。今後、中央社会保険医療協議会で、適切な認知症ケアの実施と、病院の実態とのバランスを考慮し、施設基準や算定要件の見直しなどが検討される可能性もあります。

認知症ケア加算のハードルとして「手順書の整備」や「認知症看護認定看護師配置」をあげる声が多い

認知症ケア加算のハードルとして「手順書の整備」や「認知症看護認定看護師配置」をあげる声が多い

看護師の離職率、小規模病院や個人病院で高い傾向

 次に看護職員の離職率を見ると、2015年度には常勤で10.9%(前年度に比べて0.1ポイント増)、新卒で7.8%(同0.3ポイント増)であったことが分かりました。経年的に見て大きな変動はありません。

 病院の規模別では「小規模になるほど離職率が高い」状況は変わっていません。教育・研修体制などの職場環境に由来する部分が大きいと考えられます。

 また設置主体別では、常勤・新卒ともに個人病院が際立って高くなっており、その一方で常勤では都道府県・市町村立で、新卒では(北海道社会事業協会を除くと)国立大学法人立や社会福祉法人立で低くなっています。給与面なども含めた職場環境とクロスした詳細な分析が期待されます。

看護師の離職率を設置主体別にみると、大きなバラつきがあることが分かる

看護師の離職率を設置主体別にみると、大きなバラつきがあることが分かる

 

 さらに都道府県別に見ると、▼東京都(14.4%)▼神奈川県(13.9%)▼大阪府(13.1%)▼埼玉県(12.7%)―など大都市部で高い状況も再認識できます。「転職のしやすさ」という要素も、離職率に大きく関係しているようです。

看護職員の平均給与は伸びているが、基本給は前年を割り込む

 一方、看護職員の平均給与を見てみると、次のようになっています。

▼2017年度採用予定の新卒の初任給は、大卒で27万1694円(前年度に比べて1906円増)、高卒+3年課程卒で26万3131円(同1118円増)

▼同じく基本給は、大卒で20万5686円(同173円減)、高卒+3年課程卒で19万8668円(同109円減)

▼勤続10年・非管理職の給与は31万9685円(同429円増)、基本給は24万4024円(同1402円減)

看護職員の給与は前年より上昇しているが、基本給は逆にさがっている

看護職員の給与は前年より上昇しているが、基本給は逆にさがっている

72時間超の夜勤者が多いほど、離職率も高くなる

 また、2016年度改定で大きな注目を集めた「1か月あたり夜勤時間」を見ると、72時間超が34.8%(72.1-80時間が14.5%、80.1-96時間が14.7%、96.1時間以上が5.6%)となり、4年前の調査に比べて夜勤時間が増加している状況が伺えます。さらに夜勤看護職員に占める「月夜勤時間数が72時間超の看護職員」の割合が高いほど、離職率が高いことも分かりました。「働き方改革実行計画」も決定され、今後、医療職における労働の在り方を根本から議論する必要がありそうです(関連記事はこちらこちら)。

72時間超の看護職員の割合が高い病院ほど、離職率が高い傾向が伺える

72時間超の看護職員の割合が高い病院ほど、離職率が高い傾向が伺える

 

 なお、夜勤手当の平均額は、▼二交代制夜勤で1万772円(前年より61円増)▼三交代制夜勤で5023円(同70円増)▼三交代制準夜勤で4076円(同93円増)―という状況です。

  
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