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2019年度の特定健診実施率55.6%・特定保健指導実施率23.2%、向上しているが「さらなる一手」を―厚労省

2021.6.15.(火)

40歳以上の人を対象とした特定健康診査(いわゆるメタボ健診、特定健診)の実施率は、2019年度には55.6%。着実に向上してきているが、国の掲げる目標値「70%以上」にはまだまだ及ばない―。

また特定保健指導の実施率は同じく23.2%にとどまっているが、小規模な国保や単一型の健康保険組合では比較的高い―。

こうした状況が、厚生労働省がこのほど公表した2019年度の「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

特定健診、「被扶養者や国保加入者への受診勧奨」強化が依然として大きな課題

糖尿病や高血圧症などの、いわゆる「生活習慣病」の有病者・予備群が増加していることを踏まえ、2008年度から40歳以上74歳以下の人を対象に特定健診が実施されており、▼服薬歴や喫煙歴▼身長・体重・BMI(Body Mass Index)・腹囲▼血圧▼尿(尿糖・尿タンパク)▼血液(脂質・血糖・肝機能)―などが健診項目となっています。

公的医療保険の保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)には特定健診の実施が義務付けられていますが、必ずしも十分とは言えない状況が続いています。2019年度の特定健診実施状況を見ると、対象者約5380万人に対して受診者は約2994万人で、実施率は55.6%でした。前年度に比べて0.9ポイント、実施初年度(2008年度)に比べて16.7ポイント上昇しており、「着実に向上している」ことは伺えますが、国の掲げる目標値「70%以上」達成には、まだまだ遠い道のりがあります。

また、2020年度には新型コロナウイルス感染症が全国で蔓延し、感染拡大を抑えるために「健康診査の延期・中止」などが相次いでおり、実施率は大きく低下する可能性があります。もちろん、「特定健診の実施」そのものが目的ではなく、「生活習慣病の予防、早期対応による健康寿命の延伸」が主目的である点にも留意が必要です。

2019年度の実施率を年齢階級別に見ると、全体(男女計)では、▼45-49歳:61.2%(前年度に比べて1.1ポイント増)▼50-54歳:61.1%(同0.9ポイント増)▼40-44歳:60.8%(同1.0ポイント増)▼55-59歳:60.6%(同1.0ポイント増)—で比較的高く、▼70-74歳:43.3%(同0.2ポイント増)▼65-69歳:46.2%(同0.8ポイント増)▼60-64歳:53.7%(同1.3ポイント増)―で低くなっています。60歳を過ぎると、実施率が下がる背景には「企業を定年退職して、企業が毎年実施している検診(特定健診を兼ねている)を実施できなくなる」ことがありそうです。一般的に、企業に勤めている間には、健康保険組合や協会健保に加入し、定年等で退職した後は国民健康保険に加入します。後述するように定年等で退職した者の加入する「国保」では特定健診実施率が低く、「実施率向上」に向けた取り組みに、これまで以上に力を注ぐことが求められています。



また、男女別に見ると、40-64歳の年齢区分で「女性への特定健診実施率が男性に比べて、著しく低い」ことも分かります。ここにも「退職等で企業の検診を受けることがなくなる」ことが背景にあると考えられます。

性・年齢階級別の特定健診実施率を追うと、着実に上昇している(その1)

性・年齢階級別の特定健診実施率を追うと、着実に上昇している(その2)



特定健診の実施主体は、前述のとおり健保組合や協会けんぽ、市町村国保などの医療保険者です。保険者別の実施率を見ると、最も高いのは、大企業の会社員とその家族が加入する単一健保組合の81.0%(前年度に比べて0.3ポイント増)。次いで、▼公務員などの加入する共済組合の79.5%(同0.3ポイント増)▼同一業種の企業等が合同して設立する総合健保組合の75.3%(同1.5ポイント増)—などと続きます。

逆に、実施率が低いのは、市町村国保の38.0%(同0.1ポイント増)で、とくに大規模な市町村の運営する国保では29.2%で、前年度から唯一低下(0.8ポイント減)しています。

保険者別の特定健診実施率を追うと、着実に上昇しているが、保険者間でバラつきのあることがわかる



上述のとおり、若年世代では企業等に務める人が多く、企業等の実施する毎年の検診として特定健診を受ける機会が確保されるとともに、企業等サイドから強い受診勧奨を受けます。一方で、例えば、定年を迎えて市町村国保の適用対象となると、健診の機会そのものは確保されているものの、受診勧奨が個人個人にまで強く及ばない(通知の書面等が届くのみ、というケースが多い)ために、高齢者や市町村国保で実施率が低くなると推測されます。また、被扶養者(例えば、男性が会社勤めをし、女性が専業主婦である場合など)では、被保険者(例では、会社勤めの男性)の加入する保険者や事業所が受診勧奨を行うことになりますが、その管理は極めて難しいのが実際です。

特定健診実施率向上などに向けたインセンティブ(例えば実施率の高い国保に交付金を実施する「保険者努力支援制度」など)が設けられていますが、「さらなる一手」を考える必要があるかもしれません。

特定保健指導、小規模国保や単一健保組合での取り組みがさらに充実

特定健診の結果、「健康リスクがあり、生活習慣の改善が必要である」と判断された場合には、「特定保健指導」が行われます。特定保健指導は健康リスクにより次の2つに分けられます。

(1)動機付け支援:医師や保健師などの指導のもとに行動計画を作成し、生活習慣改善に取り組めるように、専門家が原則1回の動機付けを行う
→腹囲が男性は85cm以上、女性は90cm以上で、健康リスク(▼空腹時血糖値100mg/dLまたはHbA1c(NGSP値)5.6%以上▼中性脂肪150mg/dLまたはHDLコレステロール40mg/dL未満▼最高血圧130mmHgまたは最低血圧85mmHg以上―)1つに該当する人などが対象

(2)積極的支援:3か月以上複数回にわたる継続的な支援を行う
→内臓脂肪型肥満Aで、健康リスク2つ以上に該当する人などが対象



2019年度に特定健診を受けた人のうち、この特定保健指導の対象になった人は17.4%です。うち、特定保健指導が終了した人は23.2%(前年度と同水準)でした。こちらも、国の掲げる目標値「45%」には、まだまだ及ばない状況です。

特定保健指導の実施率を年齢階級別に見ると、全体(男女計)では、高いほうから▼70-74歳:31.5%(前年度に比べて1.1ポイント減)▼65-69歳:26.0%(同0.1ポイント増)▼55-59歳:24.1%(同0.2ポイント減)▼50-54歳:23.4%(同0.1ポイント減)▼45-49歳:22.3%(同0.1ポイント減)▼60-64歳:21.8%(同0.2ポイント減)▼40-44歳:20.0%(同0.3ポイント増)―となりました。

2018から19年度にかけて伸び悩んでいますが、制度スタートの2008年度に比べれば、特定保健指導の実施率は高まっていることが分かります。

また男女別に見ると、現役世代(40―64歳)では「男性のほうが実施率が高い」のに対し、65歳以上になると「女性のほうが実施率が高い」という状況です。

現役世代では、「男性で企業等に務める人が多く、指導実施に向けた企業等の努力が生かされる」のに対し、「退職後には企業からの勧奨がなくなり、一般的に『女性のほうが健康意識が高い』点が現れてくる」ことなどが、この逆転現象の背景にあるのかもしれません。

性・年齢階級別の特定保健指導実施率を見ると、着実に上昇している(その1)

性・年齢階級別の特定保健指導実施率を見ると、着実に上昇している(その2)



さらに指導実施率を保険者別にみると、最も高いのは、特定健診対象者数が5000人未満の小規模な市町村国保で46.6%(前年度に比べて1.5ポイント増)、次いで▼大企業の設立する単一健保組合の34.4%(同2.1ポイント増)▼公務員などの加入する共済組合の30.7%(同0.1ポイント減)▼特定健診対象者が5000人以上10万人未満の中規模な市町村国保の29.1%(同増減なし)—などとなっています。小規模な市町村国保や単一健保組合で実施率が高いことから、「医療保険者が加入者の健康状況を的確に把握し、こまめに指導の受診勧奨を実施する」ことが、指導実施率向上のポイントであることが分かります。こうした取り組みを、大規模市町村などで実施するためにはどういった「工夫」がいるのか、などを検討することが極めて重要です。

保険者別の特定保健指導実施率を追うと、小規模国保や単一健保組合で高い

特定保健指導対象者の割合は、2008年度に比べて19年度は13.5%の減少

最後に特定健診・特定保健指導の目的である「メタボ該当者・予備軍の減少率」を見てみましょう。2018年度から「特定保健指導の対象者割合で減少率を評価する」こととされており、2019年度は「2008年度に比べて13.5%減」と、一定の効果が現れていることが確認できました。



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